第9話
「サーピ、どうかしたのか」
まずは情報の整理が必要だろう。
そう思ってサーピが言いたいことをまずは聞くことにした。
「データの解析が完了しましたこの世界は同じだとしても年代が大幅に違います」
「年代が違う?」
俺は思わずサーピへと聞き返した。
「はい年代として一般的に用いられていた西暦はすでに使われておりません現在は暦と単に呼ばれている者のみを使用しておりそれもおおよそ12期を1年としておりますが年数の表記はありませんされているのは月ごと日ごとに行う行事や行動によって規定されています」
「つまり、今が何年か把握できないということか。それだけ時間が経ったということか、あるいはサーピの計算が間違えているかのどっちだ」
「現状だけでしたらわかりかねますしかし少なくともいえるのは10日間ではなく約28000年ほど経過しているということですもしもここが昔いた世界ならですが」
分からないことが多すぎる。
まずは整理をしようと考えていたが、それすらもどうやら世界は認めてくれないようだ。
「……よし、まずは彼らと話をしよう。俺らのことを御三家と呼んでいるし、なにかあるのは間違いがない」
そしてまずは少年と親と話を始める。
そのためには彼らの言語に翻訳をしてもらう必要があるが、それ以上に彼らの態度についても気になることがある。
「さて、君らの名前を教えてほしい」
机を部屋の中央に、それから椅子を3脚用意してもらう。
俺は玄関扉が見えるような位置へと彼らによって誘導され、サーピはすぐに対応できるようにすでに吹き飛ばしてなくなっている扉の脇に、敵兵はサーピがみはれるような位置へと移動をした。
「アクーリクと申します」
「そうか、アクーリクくん。君の親の名前は」
「当然、アクーリクです」
当然、と前置きをされるのと同時に、アクーリク少年の顔は誇らしい表情を浮かべていた。
代々名を継ぐのは、今の世界ではあまり多くはないようだ。
「まず今いるここはどこだ」
「ここは古の機械種の洞窟の前の農場です。小麦をとっています。普段は洞窟前と呼んでいます」
少年は聞かれたことには答えてくれているが、知ってるはずだという表情をしている。
「じゃあ君らは人間か。機械種とはどういうことだ」
「人間種は使役される者。機械種は使役する者。有翼種はそれらを見張る者。エイアイ種は全てを統べる者。愛書にも記されておりますのはご存知かと思いますが、全てはエイアイ様がご指示をくださいます。我らはそれに従うのです」
「愛書というのがあるんだな。だがそれを読んだことはない。それに、今目覚めたばかりで、全く右も左もわからないことばかりだ。それと、御三家というのは」
「御三家はエイアイ様と同一視される、しかし異なる集合です。手野、テックカバナー、アマーダンの御三方を指します。あなた様も、エイアイ様の庇護のもと、手野様によって顕現されたのでしょう」
宗教については全く疎いが、これはかなりの信仰だろう。
もはや洗脳のレベルに至っているかもしれない。
「じゃあ愛書を見せてくれないか」
「はい」
そういうと、棚のところへと向かい、そこから分厚い冊子を持ってきてくれた。
言語がかなり知っているものとは違うようで、なんと書かれているかわからない。
「サーピ、これを翻訳できるか」
「カニスもうしてますよ」
どうやら機械兵からのデータは、日付だけではなかったようだ。
そこで今度は機械兵らへの尋問とする。




