第25話
「なるほどなぁ」
数分かけて、そのモニターに映っている情報をようやく読み終えた。
それから目線を外して、山と並べられたサーバーを眺める。
右から中央、そして左へと視線をずらしていくが、みな画一的なものであって、一つとして変わっているものはない。
「この機械類について、何か知っていることはないか」
部屋の外から、この様子をじっと見続けていたレーニスへと俺は声をかける。
その間にも、サーバーラックの中を歩き回っていろいろとみている。
「え、いえ。私が知っているのは、この装置は、ここの地区管理人が管理していることぐらいです」
「地区管理人?」
探している者は、どうやらその人物らしい。
「はい、しかし、どこにいるのかについては知りません。教えてもらえませんし、エイアイ様に一番近い存在だということぐらいです」
「なるほどな、てことは、この地区管理人ていう人物に聞くしかないか……あった」
俺はそうつぶやきながらも探しているものをようやく見つけた。
中央からすぐに見えるサーバーラックに、一つだけ色が少しだけ違うものがあった。
「なにかあったんですか」
ついてくるのはアクーリクだ。
もっともレーニスも、よく見ようとして思い切り背伸びをして中を覗き込んでいる。
「……入ってきてもいいんだぞ」
「え、でも、しかし……」
なにか葛藤が、レーニスの胸の内を駆け巡っているようだ。
「まあいいがね、ともかくこれで一つこの世界を知ることができそうだ」
俺が情報端末から見て、ようやく見つけた色違いのサーバー用ケース。
たくさんのコードがつながっているが、明らかに一つ親指くらいの太さの灰色のケーブルがついている。
ケーブルの先にあるのは、さっき見ていたあのモニターだ。
このケーブルのおかげで双方向通信ができるようで、サーピがブラウン管風のモニターにケーブルを設置して操作することができたのも、これのおかげらしい。
「で、だ」
言いながらも、椅子がないかと探してみた。
結局、有翼種という種族は、椅子じゃなくて羽根を使って立ったり座ったりとすることにしているらぢく、椅子の類はここにはなかった。
「もう一つ、データセンターがあるようだな。この城のほぼ中央に」
「え、そんなのがあるんですか」
「こいつは本来ならば城の管理をするためのAIなのだろう。だから他を知らない。もっともそのデータセンターもAI管理のものではなくて、もっと別のやつの管理なのかもしれんがな」
とはいっても、データセンターとなれば、AIに直接聞いて、色々と調べれば済むだろう。
他に示しているのは、数多くの倉庫があるということだ。
倉庫の中身については、主に小麦類で、工業製品の類については必要最小限しかないようだ。
他にあるのは宿舎と、何に使われるかわからない多目的室と銘打たれた部屋が2、3ある。
そして、このサーバールームよりも1.5倍ほど広めの、謁見室と書かれた部屋が一つ。
そこにさらに上位のAIがいるのかもしれない。
「発電室は、天井上にあることになっているな」
太陽光に地熱に他にもいくつかのものを合わせているらしい。
壁に配管を張り巡らせて、寒暖差を利用した発電システムまであるようだ。
「だが、他者との情報のやり取りをするために必要そうなものは見当たらないな……」
探しているのは、一番に情報収集用のシステムだった。
衛星にでもリンクできれば一番話が早いのだが、今のサーピのシステムでは、互換性が少なく、それは叶わない。
だからこの城に来て、何か手がないかと考えたのだが。
「この周辺500キロメートル圏内に城や類似する建物がないな。もっと拡大しようにも、情報不足となって消えてやがる」
画面に触れないぐらいの距離で指で確認をしていく。
300キロ以上続く小麦畑は、有翼種のみならず、機械種や人間種の貴重な食糧となっているようだ。
一方で、何か意図があるのかは知らないが、小麦畑ではない場所もいくつかある。
多くには川や、あるいは湖といった小麦の育成に必要なものについて書かれているが、俺が出てきたあの洞窟のように、情報途絶と書かれたところもある。
「この情報途絶とあるところ。行ったことは」
俺は部屋の入り口で結局立ち往生しているレーニスへ話しかける。
「いいえ、エイアイ様が情報がないところは行ってはいけない場所とおっしゃられたので。おそらく誰も行ったことがないのではないでしょうか」
「そうだな、アクーリクの家も、なぜか情報途絶扱いにされているし、それぞれが相互に干渉することを防いでいたんだろうな。となれば、群れて過ごすことを怖がっているのか?」
疑問は増えるばかり。
しかし、考え事は、サーピの言葉で一旦終わる。




