第39話
「到着したよ」
ガチャンと一際派手に揺れると、吊り下げられているエレベーターの箱は左右に少し揺れていた。
言われてようやくついたとわかると、慌てて俺らはエレベーターから飛び出す。
「あれどうかしたのかな」
「し、死ぬかと思った……」
息も荒げて、俺は方々の体でエレベーターから出て行く。
さすがにここまで最悪の乗り物に乗ったのはない。
ガタガタ震えていたアクーリクも、乗り込んだのを少しは後悔しているような表情をしているほどだ。
吐きそうなのかもしれないが、そんなことこれまでなかっただろうからどうすればいいのかわからないということなのかもしれない。
「大丈夫かな?」
プーラは何もわからないような声のままで、俺らに話しかけてきていた。
「ああ、大丈夫だ」
三半規管が丈夫なのはどうにでもなれる。
サーピは大丈夫だろうから問題なのはアクーリクだけだろう。
「サーピ、すまないがアクーリクを載せてもらえないか。何かあれば医療的処置も頼む」
「了解です」
卵の前面部が開くと、補助いすが自動的に引き出されてくる。
アクーリクをそこに座らせると、シートベルトが出てきて、優しく包み込んだ。
「頼んだ」
ポンと補助いすの背中にあるスイッチを押すと逆順序でサーピの中に取り込まれていく。
一瞬だけ、レーニスが中から俺らを見ているのが見えた。
アクーリクをどうにかすると、今度は俺の番だ。
「じゃあ、データ閲覧室へ案内をしてほしいんだが」
「いいよ」
こっちこっち、とプーラはほぼ電気がついていない廊下を歩いていく。
時折壁際にある明かり取り用の窓は、太陽の光を建物の中に注ぎ込んでくれている。
ただそれだけでは全く見えないところもある。
そういうところでは、プーラが自ら光ってくれてライトとなってくれていた。
「ところでどの時代のデータを見たいのかな」
「2048年3月4日疑似生命体戦争、第31戦区、手野武装警備欧州地域派遣軍」
「データは34000件ぐらいヒットするねもっと細かく絞り込まないと大変だよ」
1秒かからずにプーラは教えてくれた。
あのくらいの戦闘なら、日報や戦闘報告だけでそれぐらいになっていたとしてもおかしくはないだろう。
「追加で、カニス・デサタン、それとケレベル・クレーディ。それぞれ名前だ」
「アンド検索にするかなそれともオア検索かな」
「最初はアンドで検索してくれ」
「データは12件ヒットしたよすぐに診れるように閲覧室で準備しておくね」
「ああ、頼んだよ」
いうとプーラは立ち止まる。
「それでここが閲覧室だよ」
確かに、目の前には扉があった。
ここはちゃんと機能しているようで、自動ドアのように、上にセンサーがあって開く仕組みらしい。
ようやくこれで俺が飛ばされた真相を知ることができるだろう。
センサーに手をかざし、扉を開けた。




