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カーバンクル討伐完了

 山田たちは、遂にカーバンクルを全滅させた。

 山田は、洞窟の中にキラキラした赤い宝石がいくつも落ちているのに気づいた。


「あそこ、宝石?」


「ドロップアイテムか。Hey、アダム!戦闘履歴を見せてくれ。……宝石カーバンクル。武器用の素材だな」


 ルタオはアダムを出して、取得したアイテムを確認した。

 CFUでは、モンスターを倒すとアイテムがドロップすることがあるが、あくまで演出のため、イチイチ拾う必要はない。倒した時点で入手したことになっている。


 これは、横から別のパーティーが奪っていくことを防ぐための措置だ。

 また、トドメを刺したプレイヤーのみが入手するのも不公平なので、十分な貢献度があればアイテムを入手可能だ。

 モニカとレイナも活躍したので宝石を入手することが出来た。


「モニカ、武器用の素材って、スキルでいう魔法石みたいなもん?」


「うん、武器を創ったり強化するのに使う。CFUでは武器はドロップしないのよ。あたしが剣を貰っても嬉しくないでしょ?」


「そっか。CFUは武器も自分で創れるもんな。武器用の通貨みたいなもんか」


「レアモンスターからドロップだから、特殊効果を付けられる素材だと思うわ」



 キタザワは、ルタオの最後のスキルが気になっていた。


「ルタオ、最後のやつ、まさか2属性コンボスキルか?」


「おう、爆裂火山雷ばくれつかざんらいは、炎を当てた相手に雷で追撃する方法で威力を上げている。2枠使う上にゲージ消費はでかいぞ。すげえダメージ出せるけどな」


 CFUでは、スキルひとつに1属性しか付与出来ないが、一度の発動で複数スキルを連続発動したり、同時発動することは可能となっている。


 ルタオのスキルは、炎から雷のコンボだったが、例えば炎と風の合体魔法のようなスキルも2枠を消費すれば創れる。

 ただ、強力な代わりに、発動条件が厳しくなったり、スキルゲージの消費量が多くなりやすい。


 ちなみに、ルタオのスキル名に『ドットネット』等が付くのは、誤発動を防ぐためでもある。

 彼は会話でスキル名を言ってしまいがちなこともあって、ドメイン名のようなスキル名にしている。


「そんなことより、最後の雷撃はオーバーキルでしょ。バカなの?脳みそ筋肉なの?」


「最後に雷が突き刺さったの可哀想ですー」


「ねー、モニカちゃん。小動物を雷で突き刺すとか、やりすぎよねー。残酷ー」


「おまっ、やっちまえとか言ってたじゃねえか」


 レイナの言う通り、ルタオの攻撃はオーバーキルだった。追撃が尻尾ではなく胴体を攻撃したのはそのためだ。

 尻尾を狙えば、山田の攻撃で倒せるくらいなので、ルタオにはバフ付きの強力スキルを使う必要性はなかった。



「Vカメラ、前方から。全身入れて。OK。遂にカーバンクルを討伐したぜ。編集版は数日内に公開予定だ。拡散よろしく!」


 ルタオは、視聴者に挨拶をしてからライブ配信を停止した。


「ルタオ、編集版を作るのは分かるけど、俺からローザには頼みづらいぞ」


 キタザワは、ルタオに無理やり誘われた感じで、今回のカーバンクル捜索に参加した。

 ギルメンに断ってはいるものの、ライジングサンからは自分だけが参加しているので、少々後ろめたいところがある。

 動画の編集はローザが得意なのだが、キタザワからは少し頼みづらい。


「あたしからローザに頼むわよ。うちのギルドだと大した事は出来ないし、英語版も欲しいしね」


 CFUには自動翻訳機能があるが、日本語から英語に翻訳するのは、文法上の問題等からどうしても限界がある。

 ネイティブに近い形で追加音声等を付けたほうがウケは良くなる。ローザは英語も得意だ。

 なお、動画で得られる収入は、編集者にも分配する形には出来るため、レイナはその形で頼むつもりだ。


「モニカ姫を推してる感じあるから、協力してくれるだろうけど。ローザは収入とか気にするタイプじゃないんだよな。まあレイナから頼んでくれよ」



「さて、そろそろランチタイムだし、適当に解散するか。山田とモニカ嬢も、ありがとな」


「こちらこそ、ありがとうです」

「ありがとうっす」


「録画視聴もあるから、まだまだ伸びるわよ。モニカちゃんのスキル売れると良いわね。そんでさ、あたしのスキルなんだけど、例えばマリリンモンローだと……」


 レイナは、スキルのカスタマイズについてモニカに相談し始めた。

 権利問題をクリア出来るなら、マリリンモンローのカットを入れる等、もっと見栄えを良くすることも出来る。


 キタザワは、レイナとモニカが話を続けているので、今後について山田に少し話をすることにした。


「山田、困ったことがあれば相談してくれ。俺はプレイ歴が長いから、力になれることは多いと思う。あと、変わったモンスターを発見したら情報を貰えると助かる」


「キタザワさんたち、俺なんかと大分レベル違うのに良いんすか?」


 ルタオが山田の問いに応じた。

「その辺は遠慮しなくて良いんだよ。CFUはイベントやモンスターがどんどん増えるからな。低レベル帯との情報交換も重要なのよ」


「例えばカーバンクル。たぶん運営が用意したモンスターじゃなくて、最近追加されてる。そういうのは上級エリアには出現しなかったりするんだよ」


「運営以外もモンスターを追加すること出来るんすか?」


「能力や出現場所なんかは、AIが決めるんだけどね。ちなみに、モンスターの追加案が採用されても収入になるよ」


「なるほど。そりゃ提案したやつが弱点とか決められるのもおかしいっすね」


「とにかく、戦力が足りない時なんかは相談に乗るよ。ギルメンがヘルプに入れるかもしれないしね」


「勝手に獲物を奪ったりはしねえからよ。今回もちゃんと情報くれた連中には了承を得てるからな」


 キタザワやルタオは有名プレイヤーなので、マナー違反をすると自分の評判にも関わるため、色々と気を遣っている。

 今まで誰もカーバンクルを倒せていないとはいえ、事前に断りを入れておいたほうが無難だ。

 結果的には攻略法を示せたので歓迎されるはずだが。



 山田は、光と闇と土の感度レベルも上げたいので、該当するモンスターが出現するエリアを教わってからキタザワたちと別れた。

 とりあえず、シナスタジアの件までは説明しなかった。


 キタザワたちは昼食後に用事があるそうで、今日はもう協力を得られそうになかった。

 しかし、モニカはまだ時間があるとのことだった。


「山田、まだ続けるなら、ランチの後に集合しよ。少し話したいこともあるしね」


 モニカは高校生のはずなのに、なんで平日の朝からログインしていたのか。

 なんで付き合いが浅い山田に協力的なのか。

 山田は、この後のモニカの話を聞いて、それを理解することになる。


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