第34話
「ここが手野武装警備のデータベースセンターです」
1日どころか、1時間くらいで目的地へと到着した。
予想外に早かったものの、今までの空間とは全く違う、明らかに厳重な管理施設という雰囲気がある。
「ここで間違いないんだな」
俺がサーピから降りながら確認する。
「はいシビイラから受けた情報を元に確定させていますまた周辺の状況から見るにここで間違いはないでしょう」
「そうか、ならそうだろうな」
サーピがいうならば、もう疑うことはない。
ほかの2人は、レーニスはハサハサと羽音をさせながら中から飛んできて、アクーリクは補助席がサーピの外へと飛んできて、そこから地面スレスレまで運んできてくれていた。
補助席はパッと見ると椅子がついているピザみたいな格好をしているため、ピザ部分を地面につけて降りるとコケることもないだろう。
パッと見た目は以前いたときよりもかなり強化されている。
周辺にはかなりの数の監視カメラがあり、一部の隙もない堅牢なつくりとなっている。
外から中が見えないようにか、おそらくは鉄筋コンクリート製の灰色の頑丈な壁が行く手を遮っていた。
さらにその壁の上には鉄条網がくるくるとまかれており、数十メートルごとに機関銃のようなものが空をにらんでいる。
「しかし、機械種だろうが有翼種だろうが、人間種はもちろん。誰もここに入れないという強い意志を感じる作りになっているな」
「出入口はこちらになっているようです案内します」
サーピが案内するといって俺らを連れていく。
ひたすら壁を眺め続けること1分ほど。
ようやく出入口のような門があるところへとやって来た。
「ロボットの類はいないようだな……」
「警備員もいませんね」
サーピは周辺を赤外線スキャンを行い、俺は同時に警備員詰め所となっていた、門の外にある入口の小部屋へと近寄っていく。
「周辺の警戒と、この部屋の内部スキャンを」
「了解です」
まだ戦闘モードに入っていないサーピは、部屋のまずは外側を、続いて部屋の内部を完全スキャンをした。
「ほ、本当に入るんですね」
俺の後ろで入口にある監視カメラから見えないようにササッと動いているアクーリクと、サーピの裏で同じことをしているレーニスが俺に言った。
「そうだぞ、これから俺らは入るんだ」
「でも、御三家の建物に無許可で入ったら、天罰が下るって」
「それも愛書に書いてあったのか」
俺はアクーリクへと聞いた。
しながらも、窓ガラスが完全に割れていたからこそ、そこから部屋の中へと入る準備をする。
サーピから頑丈な毛布を1枚出してもらい、それを窓ガラスが会ったであろう枠へとかぶせる。
そこから匍匐前進の要領で中へと入っていく。
「いえ、これはお父さんが話してくれてました。だから近づいちゃダメなんだって」
「なら大丈夫だ。これからここの中の人に許可を取るつもりだから」
えっと、と想いながらいくつかある装置を眺める。
「これだな……」
門が固く閉ざされていたが、この装置類には電気が来ているらしい。
どこからかは知らないが、それを有効活用させてもらうことにしよう。
当時と同じ格好をしていたからこそ、どのスイッチを押せばいいかはすぐに判明した。
門を開けるためのスイッチだったが、それを捺すと同時に、部屋の中にあったモニターに電源が入り、カメラが俺へと向けられた。
無表情の男性の合成音声が、部屋の中へと響く。
「警告貴殿は手野武装警備の設備に無断で侵入を試みている国連軍駐留協定に基づき国連軍より要請がある場合は速やかにIDを提示せよさもなくば貴殿を捕縛する」
「カニス・デサタン。手野武装警備欧州地域派遣軍所属、IDはT/E369369番。当方は手野武装警備の正規兵として雇用をされ、その労務契約に基づいて当地へと来訪した。許可を願う」
繰り返しの言葉を聞くよりも前に、俺は自らの出身などをモニターへと話しかけた。
一瞬の間を空けて、さらにモニターに要求が出る。
「同僚となるAIを述べよ」
「サピエンティア。手野データ製造、IDはT1119番」
「番号を確認労務契約を確認必要事項を確認カニスさん失礼を詫びます当基地へはどのような用件でしょうか」
急に丁寧な口調となるものの、言いながらもまずは中に入らせてもらうようにする。
「では門を空けますのでお連れ様とともに待機してください内部でお連れ様のゲストIDを発行します」
「了解した。頼んだ」
外から入ったからには外へといったん出ることにする。
それにしても28000年も経とうが、なんとかデータが残っていたおかげで通ることができた。
これで下手なことをしなければ攻撃されることもないだろう。




