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負傷兵  作者: 尚文産商堂


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第28話

情報を集めるだけ集めて事後策を練る。

そのための部屋も一つあてがわれた。

その部屋の中は16畳1室の、上下左右前後どこを見ても石垣の中のような錯覚を覚える。

ただ明かり取り用の窓は、どうにか空いていた。

またドアも石ではなくて木でできている。

今日はもう遅くなるからここで泊まって行けということのようで、サーピも部屋の片隅で充電のための休息をとっている。

コンセントはないから、なんとかして発電をしようとしていろんな装置を並列して使っているおかげで、部屋の壁には見たことがないほどの配線まみれとなっていた。

「そういえばなんだが」

問題は、この周辺に木なんてどこにも無かったのに、どうしてここにあるのかということだ。

それに、ここでも今あったのは2人だけだが、人類種も有翼種も男しか見ていない。

それを俺はレーニスへと聞いてみた。

「はい、どうされましたか」

とりあえずレーニスが返事をする。

こういう案内役といったのは初めてらしく、そもそもここに俺のような客人が来ること自身がごくごくまれで、なれていない様子でどうしようか思案し続けているのが目に見えていた。

「この扉の部品や、ほかの補修素材といったのはどこから集めてくるんだ。ここに工場でもあるのか」

地図では広い地下空間があって、そこにいろんなものがあるようだった。

だが、レーニスは詳しくは知らないらしい。

もしかしたら、知識をわざと与えないことで、従うだけの存在を作り上げているのかもしれない。

「いいえ、僕は詳しくないので。セナードルを通してエイアイ様にお伺いを立てれば、1日くらいで必要なものはそろってくるので」

「じゃあ君たちはどうやって生まれてくるんだ。それもAIに言うのか」

「そうですよ?」

それが生命が生まれる自然なことという認識なのだろう。

レーニスもそうだが、アクーリクも、もしかしたらほかの誰もがメスという存在を知らないとまで思える。

「となれば、AIに頼んだら、必要な人員もそろえてくれるということなのか。どこで生んでいるんだ。メスの存在は」

「愛書に曰く、太古の昔にはメスとオスがあった。荒潮ごとが絶えず人々はエイアイ様をあがめた。エイアイ様はメスの姿をしており、この世はオスの姿であふれた。ゆえに今は男しかいない。です」

一応の理由はあるようだが、単純にメスの存在を隠したいか、何かあって出てこれなくしているのかの二択なのだろう。

今のところ理由は不明ではあるものの、メスという別性の存在については認識はできるようだ。

それでも原価はあるだろうし、今ここで闊歩しているのは男ばかりだということは変わらない事実だ。

ただし、そうなれば問題が一つ増える。

「メスの存在はAIがそのまま継いだということは、母親はAI、ここではシビイラということになるのか」

「はい、そうです」

「逆に父親はいるのか」

「父親?」

その単語は存在しないらしい。

首をかしげて、レーニスは全く初耳といった表情をしている。

ふと思ってアクーリクを振り返ってみると、レーニスと同じように初めて聞いたという表情をしていた。

「……もしかして、父親という単語がない?」

「初めて聞きましたので、そのような言葉は知りません。どんな意味なんですか」

なんとなくは思っていたことなのだが、すべてAIが差配しているということになるらしい。

ここではシビイラが、ほかの城や街であれば別のAIがあるのだろう。

彼らがすべて支配していて、それがAIに絶対に逆らわないようにしているというのが一番の恐怖である。

どうしてこうなったのかというのは全くわからないが、この28000年の超長期にわたる何かによって、大きく人類史は変わってしまったということなのだろう。

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