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負傷兵  作者: 尚文産商堂


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第14話

「カニスいいですか」

考えも一巡して堂々巡りに入る頃、ようやくサーピが何かを見つけたようだ。

「どうかしたか」

「新しい設備の痕跡を発見しました設置はおおよそ1ヶ月ほど前になります」

「1ヶ月前だったら、俺らが目覚めるずっと前だぞ。どんなことをしていたんだ」

「ドローンからのデータによりますと設置された内容は丘全体をくり抜くようにして採掘を行うための設備とその後に置かれたであろう小型の装備圧縮装置です小型といいましても私が積んでいるものの10倍以上の大きさがありますが」

「そんなもの、今のご時世いらないだろ。そもそも実験室レベルでしか成功していなかったもののはずだ」

「カニスまた同じものを見つけました同じ大きさの装備圧縮装置があと5ついえ7つあるようです」

CGをサーピは空中投影してくれているおかげで、中に入らなくても、十分な情報収集を成すことができる。

それによれば丘の中にはそれを覆うドーム状のものがあり、その内側、丘の上半分を大型の装置が。

それの下にまるで柱になるようにして、合わせて8つの小型装置があった。

何かを生み出していたかのようなものであるのと同時に、その間を洞窟が張り巡らされていて、そうそう中に入れないような迷路のようになっている。

「問題は、中のデータを復元できるかどうかなんだが……」

「いいえそれはできないでしょう」

サーピはあっさりと言い切った。

「どうしてだ」

「すべて給電状態から脱していますつまり今は完全に停電の状態にあり内部データは著しく劣化もしくは破損ないしは崩壊しているものと推測します」

装備圧縮装置は、出てきた当初はどこでもできる便利な収納箱という触れ込みだったが、後に一つの大きな欠点が見つかる。

それが内部データの維持のために電気を思った以上に消費するということだ。

後々にはモバイルバッテリーが付属することによって多少マシになる。

ただあくまでも多少というレベルの話だ。

さらに大型化を進めるとさらに必要電力量は二次関数ばりに増加していく。

そこでこれほどまでの大規模な装置というのは、実験室や研究所、あるいは軍事関連程度に収まることとなった。

それもこれも、内部の量子データの維持に、電力を用いるためらしい。

「これほど大規模なものなら、何か音とかでも聞いてないか」

そこでふと思ったことを、アクーリクへ尋ねてみた。

ただ知らないという意思表示をするだけだ。

「もともとここには見も知らぬ、古の機械種様が眠っておられました。そこでここは古の機械種の洞窟と名付けられ、今に至っております。名付けられたのはエイアイ様で、僕が実際に見たことはないのですが。エイアイ様がおっしゃられたのであれば、当然信用します」

「つなりはよくわからないってことだな」

少し考える。

ここにこんなふうに大規模な装置を置くために必要なものは。

結論を出せば、とんでもない人員かロボットの類が必要となるだろう。

ならばこの丘をくり抜いて、どうしてここに俺らを置いた。

俺らはいったいいつからここに置かれた。

目が覚めたときには、すでに何万年と経っていたというのにも関わらず、どうして俺らはあの時のままなのか。

「サーピ、ひとつ聞いてもいいか」

「なんでしょうかカニス」

「サーピの現在時刻を確認するのと、どこかでデータ欠測のタイミングがないか。俺らがあいつと別れてからまでの間で」

「処理中ですイメージにエラーを発見復元を試みます復元失敗ここが欠測と推定できます他の全データを比較参照不能現時点で欠測しているものは約28000年分になります」

「それはすべてのデータか。センサー類に含めての」

「はいカニスその通りです」

だがそれはおかしい。

待機モードであれば尚更、緊急時モードであったとしても、周辺を見張るためのセンサー類は生かしている。

それすら切られているということは、俺らはその間、全くの無防備であったということだ。

「サーピ、ひとつ可能性があるとするならば、この装置の中に俺らがいたということはないだろうか」

「可能性を算出通常は否定するレベルの極低確率ですがあります」

現状信じることしかできないだろう。

「給電設備などは」

「いいえここには独自の発電設備があったようですがすでに故障あるいは自壊しています」

「なんだそりゃ、自爆でもしたってのか」

柱の一つ一つの基部にあたるところには確かにコンクリートブロックのような箱が表示されている。

この中に発電機が入っていたらしいが、それも今や昔。

今となってはデータも何もかもおじゃんだ。

「よし、ともかく俺らはどうやら28000年の間寝ていたらしいな。それもこの設備の中でだ。だが誰が、何のために、どうして」

疑問は尽きない。

ただわかっているのは今はともかく洞窟を後にして、城へと向かうべきなのだろうということだ。

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