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ハロウィンショップ巡りと権利関係

 山田とモニカは、ギルドルームでドラマの第2話を鑑賞し終わった。


「今回も面白かったな、ウッドマン。次回のウッドマンVSアイアンレディのゴルフ対決、マジで楽しみだわ」


「ピッグ・ブーブーは、ああ見えてゴルフは得意なのよね。たぶん絡んでくるわ」


「マジか。俺あいつ敵に見えてきたわ。すげえ邪魔じゃん」


「ダベンジャーズは、ピッグ・ブーブーのせいでダベりタイムなるのが定番だからねー」


「あいつの無駄話のせいで被害が拡大してんよな。ゴルフ対決も邪魔されんのかよー」


「たぶんねー。ねえ、山田。今日はハロウィンのお店、一緒に行かない?」


「行きたいとこあるって、それか?ハロウィンって、だいぶ先だろ?」



「もう限定スウィーツや雑貨のお店、いくつかオープンしてるのよ。スタンプラリーあるから、早めにお店巡りしときたいとこあるのよね」


「どんな感じなんだ、そりゃ?カボチャケーキとか、そんなん?」


「うん。オバケやコウモリが乗ったカップケーキとかよ。試食も出来る。男子はあまり興味ないかもだけどね」


「モニカの趣味だと、そりゃ気になるよな。どんな店あるのか興味あるから、行くのは構わんけど」


「あたしみたいなメルヘン好きじゃなくても、デザインが可愛いから気になると思うけどねー」



 山田とモニカは、ショップ巡りのために街に出た。

 スタンプラリーと言っても、スタンプカードを取りに行く必要はなく、実際に押す必要もない。

 要するにミッションみたいな扱いで、イベント期間中に対象の店に行って、試食等の条件をクリアすると、スタンプが増える。


 勿論、スタンプの数によって、CFUの戦闘で役立つ報酬等が得られる。

 山田はケーキやメルヘン雑貨に興味はないが、付き合っても損はない。

 モニカとしては、貰えるスタンプのデザインも重要らしい。



「便利よねー。お店に行かなくてもお試し出来るんだよー」


「(そうか。モニカがどこに住んでるんだか知らないが、簡単には店に行けないもんな。)青山かー、行ったことねえな」


「そっか、山田は渋谷とか近いんだっけ?」


「近いって程でもないけど、電車で簡単に行ける範囲だな。(モニカがどこに住んでるのか知りたいが、聞くのは止めとくかな。簡単に外出が出来ないモニカにとっては、近所に何あるとか振られたくない話題かもしれんし……)」


