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ミラータッチ・シナスタジア(2)

「えっ?コロシアムのイベント観戦してたじゃない。痛かったりしたの?」

「CFUではパッシブスキルで再現していて、オフに出来るんだ。現実世界ではオフなんて無理なんだけど」

「えーと、昨日のクエストの時はオンにしてて……」


 モニカが理解に苦しむのは無理もない。

 山田は説明の仕方を悩んでいたが、とりあえず、ザントマンの件を話すことにした。


「俺は、中島が鎧ゴブリンに棍棒で殴られたのを見ていた。その直後、目が少し痛かった。で、サンドゴーレムの砂嵐を食らった感覚がした」

「あ、それで砂の攻撃を受けたと思ったのね」


「ただ、あの時はヤバいと思ってたからか、感度が低くても分かったんだけど」

「感度?」


「属性に応じた感度レベルがあって、攻撃を受けないと上がらないらしい。物理攻撃もそうなってる」


「……あ、この世界、物理攻撃も魔力の扱いよね。そうじゃないと、レベル上がるとムキムキなっちゃうから」


 CFUでは、プレイヤーが身体スキャンした体格を基準にしてアバターが構築される。基本の筋力も本人ベースである。

 そうしないと、現実世界との感覚のズレが生じてしまい、かなり動きづらくなるためだ。


 そして、攻撃力と防御力は、レベルが上がると魔力で強化される設定だ。ゆえに細身であってもレベルが高ければ強い。

 この仕様は、見た目の自由度を重視しているためでもある。特に女性には、極端な筋肉質になりたくないのも多いだろう。


 そもそも、高レベルになると巨人や大型のドラゴンと渡り合える世界観のため、レベルに応じて筋力が上がると、とんでもない体型になってしまう。ボディビルダーどころの話ではない。


 なお、足の速さはレベルを上げても本人基準のままである。これも感覚のズレを抑えるためだ。

 トドロキのように、パッシブスキルで常時速度を上げる魔力補助は付けられるが、現実世界からCFUにフルダイブした直後は、それなりに動きづらく慣らしがいる。



「そりゃそうか、俺は現実世界では、魔力で殴られたり斬られたことなんてないもんな。とにかく、俺のスキルは、この世界で体験した痛みや熱、それを他者のダメージから感じ取れるワケだ」


 他の共感覚の保持者がどうなってるのかは分からないが、少なくとも山田の場合はそうなっている。


「ねえ、でもさ。ひょっとしてツラくない、それ?たぶん感度が上がるとそれだけ痛いのよね?」


「問題はそこなんだよな……。それと、共感覚の再現なんだから、感度レベルは、デカイの食らわないと上がらないかも……」


 考え込んでいる山田に、モニカが質問を続ける。


「山田、そもそもなんでそんなスキル持ってるワケ?」

「あー、ボーナスで最初からあった。他の連中は知らん。そもそも共感覚あるって知り合いいないし……」


「そうなると、あたしが創るのは無理なのかな」

「そういや、モニカは自分でスキル創ってるんだっけか」


 CFUでは、衣装や武器のデザイン、更にスキルのエフェクトや効果まで、イチから創造することも出来る。効果はスキルレベル次第でもあり、自由自在とまではいかないが。


「山田には詳しく言ってなかったけど。あたしの衣装やスキルは、ほとんどイチから創ってるのよ」


「ハリネズミやら……あとシマエナガだっけ?あれはベースのスキルすら無さそうだもんな」


「あれ、大変だったのよ。でも多分、ボーナススキルは本人しか持てないわね」


「正直、良いのか悪いのか分からんスキルだぞ。敵の弱点を把握することが出来るけど、問題がいくつかある」


「物理攻撃を入れると7属性だから、弱点を把握するために最悪7回も痛い目に遭うわね」


「うん、7種で攻撃しなければならないのも大変だろ。ゲージとスキル枠の問題がある」


「効果を極力抑えればゲージ消費は少なく済むわ。それで痛みも抑えられる。闘技場とかでなければ、スキルセットは戦闘中でも切り替えられるわよ」


「効果を抑えるなら感度レベルを上げないとならない。そして、全属性の感度レベルを揃えないと弱点の把握が難しい」


「……そっか、レベル5までだとしたら、火が1で水が5だと区別が付きづらいってことね」


「あと、どこかで大ダメージを目撃するとツラい。最悪これは我慢するけどさ」


「弱点把握したらスキルセット切り替えでオフにすれば?」

「それだと、ザントマンみたいなのが探知出来ないんだよな……」


「えっと、あたしのデバフでも感知は出来た?」

「ダイアモンドダストは、かなり効いていたのか、感度レベル1でも結構寒かったな」


「デバフは広範囲にしやすいから、弱点を探すためには効果の低いデバフが良いかも」


「ダメージないからか、痛くはなかったな。火は熱い、水は冷たい、雷は痺れる?そのほうが分かりやすいかも」


「すぐに軽いデバフかけて、弱点を把握したらスキルセットを変える。いけるかも……。ねえ、とりあえず感度を上げてみない?あたし付き合うわよ」


「確かに悩んでいても仕方ないな。上げたら実際どうなるかを知っとく必要はある。でも……2人で強敵に挑むってことか?」


「荒木たちいても、あまり変わらないでしょ?わざとダメージ受けに行くんだもの」


「人数いたほうが強敵に挑みやすいと思うけど……。てか、モニカも痛い目に遭うぞ?」


「山田が負けたらすぐにログアウトするわよ。他には事情を説明しづらいし、とりあえず2人でやってみよ」


「まあ、モニカが良いんなら……。その前に、風の攻撃スキルが欲しいんだけど。火、水、雷しかないから。出来れば光と闇もだけど」


「そっか、レアモンスター討伐とミッションで魔法石が貰えたしね」


 CFUでは、魔法石を使って、スキルを入手したり、スキルレベルを上げることが出来る。

 まずは2人でスキルショップに向かうことにした。モニカはスキルに詳しいので、山田にとっては一緒にいてくれたほうが心強い。


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