第20話
ガッシャンと派手な音を立てて、城の窓の中へと入る。
ガラスやプラスチックの類は一切嵌め込まれていなかったため、文字通りに突入する形になった。
そして、まるで土下座しているかのようなレーニスの目の前に、サーピはゆっくりと歩いた。
流石に今は空を飛ぼうとか、攻撃を仕掛けようとか、そういう気持ちはないため、武器の類は待機モードにしている。
代わりに、全方位のスキャニングを全力で行っており、今の居場所や建物の構造などを手に取るように理解することができた。
外から見ていてもわかるものもあったが、やはり中に入って、直に調べてみるほうが、よほど精度が高いものが得られる。
「お待ちしておりました」
「待ってはいないだろう」
まだサーピの外殻に囲まれている状態で、レーニスからの出迎えの言葉に答える。
どうせ聞こえていないからこれぐらいはいいだろう。
「しかしながらエイアイ様がどうして、それも御三家筋という高貴なお方が?」
「私は今、探し物をしています。そのために情報が欲しいのです。この城にある情報端末へアクセスはできますか」
サーピは言いながら、俺らを外殻から出すために、その殻を開ける。
「なっ、人間が?」
「彼らは我が友。この旅をするにあたり欠かすことのできない存在です。ゆえにこのように保護をしています」
気に食わない語り口調であるが、今はグッと堪える。
何せ、AIは圧倒的な地位、権威、権力そのものなのだから。
ここではサーピの顔を立てた方が、話もスムーズにいくことだろう。
「では、彼が手野家なのですか」
「いえ、彼は手野家に雇われている人間です」
「では手野家は実在するのですねっ」
それが一番知りたかったこと、そういうことを知れた歓びをレーニスは、その全身で表している。
人間だったらジャンプでもしてよろこび飛び跳ねそうなものだが、彼らにとってそれは、羽を震わして、その光輝かせることになるようだ。
「すごいっすごいっやっぱり御三家は存在していたんだっ」
少年のような天真爛漫な雰囲気を見せてくれる。
「ええ、ですが、情報を集めたいので、その端末のところへ案内をしていただきたいのです」
「あ、そうでしたね。こちらです」
シャンと立ち上がり、それからちょっと床から浮くようにして、羽を使って移動していく。
「こちらです。きっともう名前もご存じなのでしょうが、私はレーニスって言います。この城の中を案内させていただきますね」
AIは万能にして全能。
それに、未来予知だって当然できる、そんな感じの話し方だ。
どれだけAIのことを神格化しているかは知らないが、あの愛書っていうので完全に洗脳されているようだ。
そもそも、あれ以外の書籍がすべて廃絶しているという可能性すらあるようだ。
足元でアクーリクが俺の腰ぐらいにしがみつきながらも、サーピの卵型外殻を引き連れて、俺らはレーニスの案内で城の奥深くへと入ることになった。




