ペンタグラム・コロシアム(1)
間もなくペンタグラム・コロシアム、闘技場Aのバトルが開始する。ギルド『ライジングサン』の2名と、ギルド『疾風迅雷』の2名の対戦である。
初期位置は、同ギルドのメンバーは横並びで1メートル程の距離感。対戦相手のギルドのメンバーとは、30メートル離れている。
CFUの有効射程は弓矢が最長で、中世ヨーロッパのショートボウと同程度の100メートルとなっているが、そこまで離れて共闘することは難しい。
弓道の近的競技が28メートルだが、そのくらいの距離感が初期位置となっている。
闘技場では基本として、武器とスキルセットの変更は不可となっている。
スキルセットとは、使用するスキルを12個まで選択したセットで、常時発動型のパッシブスキル最大2個も数に含まれる。
対戦相手に合わせて、どのようなスキルセットを組むかが重要となる。
ギルド『ライジングサン』からは、炎のキタザワとエレガント・ローザが出場している。
「作戦通り、俺はトドロキに集中する。ローザはサカモトを頼む」
「タイミングを見計らって光を消すわ。なんとか近づかせないようにして」
キタザワは、魔法剣士スタイルの男性。服装は赤を基調とした軽装の鎧だ。
炎の攻撃に拘っており、腰の鞘には、火属性の長剣『ソード・オブ・イグニス』が収められている。
ローザは、弓矢を武器とした女性。服装は中世ヨーロッパ風のドレス。貴族のような大きなスカートではないが、動きづらそうな服装である。
ギルド『疾風迅雷』からは、忍者トドロキと忍者サカモト。
「サカモト。俺は右から行く。2人でキタザワから仕留めるぞ」
「分かった。左に動いてから援護する」
トドロキは、忍者のような服装の男性。武器は全長30センチ程の短刀で腰の鞘に収めている。
短刀は毒効果付きで、相手に当てられれば、毒効果を解除されるまで徐々に体力を奪える。
サカモトは、やはり忍者のような服装で男性。弓矢を武器とした援護役だ。
「FIGHT!」
アナウンスが流れて、バトルが始まった。
キタザワとローザは、お互いに近づいて、動かずに様子を見る構えだ。
トドロキは右前方、サカモトは左前方に少し走って、キタザワたちとの距離を20メートル程まで詰めて一旦止まった。
それを見て、ローザがスキルを発動する。
「ホーリーライト・ピラー!」
ローザの周囲、半径2メートルが光の円柱に覆われる。高さは5メートル程。キタザワとローザは円柱の中にいる状態となった。
トドロキは、サカモトの位置を確認してからスキルを発動する。
「韋駄天の術!夢幻残影!」
一定時間、自身の移動速度を増加させるバフと、残像効果を付与するスキルである。
速度バフは、具体的には両脚に魔力を纏う移動補助であり、筋力(速筋)の強化ではないため、脚の太さは変わらない。
トドロキは、左右に動いて揺さぶりをかけながら、少しずつ距離を詰めていく。パッシブスキルの速度増加を2つセットした上でバフをかけているため、非常に速い。更に動いた後には残像が残る。
トドロキの速度バフは、現環境の最高レベルであり、韋駄天の術を重ね掛けしても速度は上がらない。既に速度の限界値に達しているためだ。
サカモトは、キタザワから約20メートル離れた位置取りを保つ。もっと遠くても弓矢は当てられるが、あまり離れすぎると状況判断が難しい。
援護役として回復スキルをセットしており、トドロキが接近戦となったときに対処可能な程度には近づく必要がある。
「忍具・小盾!一片氷心!」
ローザから狙われる可能性を考えて、まずは左腕の外側に小型の盾を出した。手持ちではないため、弓を構えることは出来る。
一片氷心は、水属性の威力を増加させるバフである。
準備の出来たサカモトは、キタザワを狙って弓を構えた。




