第6話
「テーブルが1つ部屋の中央にそれをはさむように背もたれが就いた4つ足の椅子が3脚壁際には暖炉が1つ戸棚も壁際に食事を作成するための諸道具類も壁にある戸棚の中にあります」
「つまり、空間はぽっかりと開いているということだな」
玄関扉は開けられている。
それを確認してから俺は、スコープを伸ばしてさらに詳細を確認しようとした。
「内部を実際に見てみたい。確認を」
「了解スコープ延長開始発覚されたら即撤退で」
「それでいい」
俺がサーピの言葉にうなづき返すと、すぐに足元から直径数ミリのケーブルがするすると延びていく。
はるか昔に人間ドックでした胃カメラ検査のようなスコープが、玄関から床を伝って内部へと侵入を果たした。
「映像を」
サーピの返事の代わりに、目の前にあるモニターが部屋の内部を示しだす。
必要なターゲットらしいものについては赤色の四角が、保護対象と推定されてる人物については緑色の四角が、それぞれ人物を取り囲むようにして表示される。
この表示の隅には対象との攻撃順位が就けられるが、今回は2人しか相手がいないために1と2の数字が激しく点滅しているようになっていた。
「音声を」
ドローンからの声だけだったのを、スコープからの音声へと切り替える。
一瞬だけ不自然な間があるが、それよりさらにクリアな音声が聞こえだした。
「税の徴収ができなければどうなるかは、分かっているよな」
「重々承知をしております。しかし、いまだに収穫を行える状態ではないのは、徴税使様もご理解しておられるでしょう」
「うるさいっ」
バンと銃声。
今は威嚇射撃だったようで、ハラハラと家の天井から木材の破片が落ちてくるのが見える
少なくとも、持っている銃が本物であるということは確認できた。
「それで、どうなんだ。持ってこれるのか、これないのか。どうせ、この地区の代わりなんていくらでも作れるんだ。お前らがいなくなってもなどうでもいいんだよ。だが、簡単に殺してしまえば、理由がなければ今度はこっちが上から叱られるのでな」
その言葉でなんとなく今回のことの理由の見当がついた。
「……税の徴収というのは名目で、単に暴れたいだけってことだな」
この徴税使と呼ばれた二人組も、こういういたぶるのが好きな連中なのだろう。
だが、往々にしてこういった連中というのは何かのバックがいることが多い。
その裏にいる住人が彼らに指示をしているということだってあるだろうが、今回はそこまで考えている暇はなさそうだ。
「銃の種類は」
撃ってくれたおかげで、スコープを通してみている映像から、相手の武器の種類が推定することができるようになった。
そこでサーピにそのことを尋ねる。
「現物がないので推定になりますマシンガンのような速射機構を備えた本体但し1発ずつでも可能あの一発より大きさは7.62mm弾でしょうあとはご存じのとおりです」
「てことはNATO弾か。ならばどうにかなるな」
相手の武器、その速度が判明すれば、あとは自ずから対処の方法が見出すことができる。
「装甲は大丈夫か」
「はいすべて完全に補修されています標準仕様に従って装甲を利用できます」
サーピが言ってくれたので、安心して突入することができる。
「じゃあカウントダウン。5から開始。ゼロで突入。住民と推定される2名を被保護対象、機械化兵2名を排除対象にそれぞれ指定。了解したか」
「了解速やかに対象を指定します」
ピピピと赤色ででかでかと数字が表示されると同時に、5、4とカウントダウンが始まる。
並行して、排除対象が赤色、被保護対象は緑色の2重枠で表示されるようになる。
これ以外については、特に表示されていないため、無視して攻勢を行うこととなる。