山田、敗北による成長
「げぼぁあ、ぐほぉ、あべし!」
「山田ぁー!……回復が間に合わないわね。連続で食らいすぎ。Hey、アダム!家に帰るわ」
「あば、ぐはぁああ、ひでぶ!」
「山田ぁー!……またやり直しかー。ワータイガーはデバフ解除するのかー。速すぎるしー。……ちょっ!止めてよ虎さん、あたしに敵意は無いってばー。Hey、アダムー」
「くぁwせdrftgyふじこ!ついでにlp!」
「山田……もう慣れたのかな。ネタ?てか、いないし。Hey、アダム!」
山田は何度も負け続けていた。
最初は都合良くレッサーデーモン2体と戦えたが、ほとんどは4体以上が固まっていて、向こうから襲ってくるので相手を選べなかった。
このエリアには、ハイオーガという鬼系統と、ワータイガーという虎人間も出現する。それらに近づかれて連続攻撃を受けてしまうと、山田はひとたまりもない。
特にワータイガーは、デバフを解除して素早く攻撃してくるため、手に負えなかった。
ただ、ワータイガーやレッサーデーモンの攻撃により、物理と火の感度レベル3は得られた。
山田は、光と闇はともかく、基本の4属性、火水風雷は獲得しておきたかった。
「やっと見つけたぜ、青色!」
「レッサーデーモン3体なら今後は勝てるかな?」
「あれから一度も勝てないとはな」
「向こうのほうが数が多いと襲ってくるのかな。気づかれた!来るわよ」
「相手は俺だ。サンダー・チャージ!サンダー・スピアー!」
「凍えちゃえ!キラキラ・ダイヤモンドダスト!」
山田のサンダー・スピアーはレベル1だが、自身もバフがあるお陰でバランスは取れている。ただ、出来ればサンダーボルトを決めたいところだ。
レッサーデーモンは、青、赤、赤の合計3体。ダイアモンドダストで、火属性の赤いほうは極端に遅く出来るため、勝てる可能性は十分ある。
◇
こちらは、カーバンクルを捜索しているキタザワのパーティー。
山田たちとは距離が離れているが、レイナが気づいてルタオに話しかけた。
「あの二人、さっきもいたわね。あの女のコ、無理やり付き合わされてるのかしら?」
「男はデフォルトの服装ぽいが弱いとも限らねえだろ」
「さっき簡単にやられてたし。二人とも杖で後衛ぽかったわよ。無理くね?」
キタザワが会話に加わった。
「あれ?モニカ姫か?」
「知り合いなの?キタザワ」
「いや、でも助けに行こう。頼めるか、レイナ?」
「良いけど、ライブ配信中よ?」
「初心者を助ける形なら問題ねえだろ。行ってやれよ。配信は続ける」
CFUでは、モンスターを倒して得られる経験値と報酬が貢献度によって決まるため、基本的に他のパーティーの戦闘に割り込むのはマナー違反と言える。
また、キタザワたちはトップクラスなので、助ける形であろうと、誰かれ構わず助けていてはキリがない。
ただ、山田は初期の服装のままで、後衛らしき2名という初心者にしか見えないパーティーならば、乱入しても問題ないと判断した。
最も足の速いレイナが、先行して助けに行くことになった。
「シャンパン頂きましたー!」
◇
時間は少しだけ遡り、戦闘中の山田とモニカ。
「来いや!ぐはぁああ!チェンジ・スキルセットB!」
青のデーモンが出してきたツララ状の攻撃を受ける山田。目的は達したので、スキルセットを変えてシナスタジアをオフにした。
すぐにモニカが回復スキルを発動する。
「ペロペロしちゃえ!ファンファン・キャンディー・ミルク味!」
「よし!赤い奴は遅い。いけるかも。ラピッド・ウォーター・ブレイド!(ガリガリ)」
山田に向かって、赤のデーモンが火の玉で攻撃してきたが、動きが鈍いため余裕で盾で受けきれた。
青を先に倒したいが、スキルのチャージ時間を考慮して、一旦は赤いほうに水の攻撃を放った。
モニカはデバフとバフで補助をする。
「見とれちゃえ!キラキラ・スターズ!ペロペロしちゃえ!ファンファン・キャンディー・パイン味!」
「雷のバフはパイン味か。(ガリガリ。うめえな。)ロックオン。サンダー・スピアー!」
レッサーデーモンは、距離を維持して魔法攻撃が基本のため、サンダーボルトのためにロックオンをしておく。
こちらに集中させれば、当てられる可能性はある。
スピアーは槍状で範囲が狭いのが難点だが、非常に速く飛んでいき、単発ゆえに威力も高い。小さな敵ではないため余裕で当てられた。
希望はあると思っていた山田たちだが、そう甘くはなかった。
「山田!ワータイガー来た!チクチクしちゃえ!お怒りハリネズミさん!躱されたー!」
いつの間にか、ワータイガーが近づいてきており、山田のほうに向かっている。モニカがハリネズミで足止めしようとするが失敗した。
「速すぎだろ、こいつ。……ぐぁ!」
山田はワータイガーの攻撃を盾で防ごうとしたが、連続攻撃が激しく全ては防ぎきれなかった。
攻撃力が皆無な杖と低レベルの小盾、山田自身の防御力では厳しい。結局は直撃を食らって吹っ飛ばされた。
「くそ!ファイアー・ブレッツ!」
吹っ飛ばされながらも、それ以上は近づけさせないよう応戦する山田。
そう何度も負けたくはない。火弾を連発して、距離を保とうと奮闘する。
その時、モニカの後ろからレイナが現れた。女性を優先して助ける方針のレイナ。どのみち山田が吹っ飛ばされるのは予想外だった。
レイナがレッサーデーモンに蹴りを浴びせまくる。
「ミドルミドルミドルミドール!ハイハイハイハーイ!シャンパン・シャワー3連脚!」
赤のレッサーデーモン2体を秒殺。なお、これでも山田たちは少しは経験値を得られる。
突然のことに驚いているモニカ。
「誰?この人?(てか、スカート短っ!)」
というより、ミニスカートのほうに驚いていた。
残り1体のレッサーデーモンは問題なさそうなので、モニカは山田の援護をしようとしたが……。
「サンダー・ス、びぁっ、うごぁ、どへぇ!」
間に合わなかった。ワータイガーに距離を詰められて、ボコボコに殴られまくる山田。
「しまった!山田ぁー!」
「……誰あのギャル?」
山田は散った。




