第35話
何メートルもある巨大なドアが左右へと開いて、俺らをデータセンターの中へと向かえてくれる。
「いらっしゃいこの施設を案内しますロボットです」
ロボットという名前なのだろうか、ドアが開いた向こう側には、1台のロボットが待っていた。
足回りはキャタピラ、胴体は直方体、それに、両腕があり、腕の先端は左右ともU字となるマジックハンドが取り付けられている。
頭部は丸っこく、子供受けしそうな外観だ。
しかもご丁寧に猫耳まではやしているときているとあれば、もしかしたらここを遠足で訪れる子供用に開発された機体なのかもしれない。
ここまで荒廃している世界であっても、子供用のものは多少乱暴に扱われてもいいように丈夫に作られている、だから生き残ったのかもしれない。
「名前は」
アクーリクは俺の陰に隠れて、レーニスはサーピの本体の陰に隠れてロボットから見えないような位置にいた。
先頭になるのは、そういうこともあって必然的に俺になるわけだ。
つまり、聞く役回りも俺が担うしかない。
「申し遅れましたプラエケプトルと申しますこの施設を案内しますロボットですどうか好きなようにお呼びください」
「そうかプラエケプトル、そうだな、プーラとでも呼ぼうか。かまわないか」
「ええ全然大丈夫です」
アクーリクが少しだけ顔をのぞかせたのだろう。
それを目ざとく見つけたのか、プーラは軽く右手を振って見せた。
すぐにビクッと、俺がわかるぐらいに震えて引っ込んだようだ。
「あらら嫌われちゃいましたかね」
「すまない、人見知りが激しいんだ」
ともかく進まないことに話にならない。
歩き出しながら、俺はこの施設の概要を説明してもらう。
「この施設の概要は、どんなところなんだ」
「はいこの施設は手野武装警備が西暦1994年に当時のEUから要請を受けて設立した欧州連合総本部を引き継ぎそのデータの一切を補完するためのデータベースセンターとして設立されました現在では欧州にあるすべての手野武装警備の全てのデータが保管されています」
「そのデータは全て、なのだな」
「はいいかなるものも機密文書もあるそうですがそれを閲覧できるのは正規のクリアランスレベルを有する手野武装警備の社員に限られています」
「そうか、ならそれでみたいものがある。個人の日誌だ。それを閲覧できる場所まで連れて行ってほしい」
「では閲覧ブースへとご案内します後ろのお連れ様も一緒にお連れすればいいでしょうか」
「そうだな」
後を見ると、サーピの中に入ったまま出てこようとしないレーニスと、俺の足元でまだふるえているアクーリクが本当に入るのかという気配を漂わせている。
「そうだ、連れも一緒に入る」
「承りましたではどうぞこちらへ」
プーラの先導によって、ようやくドアから一歩中へと入ることができた。
ここからはまだ知っている世界、だったらいいんだが。




