表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/43

ペンタグラム・コロシアム(4)

 遠くにいるサカモトは、キタザワを狙っていたが、突然標的が猛スピードで移動したため混乱している。

 ローザは、キタザワを加速させた直後に弓を持ち、弓弦を引いていた。サカモトを狙って弓技スキルを放つ。


「アルテミス・ウインド・アローズ!」


 ローザは『アルテミス』の発声をロックオンに指定している。高速の弓矢がサカモトに向かって放たれた。



 トドロキは、防御バフを掛けていたこともあり、ほとんどダメージを受けなかったが、浮いている状態だ。

 仮に炎を跳んで避けずとも、風の影響で浮き上がっていたと思われる。


「ち!しかし引き離されただけ……速い!」


 キタザワも軽く浮いている状態で、一瞬で距離を詰めていた。そして鞘から剣を抜いて、剣技スキルを発動する。


「クリムゾン・フレイム・スラッシュ!」

(煙遁・改!)


 トドロキは咄嗟に判断して、煙幕を張った。キタザワの剣は、赤い閃光を放って、素早く横に斬りつけたが、斬れたのは丸太だった。

 トドロキが発動したのは、緊急回避のために、魔法によって身代わりを用意するスキルである。いわゆる空蝉うつせみの術。

 自身は瞬間移動したわけではなく、数メートル上空に飛び上がっている。現状のCFUには、即座に瞬間移動可能なスキルはない。やはり、対人戦のバランス面の理由からである。



 ローザはサカモトに向けて、バフで強化された10本の矢を放っていた。

 サカモトは、キタザワに意識を向けていたため、盾を構えるのが間に合わず、ほとんど食らってしまった。


「しまった!ぐぁぁ!」


 CFUは、身体が魔力で守られている設定となっており、本人のレベルやスキルに応じてダメージが軽減され、その上で攻撃に応じた痛みや熱さを感じる。4人のレベルは大差ないが、直撃は相応に苦しい。

 一気にダメージを食らった際に、痛みを感じてしまうと苦しすぎるため、限度は設けられているが、思わず叫ぶ程度にはキツい。



 トドロキは、空蝉で攻撃を躱して上空にいる。キタザワの視界には入っていないはずである。

 上空から仕留めるため、短刀を抜いて、大ダメージを与える剣技スキルを発動する。


「(殺った!)疾風迅雷!」

「ボルカニック・ブースト!」


 空蝉で躱されることを想定していたキタザワは、すぐさまスキルを発動した。全身が激しい炎に覆われて、上空に炎が噴き上がる。

 このスキルは、発動時に攻撃するだけでなく、『ブースト』の名の通り、炎の威力を増加するバフ効果も付いている。


「バカな!(スラッシュの硬直時間はないのか?しかも全身攻撃だと?)」


 トドロキの渾身の攻撃は、炎で止められた。大体の位置を把握したキタザワが追い討ちをかける。


「そこか!バーニング・サラマンダー・ダンス!」


 剣に炎竜のオーラを巻き付けて、連続攻撃を放つ剣技スキルだ。

 CFUの剣技や槍技は、武器を属性効果等で強化して攻撃を放つことが出来る。オートとマニュアルがあり、オートは身体を勝手に動かしてくれる。

 キタザワが使ったのはマニュアル剣技だが、『…スラッシュ』は一閃で『…ダンス』は滅多斬りに過ぎない。自分で動いたほうが方向も定めやすい。


 キタザワの長剣は、炎の効果を増加させる効果を持つ『ソード・オブ・イグニス』。それが炎のバフと剣技で強化され、とてつもない威力となった。

 何度も斬られるトドロキ。防御バフを掛けていても、さすがに耐えきれずに敗北。闘技場から姿を消した。


 ◇


 ギルドルームで観戦していた荒木が興奮している。

「すげえ!炎と風で一気にトドロキを倒した!」


 中島が疑問点を指摘する。

「あのスラッシュ?連撃ではないと言っても、硬直時間あるんじゃないの?」


 モニカが気づいていた。

「たぶんスラッシュはダミーね。見た目の効果だけで、ただ軽く斬っただけ。それなら、ゲージも減らないし硬直もないわ。スキル枠をひとつ潰すことになるけど……」


 モニカの想定通り、キタザワは、対人戦のためにダミーのスラッシュを用意していた。

 本来は斬った箇所から炎が吹き上がって、追加ダメージを与えるスキルだが、ダミーは、単に赤い光が出るだけの効果にされていたのだ。


 しかし、山田たちは、ローザの光の意味までは想像が付いていない。


 山田はモニカに尋ねてみた。

「結局あの光の柱はなんだったんだ?近づかせないためのブラフ?」

「そこが良く分からないのよね……」


 ◇


 疾風迅雷の残りはサカモト。弓を構えてローザの様子を窺いながら走っている。

 キタザワの長距離攻撃はないはずだが、ローザは別だ。下手に背を向ける訳には行かない。


兵糧丸ひょうろうがん!とにかく動かなければ狙われる。中距離スキルも積んではいるが……」


 兵糧丸は、回復魔法スキルである。名前は忍者の食べ物らしくしているが、遠距離にも対応していて、食べるわけではない。本来はトドロキのために用意していた。


 サカモトは、ローザの弓矢で相当なダメージを受けていたため、完全には回復出来なかった。スキルは即座に連続使用は出来ない。効果によって時間は異なるが、少しの間、チャージする必要がある。

 サカモトは、様々な方法の攻撃を優先していたため、他に回復スキルはセットしていなかった。


「アスクレピオス・キュア!ゼピュロス・アローズ!」


 弓を構えていたローザも回復スキルを使った。更に、ロックオン不要な直線的に攻撃する弓技スキルで、矢を連射してきた。


(もう無理だろ、これ……)


 半ば諦めぎみだが、一応は回避するサカモト。すると近くにキタザワがいることに気づいた。


「なんだと?(速すぎる!)疾風手裏剣!」

「そんじゃまたな。バーニング・サラマンダー・ダンス!」


 サカモトは、弓を落として中距離攻撃スキルを出したが、悪あがきに過ぎない。避けられて、斬られまくって敗北した。


「WINNER ライジングサン!」

 アナウンスが流れて、ライジングサンの勝利で終わった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