第15話
果てしないとも思える小麦畑を、サーピはやや上空を飛んでいく。
小麦はそれが触れるかどうかといった瞬間に首を垂れ、まるで王が通る道を開けるかのように道を開けていった。
「あれが城です」
「なるほど、確かに城だな」
数時間に及ぶ機動の末、ようやく言われていた城へとたどり着いた。
ただ、目の前にあるのはただただ城壁ばかりで、一向にその大きさがはっきりと認識することができない。
「高さ推定150メートル幅は未知数小麦畑との境界には数十メートル程度の通路のようにコンクリート様の舗装が為された道があります壁の一部には窓のようなスペースが開けられそこからも出入りすることができるようです」
すぐさま言われた城の外壁部をサーピが調査し、その結果を俺へと教えてくれる。
「なかなかでかいが、どこかに正門があるだろう。そこを目指すぞ」
「え、ありませんよ」
さらっと重大なことをアクーリクが教えてくれた。
まだ小麦畑は続いているが、その途中でのことだ。
いったん止まることもせず、まずは城壁へと近づくことにしつつ、そのことについて話を聞く。
「ないのか」
「だって、税として納める小麦は、有翼種様か機械種様がこの城へと入れていますもの。翼や飛ぶことができますから、人間種が入れないようにするためにも、この城には正門というか、人間種がはいるための門はありません。だって、入る必要がないのですもの」
「つまりは、税を納めるけども、運ぶのは彼らのお仕事だから、ここに来る必要がないってことか」
「そうです。人間が来ることはないので、人間のことを考えないのあたりまえでしょう」
しらっといっているが、俺が生きていた時代からはるかに違う時代だということも、こういうところでもわかる。
「それで、あの穴から入るってことか」
穴というか、ガラスがはめ込まれていない窓だ。
昔どこかの映画で見た、空中を自由に走るための車の発着場のような、そんな場所だ。
ただそれ以上に誰かが出入りしているのは、この光景が目に入って以来ない。
「今日は、誰かが出入りするとか、そんなことは知らないか」
「知っても意味がないので。なのでエイアイ様に全てお任せしております」
この世は全てAIによって動かされているということらしい。
「じゃああそこから入るか……」
いや、と思い直して、サーピへと伝える。
「サーピ。あの城の城壁をぐるっと一周して、一番出入りが多そうなところを見つけられるか」
「命令を受領しましたドローンを飛ばして確認してみます今回はできるだけ静穏で遠距離から観察できるスパイドローンにしましょう」
「選定は任せているだろ」
サーピに答えつつ、いよいよ城壁が目の前へとやってきたとき、ようやく地面へと降りた。




