第53話
中は、サーピが先導する。
どうやら先ほど情報をもらったようで、この中の建物の配置などは把握できているようだ。
サーピから降ろされて、俺たちは歩いて、一人は飛んで移動をする。
「エイアイ様は完璧なお方ってわかるけれど、ロボットって?」
アクーリクは、俺の左手と手をつなぎながら歩いている。
「そうか、もうロボットは見たことがないのか」
一瞬だけ俺は思ったわけだが、そのままアクーリクへと教える。
「昔教えてもらったのは、AIは考える、ロボットは伝える、だったな」
「考えると伝える?」
何が違うの、という目で俺のことを見ていた。
「そうだ。ロボットは自身の中にあるプログラムに沿って処理をしている。甲というものがあったらその答えが甲になる、5足す5は10になるっていうことだ。ただAIは違って自身で何かしらの考えを持つ。それが正しいかどうかについてはさておき、甲の答えは乙かもしれないし丙かもしれない。10という答えにたどり着くには、1足す9とか4足す6とか、ほかにもいろいろと考えられるからな。それが違いだっていう話だ」
「エイアイ様は間違わないよ?」
「ああ、そういうことだったな」
俺の時とはさすがに違う教育を受けているわけだから、それをとりあえずはうなづいて肯定する。
とはいえども、現状の指針は人類種の生存はできているが、果たして正しいのだろうかと思ってしまうものだった。
「こちらですね」
建物の一つ、レンガ造りの3階建てのものの入口に、俺らはたどり着いていた。
サーピの声で俺らはその場で立ち止まる。
「……ここか」
事務所棟として使っていたであろう建物だ。
雰囲気としてそんな感覚が伝わってくる。
人がたくさんいたときは、こういうところでも24時間フル稼働で忙しくしていたことなのだろう。
だが、今はロボット数台と中心となるエイアイ1基くらいしかいないようだった。




