番外編:CFU-α 企画会議(1)
CFUは正規リリースの前にプレリリース期間があったが、それよりも以前から類似ゲームは開発されていた。
これは、初代CFUである『CFUーα』の企画会議が行われた際の話である。
それは、2023年、CFUの開発元企業の役員会議から始まった。
「これが新ゲームの企画、クリエイティブ・ファンタジー・ユニバース?」
「暗号資産?P2E、P2C?なにがなんやら、私にはさっぱり分からんですな」
「フルダイブは当分無理ですよ、社長」
「フルダイブはあくまで最終型として目指すところだ。VR技術はそこまで重要ではない。書いてあるだろ?」
「Web3のコンセプト。トークンエコノミー、オープンメタバース、DAOによるユーザー参加、NFTによる権利保護……そしてAI技術ですか」
「最も重要なのは、非中央集権型であって、ユーザーが収益を上げられる点だよ。AI技術も重要だが……」
「バランス調整もAIに任せる?現状のAIでは、そこまでは無理でしょう?それに、ユーザーが衣装やスキルをデザインというのは……」
「待ちたまえ。先にビジネスとして成り立つかが問題だろう。ゲーム内トークンが円ペッグ通貨?」
「専務、ディペッグのリスクについて言いたいのか?無担保型なんて考えてはいないさ。それに段階的に進めるから、そこも重要ではない。最初は仮想通貨ではなく、ポイント式でも構わん」
「いや社長。なんで投資の集まりやすい価値変動性の仮想通貨にしないんですか?」
「それは主に投資ではなく投機だろ。土地やアイテムのプレセールもやらない。投機筋がなだれ込んで荒らされても困る」
「待ってください。土地やアイテムを販売しない?それに、プレイヤーは購入では強くならないとありますが?」
「そう。いわゆる課金で有利になるゲームなんざ糞食らえだ。勿論、課金ガチャなんて実装しない」
「海外展開を考えると課金ガチャが無いのは分かります。しかし、海外産ゲームは時間をカネで買うようなところはありますよ?」
「アバター関係、あとはインテリアやらスキルは購入可能だよ。但し、それで強くはならないってことだ」
「社長、それは時間をカネで買いたいニーズに対する回答にはなりませんよ」
「ユーザー間の売買を可能とする以上、カネで強さを買える形には出来ない。やはり、投機筋に荒らされることになる」
「とにかく価値変動は避けたいということですか」
「ゲーム内の資産が暴騰したら、新規プレイヤーを獲得しづらくなる。勿論、暴落のほうが問題だが」
「当然、暴落すると一気にイメージが悪くなりますね」
「暗号資産、仮想通貨の話でいうと、テラUST事件、FTXバンクマンフリード事件、バイナンス提訴など。そういった要素は、業界全体のイメージに影響しただろう?」
「外部要因による価値変動を防ぎたいと。しかし、例えば他社のゲームでトークンの暴落があったら影響を受けるのでは?」
「CFUは、プレイヤーからしたら無料で遊べる点は変わらない。そして稼げる点も変わらない。通貨は円ペッグ。ならば影響はない」
「確かにプレイヤーからしたら理想的かもしれません。プレイ環境さえあれば、無料で遊べて稼げて暴落もしない。オープンメタバースで他のゲームにもデータが移行可能。しかしですね……」
「君たちは、我が社の資金確保と収益について不安なのだろう?」
「ええ。一旦技術面は置いとくとしても、そちらの話が先ですね」
「技術面は置いておく?そうもいかんだろう」
ざわつく会議室。しかし、一部の参加者は、技術面の解決策があると予想していた。
何人かが、そこは後回しで良いと諭して、騒ぎは収まった。
「収益については、アイテムを販売せずとも方法はある。それも書いてあるだろ?売買手数料、動画CM、看板を含む賃貸、商品宣伝等のキャンペーン実施。あと勿論ハードウェア」
「なるほど、結局のところ、イベントスペースのための賃貸なんかは行うわけですか。人が集まれば解決する」
「常務、セカンドライフの二の舞にはならんかね?」
「セカンドライフは、全体としては失敗していませんよ。2021年のデータでは毎日20万人のアクティブユーザー。未だに取引量は多く、市場としては大きい」
「CFUはオープンメタバースで剣と魔法のRPGだ。セカンドライフは比較対象にはならんよ」
「社長、そもそもオープンメタバースとは?」
「常務が言ってただろ。CFUで創造したオブジェクトは、他のゲーム『など』でも使える」
「他社がサポートしなければ意味がありませんが、ゲーム『など』?」
「フォートナイトはスキン等で莫大な売上があるだろ?デジタルアイテムでも売れるのは解るよな?」
「フォートナイトは、世界有数のアパレルブランドとも言われていますね。PRADA等の高級ブランドと同等だと」
「デジタルのファッションアイテムは、特定ゲーム限定ですら需要がある。オープンメタバースなら、それがゲーム以外でも使えると言っている」
「CFUでデザインしたデータを、実際の洋服や靴、インテリアのデザインのためにも使える?権利はNFTで管理?」
「そういうことだ。3Dのモデリングデータを外部にも持ち出せる。スキルの場合は、視覚エフェクトやサウンドエフェクト。つまり、映画やアニメ、広告等でも使える」
再度ざわつく会議室。やはり技術面が解決しなければ、絵に描いた餅だ。
「社長、まさか……デザイン経験がないユーザーすらも3DCGを創れる環境を用意出来ると?3Dですよ?」
「そうだ。オープンメタバースが絵に描いた餅である理由のひとつは、3DCGの制作コストが高すぎる点だ。そこは解決する」
「その解決策が企画書にはありませんが……」
「機密性が高すぎるために、技術面については極力記載していないからな。3DCGは生成AIで創るんだよ」
「一般ユーザーのプロンプトでも3DCG!?それだけでビジネスになるじゃないですか!」
「あくまでCFUの実現が目的だ。この企画は、事前に石野と話し合って決めた内容だ」
「石野?まさか、あの石野嵐太が絡んだ案件だと?」
一部の人間がざわついた。表舞台には滅多に姿を現さない、知る人ぞ知る超天才エンジニア。
社長は、その石野の協力が得られるというのだ。