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負傷兵  作者: 尚文産商堂


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第11話

しばらくして、ようやく今の状況のいくつかが把握できるようになった。

息荒く倒れこんでいる機械化兵、彼らは残念だったが捕虜として扱うことはできなかった。

「サーピ、彼らを解放せよ」

「了解尋問モード解除彼らについて外殻を開いたのちに解放します」

サーピの言葉で伸びていたケーブル類が、するするとサーピの本体へと収容されていく。

こういう戦場での情報収集は何十回としてきたものの、ここまで興味津々に覗き込まれている人物がいることはなかった。

「すごいですっ、まさかこうするなんて」

アクーリクはキラキラした目で俺のことを見ていた。

「あー、そうだな。ここで起きたことは秘密にしておいてくれないか」

アクーリクへと伝えるが、うんうんと激しくうなづくだけだ。

昔見た、なにかの種類のインコが激しくヘドバンする動画に似てる。

「それで、だ」

アクーリクから目を離し、サーピと機械化兵へと向き直す。

蓋となる場所を、レーザーで切り離し、サーピの道具でバンとあける。

「……なるほどな」

それで初めて分かったのだが、彼らは腕は鎖骨や肩甲骨まで、足は膝関節までしかなく、それから先は数多くの細いケーブルによって装置と直接つなげられていた。

「ったく、手荒い手術を受けたもんだな。これが未来での手術ってことかよ」

脳波スキャニング、能動的電磁波操作といった、非侵襲的手法はかなり失われているようだ。

一方で侵襲的手法についてはかなり洗練されているようにみえる。

ここまで精緻な手術を行うことは、自分がいた過去でも難しいところだっただろう。

「さて機械化兵たち。とりあえずここで解放してやる。だが、このまま封印して朽ちるに任せ、この農地の肥料とすることだってできる。どうする。死ぬか、それとも逃げるか」

「に、逃げます」

片方の機械化兵が泣きそうな声でいう。

「そうか。ならサーピ、戻してやれ」

「よろしいのですか彼らが我々に敵対する可能性もかなり高いかと思いますがそれにほかの仲間に連絡して我々に危害を加える可能性も否定できません」

「ああ、そうだろうな」

だが、俺は彼らがそれをするのは可能性として低いと考えた。

一番なのは彼らが税として徴収するといっていたのが、当然ノルマという形もあるだろう。

そこでここでこんな恥をさらしたとなれば、それをさも自慢のように彼らの仲間に語るだろうか。

ここまで圧倒的な力があると示したのだから、しばらくは俺らにも危害は加えないだろう。

そのことを彼らにいうと、彼らは激しくうなづいた。

「だそうだ。サーピ、頼んだ」

サーピは少し黙って、外していた蓋をもとのように戻し、さらに念押しのように俺に尋ねる。

「本当によろしいのですねこれが最後の確認ですが」

「ああ、頼んだ」

粘着物質は特殊な薬品によって、全く無害なさらさらとした液体にすることができる。

中身は海水に似たものだ。

「さっさと行け、それで二度とここに顔を出すな」

銃を構え、彼らを送ると次はアクーリクのところで戻って、再び椅子に座る。

「さて、君らにも再び尋ねたいことがある。いいかな」

「はいっ」

子供のアクーリクが返事を元気よくする。

元気があることは良いことなのだが、それが見たことがない人物へと遭遇したためだということなのが一番怖い。

かなりのハイテンションなのは、不安にもなるからだ。

「それでここが28000年後の世界、ということについては、我々も理解せざるを得ないだろう。あの機械化兵についてもそうだ。人類が、おおよそ体の体積の3割程度を機械化すると、機械化兵となることができるようだな。だが、そこまでするにも有翼種やAIからの承認を必要とするらしい。そこで、だ。そんな彼らに直接会いに行きたい。どこかそういう場所を知らないか」

「では城に行くのがいいかと思います」

父親のアクーリクが答える。

「でも城は行っちゃダメだって……」

子供はどうやらそういわれて育ったらしい。

「だが、エイアイ様が行きたいとおっしゃられておられるのだ。案内しなければならないだろう」

「じゃあ僕がするっ」

子供特有の知的好奇心の塊のようで、子供がはいはいはいと目立つように手をあげていた。

ここは昔も今も変わらないらしい、少しホッとできる。

「しかし……」

父親が俺を見てくるが、俺はにこやかに応対する。

「昔から言うでしょう、可愛い子には旅をさせよと。外の世界を知ることも悪くはないでしょう。ただ、生きて帰れる保証はありませんが」

「それでも、僕は行きたい」

覚悟は決まっているようだ。

そこで父親もようやく折れた。

ただし、条件として城に行って、ちゃんと旅に出ると申請して来いということだった。


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