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負傷兵  作者: 尚文産商堂
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第1話

しばらくして目が覚める。

それが真っ暗闇の中だったのは少々面食らったが、問題はない。

パワードスーツの電源を付けてみると、一部の表記が乱れて全く読めなくなってしまっていた。

一番困ったのは年月日と場所の情報だ。

ただ場所についてはまだ解決策がある。

特に、夜になれば星座を見ることができる。

星座がわかれば、あとはあらかじめ把握しているデータを基にして位置や時刻が把握できるはずだ。

まずは充電の確認をしなければ。

「サーピ、現状のパワードスーツの確認を」

「カニスよく生きてましたね感心します」

いつも通りの軽口をたたきつつも、サーピことサピエンティアは自身が搭載されている俺のパワードスーツの自己診断を開始する。

「充電は100パーセント完了現在位置不明現在時刻不明他者とのリンク確認なし範囲を拡大して状況を確認手野グループのいかなるものとのリンク途絶敵味方識別信号その他確認できず」

人じゃないという証拠に、まずは勢いよく話始めて、句読点がまるでみられない。

それどころかこちらが理解しているかどうかという点については考えてもいないような口ぶりもある。

だが、こいつはいつもこうだった。

相手が理解していようがいまいが、事実の羅列を続けるだけだ。

「では、君自身はどうだ。今異常の個所はあるか」

「いえカニスチェックリストは自動作成されすべてグリーンいつでも起動可能です火器管制も正常行動管制も正常必要な物品の補充は自動生成システムにより完了」

「よし、じゃあ久しぶりになるだろうからゆっくりと立ち上がるぞ」

よっこいしょといわんばかりにゆっくりゆっくりとAI動作で俺は立ち上がる。

動作に支障がない証拠に、俺に合わせてだろうが立ち上げてくれた。

頭はどうやらこの洞窟につくことはないようだが、残念ながら俺がこの洞窟に入った時点からかなりの激しい戦闘があったようで、いくつか崩れているところがある。

「サーピ、不審物の有無について調べてくれ。この洞窟周辺に何かないか」

「入ってきたときと比較して不審物はなし但し純正品と推定できる地熱充電装置が接続されています持っていきますか」

「ああ、持っていけるか」

「無論です」

サーピにはある特殊な装置が詰め込まれていた。

最先端の装備圧縮装置である。

簡単にいえば、量子レベルで保存して必要な時に物質に再構成するもの、らしい。

らしいというのは俺の理解のはるか先にあったためだ。

電子レンジの温めるときに感じるような一瞬のほのかな熱みを感じ、それから何事もなかったかのようにパワードスーツの後方に吸い込まれていくのが見える。

「収容完了しましたいつでも再展開できます容量制限が生じていますがしばらくは大丈夫でしょう」

「よし、ではサーピ。出口はどっちだ。真っ暗で何もわからん」

「モニターをご覧ください表示されている矢印に沿って動けば入って来たところへと戻れます」

ようやく内部に電源が入れられたようで、340度展開の頂部モニターがやっとまともに周辺を映し出してきた。

うっすらとあらわになる緑色の世界は、それが暗視ゴーグル越しに見たものだということを認識させてくれる。

そこに、薄黄緑色をした矢印が表示された。

それに沿って行けということらしい。

「よし動くぞ。周辺を観察せよ、何かあればすぐに報告してくれ。それと敵兵か味方がいれば彼らとも話がしたい。敵兵なら話し合いは鉛弾になりそうだが」

「今は鉛なんて使っていませんがね」

「混ぜっ返すんじゃない」

俺は笑いながらも動作の一つ一つを確認しながら洞窟の出口を求めて歩き出した。

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