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キタザワとルタオとレイナ(1)

「ねえ、マジでいるわけ?カーバンクル。この辺はレッサーデーモンがメインっしょ?」

「俺の仕入れた情報によると、このエリアで間違いない」

「うちのギルメンが遭遇したのも、ここから遠くない。探す価値はあるよ、レイナ」


 山田とモニカが戦闘を続けている周辺に、3人組のパーティーが来ていた。


 男性が2名。『炎のキタザワ』と『ライトニングサンダー@オガサワラ』。彼らはレベル45以上の強者である。

 女性は『蹴りと酒のレイナ』。2人より少し劣るがレベル40以上である。


 現状のCFUの最大レベルは50のため、トップクラスのプレイヤー達だ。彼らの使用するスキルは、基本は最大レベルの5である。

 なお、この手のプレイヤーが増えてきたため、レベルキャップの解放、つまり最大レベルの増加が近いと予想されている。



 炎のキタザワは、かつて山田たちが観戦したペンタグラム・コロシアムに出場していた有名プレイヤーだ。

 ギルド『ライジングサン』のギルドマスター。軽装の鎧を着た魔法剣士スタイルだ。剣は普段は鞘に納めており、必要に応じて抜く。現在は左腕に小盾を付けている。


 ライトニングサンダー@オガサワラは、オガサワラではなくルタオと呼ばれる。

 ギルド『格闘集団Lチーム』のギルドマスターで、キタザワ級の有名プレイヤー。長身で筋肉質なガッチリした体格をしている。

 格闘家スタイルで肉弾戦が主体だ。グローブとブーツが武器で、道着のような服を着ている。

 短いリーチでも敵に接近出来るよう、スキル枠を2つ使って、両腕に小盾を付けている。


 蹴りと酒のレイナは、ルタオと同じギルドに所属する格闘家スタイルで、やはり武器はグローブとブーツで両腕に小盾。

 服装は道着風ではなくギャル系ファッションだ。彼女は背が高めでモデル体型に近い。美脚がウリでミニスカートしか履かない。CFUで許されるギリギリまで短くしている。

 蹴り技が主体なので下着が見えまくるが、本人はまるで気にしない。所詮はVRと割りきっており、それ目的のフォロワーも大歓迎のスタンスだ。


 勿論アバターなので、顔や体型は調整可能だが、3人とも若いこともあり、ほぼ調整していない。

 体型を調整すると動きづらくなるリスクがあるが、それ以前に、調整するのは単に格好悪いという風潮もある。

 ルタオは、現実世界でも筋骨隆々である。レイナは、ギャル風のメイク、髪型、カラコン、ネイルといった調整はしているが、顔と体型はそのままだ。


 ◇


 周囲を見ながら歩き続けるキタザワたち。

 ルタオが少し遠いところにいる6体の悪魔に気づいた。


「キタザワ、こっちに気づきやがったぞ。グレーターデーモンは2体」


「前衛だけだと少し面倒だな。ローザでもいればなあ」


「俺ら3人が逃げるわけにはいかねえだろ。やるぜ」


「ルタオ、そもそも論なんだが、ライブ配信にする必要あるのか?」


 レイナも会話に参加した。

「それ!カーバンクルが見つからないほうが話しにならないっての」


 ルタオは『カーバンクルを探せ!ルタオ、キタザワ、レイナの大冒険』というタイトルの動画を生配信する設定にしていた。

 つまり、彼らの行動は、他のプレイヤーから試聴可能な状態だ。勿論、録画も行われている。


 人気プレイヤーである彼らは、多くのフォロワーを得ているため、平日の午前中にも関わらず、多くのプレイヤーが試聴していた。

 フォロワーにはスマートフォン等に配信の通知が入る。そして、現実世界のスマートフォン等からも試聴可能だ。


 なお、会話が全て筒抜けという訳ではない。仮想マイクであるVマイクを出しているプレイヤーの音声のみ、配信及び録音される。

 Vマイクは首の辺りに出現する魔法のマイクで、アダムと同じく壊れることはない。


 また、PVPイベントである『ペンタグラム・コロシアム』等は強制配信だ。その場合に配信される音声は、スキル名の発声のみである。

 スキル名すらも秘密にしたいスキルがあるときは、事前設定で配信不可にすることも可能だ。



「とにかく来るぞ、お前ら。Vマイク・オン!」


「Vマイク・オン!とりあえず、レッサーデーモンを撃ち落とす。ルタオ、青いやつは頼む。フレイム・ブレッツ!」


「閃光ぉぉぉぉ気雷弾.info!」


 キタザワが炎弾を3体に散らして連射した。合計25発。

 1体は青色の水属性だったため、ルタオが手の平から大きな雷の気弾を出して狙い撃つ。


 ルタオのほうは、タメで威力が上がる単発スキルなので一撃だった。

 キタザワのほうは、攻撃を散らしているため、翼に当てて撃ち落とすところまでだ。

 落とされた3体に向かって、レイナが走り込む。既にダメージを与えているため、スキルを使うまでもなく蹴りまくる。


「ミドルミドルミドル!ハイ!ハイ!ハイキーック!……あ、マイク忘れてた。Vマイク・オン!」



 レッサーデーモンは瞬殺。残りはグレーターデーモン2体だ。

 身長220センチくらいの筋肉質な紺色の悪魔。頭には2本の角、凶悪な面構えに鋭いキバ。手は大きく鋭い爪が生えている。やはり大きな翼もある。

 既にキタザワとルタオの近くまで来ている。


「さて、グレーターデーモン2体か。この辺にしちゃ珍しいな。俺らが来たからかね」


「タイマンなら余裕よ。左は俺に任せろ。鬼神風雷.com!」


 オーラを身に纏ったルタオ。

 風雷と名付けているが、基礎攻撃力を増加させる単純なバフである。属性を限定してない分、効果は少し低めだ。

 ルタオは、必殺技的に雷属性を使うが、あくまで肉弾戦がメインなので、雷属性だけの強化にはしていない。


「ルタオ、あいつら属性が分からんからな。て、行きやがった。フレイム・ブレッツ!」


 キタザワは右のデーモンに炎弾25発を放った。まずは様子見である。



「あーたたたたたたた!ボディがお留守だぜ!爆雷拳.org!あれ?……ぐは!」


 デーモンの魔法攻撃を盾で捌きながら近づいて、殴りまくったルタオ。相手が怯んだところに爆雷拳を浴びせたが、手応えがない。

 ルタオは強烈な引っ掻き攻撃を食らって、吹っ飛ばされた。


 雷属性が無効の相手だった。

 グレーターデーモンは、見た目では弱点属性は不明で、一部の攻撃を無効化する。


「何度も戦ってんだろうが!これだから筋肉バカは……」


 少し離れた場所から戻ってきたレイナ。文句を言いながらも、取り急ぎルタオに加勢することにした。


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