第0話
はあはあと息が上がっている。
「おい、大丈夫か」
「ああ、大丈夫だ」
戦友が肩を貸してくれて、近くの洞窟のようなところまで運んでくれた。
ガシャンと音が響いた。
まだ外では攻撃が続いているらしい。
ただ、音は聞こえない。
それもこれも、今着ているパワードスーツのおかげだ。
「ったく、なんもかんも俺らは手のひらの上ってことかよ」
悪態をつきつつも、戦友が少しだけ息をしやすいように体を傾けさせてくれた。
今は座ったような形になっているが、洞窟の壁を背もたれにして体を休ませる。
「すまない」
「いいってことよ」
戦友に言われるように座ったまま、状況を確認する。
少なくとも現状は最悪にはまだほど遠い状況であるのは間違いないだろう。
このあたりはまだ山がちで、洞窟も少しはある。
そこに逃げ込めただけでもまずは上等な分類だ。
「すまんな、今はこれぐらいしかできなくて」
「いや、上等上等」
バッテリー駆動、エネルギーは最低限に設定。
さらに今は戦友からのエネルギーも充填してもらい、生存に必要な最低量は確保した。
あと2週間程度なら、このままなら飲まず食わずでも行ける。
「敵を一掃してからまた来てやるからな、それまで持ちこたえてくれ」
「何を言ってんだよ、そっちこそ」
にやっと俺は笑う。
スーツのおかげで笑顔はいまいち見えないだろう。
それにこの洞窟には人の気配はない。
電気の類がなければなおさら見えない。
「そうだな」
あとは別れを惜しまぬように、一気に戦場へと駆けていく。
「ああ、いいなあ、あれこそが俺が求めたものだっていうのに……」
すぅと安心したのか、周りがわからなくなっていく。
パワードスーツによれば、この洞窟はそこまで深くはないようだが、十分な硬さがある。
多少の砲撃ではびくともしないだろう。
それがわかればあとは仲間が来ることを待つことと、補修カ所を確認することだ。
左足が破裂、右腕もかなりキているようだ。
武器については、レーザー銃の充電はほぼ尽きている。
実銃についても、弾薬が心もとない。
機関銃で10秒撃てるかどうかといったところか。
「ふぅ……」
ため息しか出ない。
今の状況ではいくだけ死にに行くようなものだ。
戦友がうらやましいが、そればかり言ってもいられない。
今は休むことに専念するべきだ。
そう思い、パワードスーツは非常モードに切り替える。
生命維持以外については、最低限の動作しかないようにしたモードだ。
これによって、しばらく生きながらえることができるだろう。
まずは寝る、あとのことは後に考える。
そして俺は眠ることにした。