第33話
「ああそうだ」
俺はサーピに答える。
「どうするのですか」
「28000年という期間はあまりにおかしい。何かが変だ。そのことを確認しに行く。あいつがそんなヘマをするとは到底思えないんでな」
「それで手野データベースにアクセスするつもりなのですねそうしたとしてもデータが残っているとは限らないのでは」
「いや、手野武装警備は、こういうアクセス不能やネットワーク途絶に備えて定期的に石英ガラスにレーザー刻印をしてデータのバックアップを取っていたんだ。当時はまだそれが稼働して少ししかたっていなかったが、欧州データベースにアクセスできるか、それともここにその機能があれば望みはある」
ブルーレイディスクと同じような形で、石英ガラスの表面にレーザーで少しだけ傷をつけていくらしい。
それをQRコードのように読み取りができるようにしているということのようだ。
石英ガラスを使っているのは、焦点距離に合わせて内部で何層にも書き込みあるいは読み込みをすることが可能にするため、らしい。
ただし少しでもずれると読み込みも書き込みもできなくなるため、慎重にレーザー照射が行われるという。
そこで専用の施設が必要になるわけなのだが、これはテック・カバナー財閥と手野グループの共同開発により、世界中にある基幹データベースと呼ばれる場所に設備が作られることとなった。
今から向かうところがそれかどうかはわからないが、記憶が正しければ、手野武装警備の欧州部門データベースに併設されていたはずだ。
これが使えれば、当時からの先頭の推移や、現状どうしてこうなったかといった糸口にはなるだろう。
「えっと、もしかして御三家筆頭に行こうとしてます……?」
心配顔で聞いてくるのは、アクーリクだ。
上からレーニスも同じような表情で見てきているのに、アクーリクの言葉の直後に気づいた。
「そうだな。手野グループ、それも、俺とサピエンティアが所属している手野武装警備の施設の一つだな」
「しかし僕たちは行けるのでしょうか」
「行けるだろう。俺とサピエンティアがいるなら問題ないと思うぞ」
だが問題があるのは、間違いない事実だ。
彼らは手野グループの社員ではなく、俺らのデータは28000年前で止まっている。
更新されていない資格情報で、下手をすれば戦死扱いをされているだろう。
これがまだ生きていることを切に願う。
さらには、現地が跡形もないということだってある。
何十年と外と遮断されていたわけだ。
こうなれば、何が起こってもおかしくはないだろう。
その辺りの状態も確認する必要があるようだ。
「サーピ、少し急ごうか。確認することがかなりの量ありそうだ」
「了解しました」
サーピは25度くらいの傾け具合だったのをさらに体を寝かして45度くらいにする。
俺らが座っているところでは全く変わりが感じられないが、外の景色が1.5倍くらいで小麦畑が後ろへと飛び去っていくのを見ると、速度を上げたのは間違いがないようだ。




