第8話
「その紋章は……」
少年が俺がサーピから降りてくるなり、驚愕な顔で震えた声でいう。
「少年、どうかしたか。そもそも君の名前はなんだ。そしてここはどこだ」
サーピは同じようなことを、きっと的機械化兵にも尋ねていることだろう。
だが、生身の人間相手であるならば、こうして姿を現したほうが話しやすいと考えた。
ちなみに、声も出ずに、腰が抜けている様で地面にへたり込んでいるのが、きっと父親だ。
ちなみにこの声は、俺が話しているものをサーピの自動翻訳を使って会話している。
「貴方様はもしかして、あの丘の洞窟から来られたのではないでしょうか」
「ん?そうだが」
あまりにも丁寧すぎる口調に違和感を覚える。
そして救護対象は二人して顔を見合わせ、それから少年が続ける。
「その紋章は、もしかして手野家の一員なのでしょうか」
「いや、俺は手野家の人間じゃない。だが、手野武装警備の雇われ兵として、この地域に国連軍として派遣されてきた」
国連といわれても彼らはピンときていないようだが、それ以上に大切なのは手野グループの一員であるという点のようだ。
「御三家の方とはつゆとも知らず、大変ご無礼をいたしました」
もはや土下座する勢いだ。
二人揃って、それに倒れ込んで動けなくなっている機械化兵についても同じようにしたことだろう。
「ちょっと待ってくれないか。どういうことだ」
たしかに、テック・カバナー総合軍事会社、アマーダン防衛会社、手野武装警備株式会社は、三大民間軍事会社として名を馳せている。
それぞれ得意なものが違うが、手野武装警備は海が一番だ。
ただそれでもこうして国連軍の一員として契約を結んでおり、当然陸上部隊もある。
俺がいるのはそんな陸上部門の一部隊だ。
「あそこの洞窟は、古の者が居られるとして、古くから入ってはいけないところとされておりました。しかし、貴方様が居られるためだったようです」
何が何だかさっぱりわからない。
「古の機械種の洞窟。ここではそう呼ばれております。貴方様が、その洞窟の主人、古の機械種様なのです」
ますますわからなくなった。
と、そこで、サーピが俺へと話しかけてくる。
「カニス一ついいですか」
機械がしゃべったということについて、さらに4人とも驚いていた。
「まさかエイアイ様もいらっしゃるとは、お会いできるのは初めてですが、その高名は耳目全てで感じております」
少年が感涙しつつもそんなことを口走っているが、理解の範疇をいよいよ超え出した。