第36話
鉄骨鉄筋コンクリート造りの建物が目の前にそびえたっている。
「おっきぃ……」
アクーリクが、それでも俺の足元から隠れながらも、建物の大きさに目を丸くしている。
「この建物は高さが30メートルは幅が3キロメートル長さが170メートルあるんだよこれだけ大きいから移動するときには自転車やバイクで動くんだ」
一生懸命話しかけているのがプーラだ。
実際のところ、俺はサーピに乗り込んで移動すればいいわけだから、バイクの類を運転することはないだろう。
このプーラもいざとなればサーピの速度に対応できるぐらいはできるはずだ。
「それでどっからはいるんだ。建物はでかいし、窓はないぞ」
「ここだよ」
プーラが腕を伸ばした先にいつの間にか真っ黒の隅を塗りたくったかのような、ドアらしきものが出来上がっている。
らしき、というのはそれが壊れかかっているのかホログラフなのか、時折変なノイズが混じっているからだ。
だがドアとして機能はできるようで、プーラがそっと腕を伸ばした先をあてると、ゆっくりと内側へと開いてくれる。
「さあこっちだよおいでおいで」
遊び好きな子供が誘うように、プーラは建物の中へ、俺たちをいざなった。




