山田、ボーナススキルを試す(4)
「見とれちゃえ!キラキラ・スターズ!」
「中島、俺は右をやる」
「了解。山田、メイジに攻撃」
モニカがゴブリンメイジに杖を向けて、デバフを発動した。それを受けて、荒木と中島が鎧ゴブリンのほうに走り出す。
「(当たらんかもしれんからレベル1にするか……。)サンダー・スピアー!」
山田は牽制のため、ゴブリンメイジに向かって、槍状の雷撃を放った。
それが当たる前に、ゴブリンメイジが身長150センチ程のゴーレムを召喚した。砂で出来たサンドゴーレムだ。雷撃はそのゴーレムのほうに当たる。
ちなみに、ゴーレムはファンタジーRPGでは巨体である事が多いが、粘土等から魔力で作られた人形なので大きいとも限らない。2003年イギリス発の人気ファンタジー小説では、大きいとはいえ約240センチで描かれている。
「効いてない?砂っぽいな……そんだと風か?ねえし!」
雷撃のため、効いているなら痺れた感じになるはずだ。しかし、ダメージを与えた感じがない。
山田は、コロシアム観戦の際に属性について教わっていたが、CFUの属性は、火・水・風・雷・光・闇で、地や土の属性については聞いていなかった。
(モンスターには土属性みたいなのがあるのか?そりゃ雷は効かないか……)
ゴブリンメイジが少し移動してから、山田のほうに杖を向けて火弾を撃ってきた。
モニカのキラキラ・スターズの影響で狙いが定まっていないようだが、念のため水の刃を合わせる。
「(水ならどうよ?)ウォーター・ブレイド!」
ゴーレムが、ゴブリンメイジを庇って水の刃を受ける。効いているようには見えないが、山田には軽い痛みがあった。
「(痛っ!これなら効くってことか。砂が泥になるみたいな?)モニカ!ゴーレムにダイヤモンドダスト!」
「凍えちゃえ!キラキラ・ダイヤモンドダスト!」
(寒っ!)
ゴーレムが寒さを感じるとは思えないが、山田の共感覚は、自分だったらどう感じるかという類いである。
今までの山田の経験上、自分が痛みや寒さを感じる程、相手には効いているはずだ。実際、ゴーレムの動きは鈍くなっている。
モニカは、スキルゲージの消費量が多い、犬と猫の召喚はまだ行わずに様子を見ることにした。
◇
荒木と中島は、それぞれ鎧ゴブリンと1対1で戦うために走っている。
中島のほうが先に、鎧ゴブリンの近くに辿り着いた。ゴブリンは応戦するため、棍棒を振りかぶった。
中島が槍を下段に構えて、槍技スキルを発動する。
「下段左・雪花4連!」
槍に水属性を付与して、左から右に足払いしてから、前に踏み込んで、腹部に三段突きする技だ。
人型モンスターの体勢を崩すために有効で、勿論、対人戦でも使える。相手が真上や後ろに飛んで足払いを避けても、その後の突きが待っている。
中島は、このスキルをオート設定にしている。構えてから発動させると、後は勝手に身体が動いてくれる。
動作には、槍術の心得がある人のモーションキャプチャーが利用されている。綺麗に足払いしてからの突きは、言うほど簡単ではない。
初期設定は「下段左」のように、構えを覚えやすいスキル名になっている。
この手のスキルは、それなりの構えを取らないと発動できない。若干の姿勢調整はされるが限界があるため、構えの練習が必要となる。
鎧ゴブリンは動きが鈍いため、槍を避けられなかった。体勢が崩れて棍棒は空振り。突きも3発全て入り、すぐには立て直せない状態だ。
当初の予想通り、その程度では倒せないため、その後も中島は突きを何発か浴びせる。
荒木も鎧ゴブリンの近くに辿り着く。ゴブリンの棍棒を左手の盾で払ってから、剣技スキルを発動する。
「中段左・裂空3連!」
長剣に風属性を付与して、左、右に胴打ちして相手を怯ませてから上段から振り下ろす連撃だ。
斬撃の軌跡には、カマイタチのような風の刃も放たれるため、剣が当たらずとも多少のダメージを与えられる。
オート設定で無くても難しい技ではないが、オートならば、盾に意識を向けながらも力を込めた斬撃を浴びせられる。荒木は、左上にある棍棒を見ていても構わない。
3連撃は完全にヒットして、ゴブリンを仰け反らした。踏み込んで畳み掛けようとする荒木だったが……瞼が重い。
「あれ?めっちゃ眠い……」
荒木は突然眼を閉じて寝た。
◇
サンドゴーレムは、動きが鈍いながらも、山田に向かって、地面を這う砂嵐のような攻撃を放ってくる。ゴブリンメイジも、火弾や槍状の電撃などを放つ。
メイジの攻撃はともかく、砂嵐は盾で防ぎきれる類いではなく、山田はダメージを受けてしまう。ゴリゴリと砂が当たってる感じがして痛い。
「くそー、風の攻撃スキルなら砂嵐も消せそうだが……モニカ、ゴーレムにも星のやつを……」
「荒木?寝てる?」
「なんだって?」
モニカは回復するために、荒木と中島の様子も窺っており、荒木が寝たことに気づいた。
◇
中島は、鎧ゴブリンに突きを浴びせまくって圧倒していたが、荒木の相手だった鎧ゴブリンが横から向かってきており、棍棒で腹を狙われていた。
中島は咄嗟に気づいて棍棒を盾で受けたが、横から殴り付けられて吹っ飛ばされた。
「痛ってー。荒木は?あれ?眠い……」
立ち上がろうとした中島も瞼が重くなった。そして、寝てしまった。




