山田、CFUを始める
メタバース(仮想空間)にフルダイブ可能なMMORPG『Creative Fantasy Universe(略称:CFU)』が正式リリースされて約1年が経過した。
世界観は、中世ヨーロッパ辺りを舞台とした、剣と魔法の王道ファンタジー系だが、2020年辺りの国産のMMORPGと比較すると、若干システムが特殊である。
CFUはWeb3系ゲームであり、AI(人工知能)技術やブロックチェーン技術を活かして、メタバース上に経済圏を確立している。
プレイヤーがゲームの発展に貢献することで収入を得られる点が大きな特徴のひとつだ。
この系統のゲームは「GameFi」「NFTゲーム」「P2Eゲーム」とも呼ばれる。
CFUは無課金プレイヤーでも十分に楽しめるシステムとなっており、更に収入を得ることも可能なため、楽しみながら一攫千金を狙っているプレイヤーも多い。
その性質から多くの話題を集めており、プレイヤー数が続々と増加している人気ゲームとなっている。
◇
高校1年生の山田悠斗は、10月近くになって、ようやく念願のCFU専用ヘッドセットを手に入れた。
周りの仲間の大半は、夏休み前にヘッドセットを入手済みで、もはや学校でCFUの話題がされない日はない。
山田は学校の昼休みに、ヘッドセットを入手したことを男友達の荒木に伝えた。
「ようやく入手したぜ、CFUヘッドセット」
「マジか、どこまで進めた?」
「ユーザー登録だけ済ませた。余計なことしちまうとマズイと思ってよ」
「序盤の進め方をレクチャーしてやるよ。放課後、お前んち大丈夫だよな?」
放課後、山田が帰宅してしばらく待っていると、ヘッドセットを持った荒木がやってきた。山田は、荒木を自分の部屋に上げて尋ねた。
「地区はJP-08で良いんだよな?」
「ああ、学校の他の連中も大体ゼロハチ。スマホで確認したけど、まだ空きは結構あるのな」
CFUは日本企業が開発したゲームだが、勿論、外国からもプレイ可能だ。JP系は日本人向けに調整された地区で、アメリカ人向けのUS系もある。とはいえ、地区の往来は簡単である。
「家の場所は?一応、荒木の近くにするわ。どの辺?」
「転送魔法陣あるから、あんま関係ねえけどな。俺と同じギルドにすんだろ?ギルドに所属すれば、簡単にギルドルームに飛べて、そこが拠点になる」
山田は念のため、スマートフォンでゲームのマップ画面を出して、荒木の自宅を確認し、なるべく近くにすることにした。
「あ、そうだ。スマホ連携はしたよな?特に画像フォルダにアクセス出来たほうが便利。あと、俺をフレンド登録しといて。スマホからも出来る」
山田は荒木から教わって、スマートフォンアプリをダウンロードしてCFUと連携し、荒木をフレンド登録した。
これで、ゲーム内で荒木の位置を探したり、荒木がログインした時に、スマートフォンで通知を受ける等が可能となる。
「そんじゃ、チュートリアルすっ飛ばして、酒場に来いよ。その家からだと、外に出て左に曲がって、少し歩いて右手な。俺、顔を変えてないし、フレンド登録してるから、すぐに見つけられるはず」
そう言って荒木は、ヘッドセットを被ってゲームにログインした。
山田は体験版をプレイしたことがあるので、操作に関しての不安はない。荒木を追ってログインする。
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