第2話
「出口です」
サーピが無機質に教えてくれた。
それはいいんだが、どうやら別の出口から出てしまったらしい。
空は星が瞬いていて、これで位置は把握できるだろう。
だが見慣れていた山はなくなり、ただただ広い農地と、近くにある一軒家だけしか見えなかった。
「……サーピさんや」
「はいなんでしょう」
「出口、間違えたかい?」
「いえ私に間違いなどありえません」
だろうね、というのを俺はこらえる。
実際、今までの戦闘でも数多くの難局を乗り越えてこれたのは、サーピの的確なアドバイスと判断のおかげだった。
周囲全体が見れないこのモニターのため、そのバックアップをしてくれているのがサーピであり、サーピなくして今、俺はここに立ててないだろう。
「天文観測を。時間はわからなくても、北極星はわかるだろう。緯度と経度がわかれば、現在位置がなんとなくでもつかめるはずだ」
「了解しました」
サーピにとにかく今の俺らの場所を確認してもらう。
それと並行して、今出てきた洞窟の周辺を捜索する。
敵が出てきた場合には、すぐに攻撃を加える必要があるからだ。
「天測開始」
一言だけサーピが告げると、モニターのあちこちに輝点が生じる。
天測のために必要な恒星のマッピングだ。
「96%の確率で現在地を推定可能計算開始目標となる輝点を追加確率上昇99.8%の確率で現在地を特定おおよそ10日ほど経過したようですね現在位置は洞窟の位置と同一なので戦闘終了後と変わりません」
「つまりは元と同じ場所だっていうことだね」
たった10日ほどでこれほどまでに変わってしまったということは、何か原因があるに違いない。
「サーピ、擬装している可能性は」
「映像感度確認しましたが一切ないですそもそもここで何かしらのそのような擬装技術の痕跡も見つかりません戦闘の痕跡についても同様です」
「見つからない?そんな馬鹿な。ここはついさっきまで大戦闘のど真ん中だったんだ。それなのに見つからないなんていうことはないだろ」
「しかしながら観測できないことは事実です土壌分析も簡易的にしましたが単なる畑以上のものは一切分かりませんでした育っている草のDNA配列から小麦類の育成が行われていることまでは突き止めました」
「逆をいうと、ここは小麦畑であって、戦闘が行われたような様子はなく、ものすごくひなびたド田舎ってことか」
見た目の様子からの推測と、分析してもらった結果を統合すると、どうしてもそんな結論に至る。
「そうです」
そしてサーピも同じ結論になったようだ。
「ともかく状況が知りたい。電波類はどうだ。まだわからないか」
「ごくごく微弱のモノを拾い始めましたが現状方向は不明おそらくはあっちなんだと思います」
矢印をモニターに映して、あの家のさらにずっとずっと向こう側なのだということを知らせる。
「まずはあの家に向かうとしよう。話はそれからになりそうだ」
いくぞ、と伝えてサーピの機体を動かす。