「見て見てー。このケーキ、可愛いー。あ、そうだ山田。ここの店、なにか食べないとスタンプ貰えないわよ」


「そんじゃ俺はカボチャプリンにしとくかな……。なかなかうめえな、これ」

『スタンプを獲得しました!』


「青山のケーキ屋さんだもんね。買うと高いしー。あたし、このオバケの食べてみよ」

『スタンプを獲得しました!』



 会話をしながら、ショップ巡りを続ける山田とモニカ。

 各ショップの店員も基本はAIだ。盗むことは不可能なので問題ない。

 たまに現実世界の店員がいることもある。


「モニカ、スタンプのデザインも重要とか言ってたよな?」


「SNSで使えるだけじゃなくて、CFUの衣装やスキルの素材としても使えるのよ。沢山集めてハロウィン当日にも使いたいのよね」


「どういうこと?モニカならデザイン出来るだろ?」


「うんとね、良くあるオバケとか魔女の帽子とかさ。そういうのは簡単に創れるし、使っても問題ない。でも、キャラクターには権利があるじゃない?」


「ネズミーランドのオバケとかそういうやつ?スタンプで使用権利も貰えるってことか」


「うん、だから欲しいのよ。期間限定の使用許諾が付いてるの」


「例えば、ウッドマンとかパパイヤーマンぽい衣装を創るのはダメなんか」


「うん。そういうのは、オフィシャルで販売されるからね。例えばさ……

 ハロウィンだと、コウモリマンのマーク使いたい人とかいるでしょ。あれ使うとAIから注意されるわ」


「販売しなければ大丈夫じゃねえの?て、オフィシャルが売れなくなるのか……」


「あと、動画配信で収入になるでしょ?」


「そっか。ちょっと待て。期間限定って?」


「期間中に録った動画なら大丈夫よ。そういう使用許諾になってる」



「なんか超絶ややこしいな……。つっても、CFUだけの話じゃないか。お、このプリンもウマイな」

『スタンプを獲得しました!』


「うん、普通の動画配信だって、ロゴとか使うのは危ないからね。その点、AIのチェックがあるCFUのほうが環境が良いわよ。

 てか、またプリンにしたの?あたし、このクッキー注文しようかな」

『スタンプを獲得しました!』


「そのクッキー通販対応か。アダムで注文出来るのか?」


「ブラウザ機能あるからね。あとでネットショップから買うわ」



「ここは雑貨屋か。入店だけでオーケー?」

『『スタンプを獲得しました!』』


「表参道にあるお店だってー。オシャレー。少し見るから付き合ってよね」


(置物とか装飾か……確かにオシャレだけど、ハロウィン時期だけやん)


「とにかく権利関係って、ややこしいのよねー。あたしの創ったオブジェクト、外国人も買えるじゃない?」


「うん。でも外国人にも簡単に売れるってのは良いところじゃね?」


「それは良いところなんだけど……。オープンメタバースだから、衣装デザインとかCFU以外でも使えるでしょ?国によって法律が違うらしいのよね」


「なんだっけ、こないだモニカに教わったな。著作権、意匠権、商標権、肖像権。その辺の扱いが違うってことか」


「そうそう。AIが審査してくれるんだけど、なるべく権利問題をクリアしたほうが売れるってこと」


「モニカ、話は変わるけど、ハロウィン限定品って、そんな欲しいもんか?」


「ここのコーナーの商品、CFUでも使えることになってるでしょ。自分で創るのは面倒だし……。

 このランタン可愛いー!あのオバケのやつも買おっかな」


「うん?現物とデータのセットってことか?」


「そうよ。あたし、こっちいること多いしさ。ペット部屋もあるし。データだけでも良いけどね。

 ちなみに、リアル店舗やネットショップでも、セット品が売ってることあるわよ」



「なあ、AIの審査とか警告とか言ってたけど、創ること自体は出来るのか?」


「うんとね。完全コピーの『複製』と、類似性が高い『翻案ほんあん』と判定された場合は無理。そこクリアすると、権利審査レベルってのが付くのよ」


「審査レベルが低いとリスクがあるってこと?完全判定は出来ないわけか」


「あたしはレベルAにしてから販売してる。それでも絶対安心ではないわ。CFUも全ての権利データを追えるわけじゃないからね。そもそも、プロでも完全判定は無理だと思う」


「なるほど、どうしても自己責任って感じか」


「うん、レベルB以上で訴えられたケースはないから大丈夫だと思ってるけどね」


「考えてみたら、ブログや動画配信、リアルのグッズ販売もリスクはあるんだな。CFU経由するとリスクが減るってことか……」



「あ、そうだ。たまにさ、生成AIで創った物は著作権ないとか勘違いする人いるみたいだけど、そんなこと無いからね」


「どういうこと?」


「例えばそうね……。写真や動画にも著作権あるけど、自分で撮影するでしょ。それをデジタル加工するでしょ。それで著作権が消えるとかあり得ないでしょ」


「そりゃそうだな。映画やアニメでもAIを使ってるみたいだし」


「CFUの画像生成AIはね。運営が所有権を持ってる素材とか、権利関係をクリアした素材で学習してるんだって。そこは運営が責任を負うことになってる」


「そもそも問題が起きづらいってことか」


「うん、ユーザーは、そこから追加素材を渡したり、テキストで指示して創る。ここで注意が必要。あとね、プロンプトの履歴は作品に紐付けて保存されるわ」


「パクられないよう、他人からは見えないんだよな?」


「うん、法的問題になったときに提出が出来る仕組み。ちなみに、プログラミングに著作権あるように、複雑なプロンプトなら著作権が認められるみたい」


 本作の舞台では、AI生成物の権利問題はある程度クリアされている前提です。あくまでフィクションなのでご注意ください。


 日本の文化庁が2023年5月30日に発表した文書では、AIの学習段階においては「原則として著作権の許諾なく利用することが可能」とされていますが、米国では複数の訴訟が起こされている状況のため、念のため本作では、運営側が権利処理済みという設定にしています。


 また、プロンプトエンジニアリングの著作権は、日本の弁護士コメントを調べた限りでは、認められる可能性があるとされています。


 キャラクター関係については、米国の著作権延長法、通称『ミッキーマウス延命法』についても取り上げたかったのですが、止めておきました。

 初期のミッキーマウスの著作権は、米国においても2023年末に切れるはずです。

 この辺は複雑なので、興味がある方はネット検索して頂ければと思います。


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