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キタザワとローザの戦略

 キタザワは、走ってローザのほうに向かった。闘技場の勝者は、自ら外に出る必要がある。


「ローザの作戦がハマったな。わざとライフを減らして効果を上げる。たぶん奴ら気づいてなかった」


「トドロキは、あの光をバフ解除フィールド辺りと勘違いしてくれたかしらね。思ったより警戒してくれたわ」


「闇の攻撃されて消されるのが怖かったが、俺がいるから、やはり向こうは水が中心だった」


「闇属性が弱点のモンスターは少ないから人気ないのよ。スキルレベル上げる価値が低いし、2人とも積んでなかったんじゃないかしら」



 ローザが最初に出した光は、継続ダメージのある光魔法だった。必ず自身もダメージを受けるリスクを負っており、徐々にダメージを受ける仕様なので効果時間は長い。

 一応の使い道はあって、大量の敵、特に体力の低い敵に囲まれていたら有効だ。上空も攻撃範囲なので、飛行する相手にも対処出来る。



 CFUは、スキルの効果をカスタマイズ出来ることが特徴で、リスクが高いほど効果を増すことが出来る。

 キタザワとローザは、この仕組みを活用するため、いくつかのスキルに、ライフゲージ20%以下のみ発動可能などの条件を付けて、効果を大きく上げていた。

 そして、ローザの光魔法で、自ら少しずつダメージを受けていたのである。


 この戦略は、ライフゲージが多いときに使えるスキルが減るためリスクは大きい。相手が仕掛けてくるタイミング次第では簡単にやられる。

 また、ライフゲージを減らすには、互いを攻撃する方法も考えられるが、相手に気づかれるどころか、なによりも痛い。



 CFUでは、光属性は聖なる光の扱いで、雷(電撃)とは別の属性として存在している。

 光と闇は相殺される関係で、闇属性の攻撃で消される可能性はあった。しかし、トドロキ側の該当スキルは『影縫い』のみだった。

 そもそもトドロキは、速度とバフを活かす戦法なので、それが消されるほうを警戒していた。CFUでは、光に入るとバフが解除されたり、速度が落ちる等の特殊効果はあり得る話だった。



 トドロキ側は、早めに盾を割るほどの連続攻撃をして、畳み掛ける事で対処は出来た。キタザワたちは、効果の高いスキルを出すタイミングを計りづらくなる。

 また、戦略に気づけたなら、敢えてキタザワたちを回復する方法もある。

 もしも、光の解除から『ボルカニック・ブースト』までの間にキタザワを回復させていたら、簡単に勝てたはずだ。なにしろ、キタザワは『…スウィープ』を含めると、一連の流れのために5枠も使っている。



 CFUでは、味方に攻撃出来るだけでなく、敵を回復させることも可能だ。これらの行動が有効なケースはいくつかある。

 例えば、味方がモンスターから魅了状態にされると、モンスター側に回ってしまう。魅了を解除出来ないなら攻撃して倒したほうが良い。混乱状態も同様に放置は危険だ。

 また、スケルトンやヴァンパイアのようなアンデッド系には、回復魔法でもダメージを与えられる。



「しっかし、出口まで歩いて行くのは面倒だな。転送出来るだろうに」


「勝利パフォーマンスのためみたい。勝った後はスキルセット変えられるからね。私をお姫様抱っこして帰るくらいしてみれば?後ろを爆発させながらとか」


「それで『いいね!』は増えないだろ……。さて、他の闘技場どうなったかな?」


 ローザは、お嬢様気質で歩きたくなかったが、キタザワには伝わらず、しぶしぶ歩いて出口に向かうことになった。


 ◇


 キタザワたちが戦闘して少し経った後、イベントの勝敗が決定して、ボス戦が行われた。

 ギルド『ライジングサン』のメンバーは、ボス戦を終えてギルドルームに集まっていた。


 ライジングサンは、ギルドマスターの『炎のキタザワ』を筆頭に、トップクラスのプレイヤーが何人も所属している上位ギルドだ。

 山田の所属する『まったりジャパン』のルームと比べると、内装が非常に豪華である。


「強いなボスモンスター。5人だとキツいだろ、あれ」

「マッチングで3勝2敗が普通だろうしね。私たちが5人で勝てないとか厳しすぎ」

「まあβ版だからね。調整はあるんじゃないかしら」

「ボスの調整要望は出しといて、イベント形式自体は賛成にしとくかね」



 CFUのゲームシステムは、DAO(分散型自律組織)を意識しており、システム管理者は人間ではなく、一定のルールに基づいて動作するAI(人工知能)である。


 システム管理AIは、管理者を意味するアドミニストレーター(Administrator)ではなく、世界知事を意味するワールド・ガバナー(World Governor)と呼ばれる。

 ガバナーは、ゲーム世界の維持を優先するため、プレイしやすい快適な環境、アクティブユーザーの増加を重視する。


 新規イベントの実施やシステム変更は、民主主義的に決定され、決定する経緯にも透明性が維持されている。

 要するに、運営会社の都合で、例えば短期的な売上のためにイベントを実施したり、恣意的に仕様を変更することは出来ない。


 今回のイベント『ペンタグラム・コロシアム』は、プレイヤーから提案された企画で、一定の賛成票を得られたためにβテストプレイとして実施された。

 改善要望があれば調整が検討され、反対票が多ければイベント自体が中止となることもある。

 勿論、今回だけでは決まらない。しばらくβ版として何度か実施される予定だ。


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