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モニカのスキル販売

 山田とモニカはスキルショップに辿り着いた。

 店内には対話型AIを搭載したNPCの店員がいて、色んなことを相談することが出来る。


 モニカが店員に話しかけた。

「そうだ。ねえ、店員さん。今週のあたしの売上どうなってる?」

「略称、ハリネズミさん、シマエナガちゃんが売れています。アダムでご確認ください」


(『さん』と『ちゃん』の違いはなんやねん!)


 山田は心の中でツッコミを入れたが、本当に聞きたいのは、そこではなかった。


「売上?どういうこと?」

「オリジナリティの高いスキルは、販売することが出来るのよ。確認するの忘れてたわ。Hey、アダム!スキルの売上を見せて」


 モニカはアダムを出して、スキルの販売状況を確認しだした。


「わーい!『いいね!』とフォロワーも増えてるー!」


「スキルにも付くのか?」

「うん、勿論フォロワーは、あたし自身にだけどね。『いいね!』は、スキルのサンプル動画にも付くの。それで売上がかなり変わるのよ」


 いまいち良く解っていない山田が質問を続ける。


「えっと、スキルは魔法石で買うんだよな?」

「正確には魔法石で交換ね。それは、最初から用意されてる普通のスキルの場合ね。私のは本当に売ってるのよ。暗号資産で買うの」


「あれか、円ペッグ通貨のCFYだっけ?ユーザー登録の時に口座が作られたな」

「1CFYは常に約1円なんだけど、それ使って、プレイヤー同士でスキルや衣装の売買が出来るのよ」


 CFYは、日本円連動型(円ペッグ)のステーブルコインで、法定通貨担保型で運用されている。

 本作の舞台では、各種規制の問題はクリアしており、日本国内居住者でも取引は可能だ。


 ちなみに、ステーブルコインでも価値は完全には安定しない。連動が外れる(ディペッグが起こる)ことはあり得るが、十分な担保があれば、大幅な価値変動は抑えられるとされる。

 2022年5月に、米ドル連動のTerraUSD(UST)が、想定外の事態により大暴落したことがあるが、これはアルゴリズムを利用した無担保型だったことにも起因する。



「でもさ、CFUは課金では強くなれないんだよな?」

「うん、そこは徹底してる。経験値を増やしたり、魔法石でスキルレベルを上げたりしないと強くならないわ。販売スキルも最初はレベル1よ」


「それでも売れるということは、デザインなのか?てか、創るのにカネかからんの?」

「主に視覚エフェクトと音声エフェクトに価値があるわ。創るのに手間がかかるのよ。基本は無料。権利のある音楽とか使うと、ややこしいことになるけど」


「無料で創って売れるとか、スゲえんだな、モニカ」

「コツがあるのよね。あ、効果のアイデアだけじゃ、まず売れないわよ。簡単に創れちゃうから。それと、なかなか権利が取れないわ」


「権利を取る?どういうこと?」

「例えばハリネズミさん、CGで動きまでデザインしてるのよ。だから知的財産権が認められるの。いわゆる発明にも権利はあるんだけど、それはCFUだけでは対応出来ないのよ」


「えっと、発明というと特許みたいな?」

「そうそう、アイデアだけだと、そんな感じの扱いになる。他の手続きが必要で面倒なのよ」


「しかし、CGでデザインって無理くね?3Dだろ?」

「画像生成AIが使えるから、絵心は要らないわよ。プロンプトエンジニアリングと言うんだけど、指示の出し方にコツがあるの。それでも大変だけどね」


「なんか良く解らんけどスゲえな。マジで尊敬するわ」

「興味あるなら今度教えるわよ。荒木や中島は面倒くさがって、覚える気もなさそうだったけど」


 荒木は大雑把な性格で、決断は早いのだが、細かいことは苦手だ。中島のほうは、少し他人任せなところがある。

 山田は細かいことを考えるのが嫌いではない。その気になれば覚えられるかもしれない。


「まあ、荒木なんかは、動画配信くらいしか考えてないだろうな」

「バトル動画や攻略動画は、CMの広告報酬だから、それなりに視聴がないと稼げないわよ。やり込まないと難しいかな。炎のキタザワなんかは、強いから人気あって稼げてるワケで」


(いや、モニカみたいな戦い方なら視聴を稼げそうではある。キタザワも炎に拘ってるからという理由もあるはずだ)


 山田にはアイデアが浮かびかけていたが、今は考えがまとまらない。とりあえず口には出さなかった。

 今はスキルのカスタマイズについて知りたかった。


「なあ、スキルレベル1でも、めっちゃ強いスキルを創れたりはしないのか?」

「AIの審査が入るのよ。裏で仮想戦闘みたいなことして、適正かどうか試されるみたい。あと、火に見えるのに水の効果とかは認められない。激しい炎なのに弱いとかも難しいわね」


「キタザワのダミーのスラッシュは、派手じゃなかったしな」

「うん、炎の竜とか付いてると、威力をそれほど下げられないはずよ。その辺の基準は良く解らないんだけど、AIが認めれば基本OK」


「あとさ……販売スキルもカスタマイズは出来るのか?」

「魔法石でスキルレベルを上げることは勿論、カスタマイズも出来るわよ。ハリネズミの色を変えるとか、効果の微調整も自由」


「なんかそれだと……転売みたいなことが出来るような……」

「えっとね、音楽で例えると、作曲と編曲みたいになって権利は守られるのよ」


「アレンジされた音楽が売れても作曲者にはお金が入る?」

「そう、それと同じ感じ。元の権利者が分かる仕組みになってるの。あとね……CFUはオープンメタバースで、権利はNFTでも管理されてるのよ」


「ふむふむ???」

「あたしが創った衣装やスキルのモデリングデータは、他のゲームなどでも使えるの。それを買った人も同じ」


「あ、サービス終了なっても大丈夫とか、どっかで見たな」

「そうよ。CFUの画像生成AIは優秀な上、権利を守る仕組みまであるから、ゲーム関係なしにCFUでモデリングデータを創る人もいるくらいよ」


 モニカはCFUのシステムについて、かなり勉強しているようだった。

 山田はその理由を知ることになるが、それはもう少し先の話である。


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