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カーバンクル発見

「危ね!忘れるとこだった!ライブ配信!」


 丘に向かう前に、突然ルタオが大声を上げた。


「そうだった!山田とモニカちゃん、登録していいかしら?」


「「???」」


 混乱している山田とモニカにキタザワが説明する。


「俺たちカーバンクル捜索の様子をライブ配信してる。登録しないと、君たちの姿は真っ黒で収入も得られない。どうする?」


 動画の出演を許可していないプレイヤーは真っ黒になり、視聴者からは名前も分からない。当然これはプライバシー保護のための措置である。


「(この際、荒木と中島にバレても構わんか。)俺は構わないっすよ」


「名前も出るんですよね?宣伝なるから助かるです」


「モニカ姫はスキルの宣伝になるかもね。そんじゃ登録するから、通知が行ったら了承して」


 山田とモニカの了承を得たキタザワは、アダムを出して登録のための操作を行った。

 ルタオは、山田に2人パーティーだった事情を聞こうとする。


「しかし、なんで2人でやってたんだ?この辺は前衛いないと無理あんぞ」


「ボーナススキルの件で少し事情がありまして……」


 キタザワが会話に割り込んだ。

「ボーナススキルか。ルタオ、それ以上は無理に聞かないでやってくれ」


 キタザワは何か知ってるようだが、ルタオはボーナススキルについて聞いたことがなかった。


「おう、無理に聞く気はないが、ボーナススキルって何なんだ?」


「事情があるプレイヤーだけ持てる特殊スキルだよ。必ずしも有利にはならない。それと、プライバシーに関わることが多いからな」


 山田は、キタザワたちに簡単に断っておくことにする。


「俺は秘密にするつもりはないんですけど、少しややこしいんで」


「まあ事情があるってことだな。別に構わん」



「ところでキタザワさん、ライブ配信ってカメラどこにあるんすか?」


「あ、それね。視聴者は指定したメンバーの背後から観る感じになる。デフォルトだとね。撮られてる本人が、カメラを前方に変更することも出来るよ。あと、マイク入れてない人の音声は聞こえないから安心して」


 山田は勿論、モニカもバトルのライブ配信は初めてである。キタザワ達からカメラとマイクの操作方法を教わった。


 ◇


 丘の近くに辿り着いた山田たち。道中で数回の戦闘があったが、レッサーデーモン、ハイオーガ、ワータイガー。特に問題はなかった。

 5人となったため、余裕が出来た。山田は後方支援で貢献して、レベルを10まで上げられた。


「しかし、見つからんな。だいぶ移動しちまったか?」


「待って、あそこ!」


 レイナがそれらしき動物を見かけて指を差した。モニカも気づいた。


「来て、雪の妖精シマエナガちゃん!あの青いコを追っかけて、チッチ!」


 モニカは、シマエナガを召喚して追跡させた。

 レイナは自分が追うつもりだったが、鳥が気になって仕方なかった。


「何それ。超カワイイんだけど。それ売ってるわけ?」


「はい!シマエナガちゃんは、疑似召喚なので売ってるです」


「追跡が出来るの?」


「攻撃力ほぼないですけど、動物だから警戒されないんです。たぶんレイナさんのほうが速いですけど……。あと名前が付けられるです」


「おい、レイナ。とにかく、俺らも追いかけんぞ」


「あ、そうね。シャンパン頂きましたー!」


 レイナが先行してシマエナガを追いかけた。

 キタザワもスキルセットを切り替えれば最高速度を出せるが、山田とモニカもいるため、レイナに任せることにした。


 ◇


 4人は少し走りながら、レイナのほうに向かったが、速さが違いすぎて見失った。


「Hey!アダム。シマエナガちゃんレーダー出して」


 走りながらアダムを出して位置を確認するモニカ。

 山田も知らなかったので驚いた。


「そんなこと出来んのか!」

「すげえな、嬢ちゃん」

「ローザも買ったしな、それ。コロポックルも探せると言ってたよ」


「この先にある洞窟のほうみたいです」


 キタザワが場所を知っていた。

「あそこか!なんにもないところ。住処すみかなのかもしれん」


「ダンジョンじゃねえなら申請は不要か?」


「ああ、クエストとは関係ないはず。広いだけの謎の洞窟だ。もうすぐ着く」


 4人が洞窟の入口に辿り着くと、レイナが待っていた。


「白い鳥ちゃんは中に入ってったけど……」


「やられてないから大丈夫です。普通は襲われないはずです」


「それ、あたしも買うわ。途中で敵に遭遇したら、振り切れないかもしれないし」


 キタザワも有用性に気づいた。


「そうか。このエリアならともかく、巨人でもいたら追えるとも限らないな」


『モニカさんが、1000いいねを越えました!ミッションを達成しました!』


 突然アナウンスが流れた。ライブ配信によるモニカの『いいね!』が1000を越えた知らせである。

 モニカは、道中の戦闘でもいくつかのスキルを使用していたが、シマエナガが決め手となった。見た目の面白さと有用性が視聴者に伝わり、一気に投票が増えた。


「あれ?あたし?Hey、アダム!……この配信だけで1000?フォロワーも沢山増えてるー!」


 驚くモニカ。短時間でこれほど多くの反応があったのは初めての体験だった。

 録画視聴もあるため、まだまだ増える可能性がある。


 山田は冷静に魔法陣の設置を提案する。今日は何度も負けてきたので慎重だ。


「キタザワさん、この辺、転送魔法陣が設置出来るっすよね?」

「そうだな。何体いるか分からん。ギルメンのパーティー全滅してるしな」


 5人は転送魔法陣を周辺に設置した。これで敗北しても、カーバンクルが移動しなければ再挑戦が出来る。

 準備は完了。ルタオとレイナが視聴者にPRを始めた。


「Vカメラ、前方から顔アップで。OK。Vマイク・オン!ファンの皆様、応援サンキュー!5人となったルタオ軍団。これより、カーバンクルの巣らしき洞窟に進入するぜ。引き続きチャンネルはこのままだ!」


「ルタオ軍団ってなんだよ。Vカメラ、前方から。あたしの全身入れて。OK。Vマイク・オン!白い鳥ちゃん、シマエナガちゃんの召喚スキルは絶賛販売中でーす!……今からあのコを追って進入するよ。応援よろしくー」


 他の3人もマイクをオンにして洞窟に進入する。


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