第18話
「しかし、有翼種がここで何をしているんだ」
俺が言っても答えることは誰もできない。
なにせ、誰もその答えを知らないのだから。
「返答しかねます推測ではありますがAIあるいはより上位の有翼種によって指示をされこの内壁の修理をしているものと見受けます」
ただその中であっても、サーピはその任務を忘れない。
俺の言葉にすぐにとにかくの反応と、現状から推測できることについてを俺に教えてくれた。
「声をかけるわけにもいくまい。とにかく偵察を続行してほしい。相手にばれないようにできるだけ、な」
「了解です」
サーピに伝えると、偵察ドローンを最大倍率まであげて、より相手になっている有翼種が見えるようにする。
「音も拾えるなら」
「やってみます」
サーピに注文を言うと、すぐに周囲の音も拾い出す。
ただ、無言で作業をしているせいか、時折道具が出す音以外には、全くと言って音は聞こえなかった。
不気味なほどに静まり返り、虫一匹飛んでいる様子は見えないほどだ。
はぁ、とふとそれでもため息のような音が聞こえてきたのを、サーピは聞き逃さなかった。
「相手がため息と思われる呼吸を実施測定時に心拍変動が確認されました」
「つまりは、単なるため息ってことだな」
それをしているということは、この作業についてはいやいやしているという可能性がある。
ならば、誰かに指示をされて、あるいは命令されてしているということなのだろう。
つけ入るスキはあるのかもしれない。
「どうしますか接近してみますか」
「誰か来そうか」
サーピの提案に対して、俺は一言尋ねる。
ちょうどそのころになると、全体を見回っていた1号機と2号機が俺らのところへと戻って来た。
「収容を優先しよう」
俺が言うと同時に、部屋の中の扉が開いた。
「おい」
有翼種が入ってきたようだ。
今までいた者よりも二回りも三回りも大きい体躯をしていて、どうやら彼が上司のようだ。
「セナードルさま」
「命じたのはもう1時間も前だ。なのにお前はまだ作業の10分の1もできていないときている」
翻訳は自動翻訳であるが、ところどころあとから修正が入る。
どうやらアクーリクが話している言語とは多少異なっているところがあるようだ。
「ご、ごめんなさい……」
作業をしていたのは、どうやら少年のようだ。
超えにまだまだ幼さが残っている。
しかしながらその状況であっても、このように作業に従事する必要があるということは、もしかしたら人員不足が深刻なのかもしれない。
そもそも教育というものが残っているかどうかが極めて疑問であるが。
「そんな言葉はいらないぞレーニス、欲しいのは経過ではない、結果だ。また来る。その時までに終わっていなければ厳罰を与える。いいな、必ずやすべての作業を終結させよ」
「はい……」
会話を聞いているだけで、ため息の一つや二つ、つきたくもなるものだ。
「……接近しよう。レーニスから何か聞けるかもしれん」
「よろしいのですか私たちのことを上に報告するかもしれませんよ」
「機械種といえばいいだろう。場合によっては手野グループの名を出してもいい」
「了解しました」
俺の言葉に、沈黙が少しあったのが気になったが、それでも情報は多いことに越したことはないと、俺は判断した。




