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ペンタグラム・コロシアム(2)

 キタザワは剣を鞘から抜かず、その場から動かない。少しずつ距離を詰めてくるトドロキを狙ってスキルを発動した。

 CFUでは、杖を使わなくても、武器を握っていない手から魔法攻撃スキルを放てる。


「フレイム・スキャッター・ブレッツ!」


 左の手の平から、野球ボール程の火弾が25発、扇状に拡散して放たれた。相手は1人なので、至近距離で無ければ大半は無駄撃ちとなるが、代わりに当たりやすい。


「(右手でも狙っているな……。)水刃すいじんの術!」


 トドロキも短刀を抜いていない。火弾に合わして手刀を切り、扇状の水の刃を出して、自身に当たりそうな火弾を全て打ち消した。



 サカモトは、離れた位置からキタザワを狙って弓を構え、弓弦を引いた。

 CFUでは、弓弦を引く動作をしてから一定時間が経過すると、魔法の矢が現れて、弓弦を放すと撃てる仕組みだ。必要な時間は弓によって異なる。


「(ローザは弓を構えていない。防御に徹する気か……。)虎視眈々(こしたんたん)氷雨連矢ひさめれんや!」


 サカモトは、キタザワが攻撃を出したのを見計らってから、スキルを発動した。

 虎視眈々でキタザワをロックオン。そして、弓技スキルの氷雨連矢で矢を放つ。

 弓から氷の矢が連続で10発放たれて、標的としたキタザワの前方斜め上空から矢が襲いかかる。


 なお、サカモトは弓技スキルを使用したが、スキルゲージを減らさずに矢を撃つことも可能だ。単発の通常の矢を撃ちたい際には、単に弓弦を離せば良い。


「アイギス・シールド!」


 サカモトの動きを見ていたローザは、右の手の平から大盾を出現させて、矢がキタザワに当たることを防いだ。


「(あの光、属性防御の類いではなさそうだな。)キタザワをカバーするなら、水属性に対処すべきだと思うが……。まあいい、適度に撃ち続けてトドロキを援護するか」


 サカモトは、続けて弓矢を放って、ローザの意識を引き付けることにした。



 トドロキが放った水の刃は、火弾を打ち消した上で、そのままキタザワに向かっていく。属性相性から相殺とはならなかった。


「フレイム・ブレッツ!」


 キタザワは、右手の人差し指から、トドロキ目掛けて25発の火弾を撃った。

 直線的に連発したため、水の刃を突き抜けるが、トドロキは速さを活かして避けて、すぐさまスキルを発動する。


「飛電の術!」

「アイギス・シールド!」


 トドロキの手の平から雷撃が放たれた。バスケットボール程の大きさがある単発攻撃で、ブレッツ系より威力が高い。

 キタザワは咄嗟に左手から大盾を出した。なんとかガードは間に合った。


「(あの光の効果が分からん。水と雷は通るようだが、迂闊に飛び込まないほうが良いか……。)炎の攻撃だけでどうにかなると思うなよ、キタザワ」


「さすがに盾なしの撃ち合いは厳しいか……」


 キタザワは、まともに撃ち合うのは厳しいと判断して、防御態勢を取ることにした。

 トドロキは、速度に自信があるためか、まだ盾は出さない。両手から攻撃を放つことを優先する方針だ。


「守りに徹するとは、らしくないな、キタザワ。(水刃と飛電で少しずつ削るか。そのうち盾は割れる)」


 トドロキは、一定の距離を維持しつつ、左右に動きながら中距離攻撃を散らして揺さぶりを続ける。


(あの光、防壁では無く自動回復か?いや、それで防御に徹するか?……俺に対抗するとしたら、自分ならどうする?)


 サカモトは、トドロキの様子を見ながら、弓矢を放ち続けて援護する。


(光の効果は分からんが、いずれ盾が割れるぞ、ローザ)


 トドロキとサカモトの攻撃は、直撃とはいかずとも、時折ヒットしている。

 ただ、本人たちは、キタザワとローザをどの程度まで消耗させられているか明確には把握できない。


 CFUでは、自分以外のライフゲージとスキルゲージを見ることが出来ない。

 便利なほうが良いとはいえ、他者の頭上にゲージが見えるなんてのは、さすがにゲーム感がありすぎて奇妙だ。


 それに、明確に他者の状態を把握できないほうが、対人戦での戦略性や緊張感も生まれる。

 プレイヤーは、ライフゲージの消耗で疲労を感じるが、痩せ我慢して敵に悟らせないことも可能だ。



 キタザワとローザは、ほとんど防戦一方である。状況に応じて、キタザワがトドロキにブレッツを撃ってはいるが、全て避けられている。


 盾は攻撃を受けると消耗していき、いずれ破壊される。また、防壁系のスキルは、すぐに張り直すことは出来ない。

 盾のスキルを2つ3つセットしているなら、別スキル扱いなので話は別だが、そうそうあり得る話ではない。


 トドロキとサカモトは、スキルゲージを減らしすぎないよう、大技は出さずに、距離を維持して攻撃を続けて、盾か光が消えるのを待っていた。


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