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三日月古物店の不思議な道具達  作者: たくみん
第一章 「三日月古物店」
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第一話 「長財布 前編」

 「いらっしゃいませ

  三日月古物店へようこそ」


 そう聞こえると一瞬体が固まる。

 何故かというとこんなに古い店を経営してるのだからお爺さんやお婆さんがやってると勝手に想像していのだがそこに居たのはどう見ても20代にしか見えないとても美しい女性がいて僕は少し戸惑いながら

 

「おはようございます」


 と挨拶をしてしまい、慌てて顔を下げた。

 後々考えると朝にこの挨拶は変ではないのだが、その時の僕は緊張と恥ずかしさから顔が真っ赤になって寒さも忘れるぐらい体が熱くなっていた。

 それから少し間が空き、顔を上げると


 「おはようございます」


 とさっき聞こえたゆっくりと静かな声で返事をしてくれた。

 

 「何かお探しですか?」


 と続けて言われ、何かないかと周りを見てみる、店に並んでいるのは古そうな物ばかりで黒電話やブリキのジョウロ、ティーカップなどの食器類に振り子の時計などテレビで見た事はあっても実際には見た事のないものばかりが並べられていた。

 「えーっと」と考えているとある時計に目が行った。

 

 「7時50分」


 店に並んであった時計がその針を刺していた。その瞬間頭が真っ白になる、すぐさまこの時計の事を店主に聞いた。


 「この時計の時間ってあってますか⁉︎」


 「はい

  あっていますよ」


 と言われ慌てて店を出て学校に走って行った。

  

 「またのお越しをお待ちしております」


 と遠くから微かに聞こえたが振り返る事無く走って学校に向かった

 

 …昼休み…

 弁当を食べながら今朝の事を思い出していた。

 

 「はぁ、、家を出た時は余裕がだったのに気がついたら走って登校か、、、まぁギリギリ遅刻にはならなかったけど朝からあんな美人に会えただけ良かったのかな」

 

 と思っているとのあの店の事が気になり少し調べてみる事にした。

 

 「古物店・骨董品店・三日月古物店etc…」


 ネットで調べてみるが全く出てこない、クラスメイトや友人に聞いても知らないと言われるだけで何も情報を得る事が出来なかった。

 あそこが本当にお店だったのかと疑問が出てきたので放課後に行ってみる事にした。

 

 …放課後…

 

 いつもと違う帰り道、向かうのは今朝寄ったあのお店だ。

 相変わらず薄暗い店内、まだやっているのかも怪しいが恐る恐る戸を開けて店に入る。

 すると奥から


 「いらっしゃいませ

  三日月古物店へようこそ」


 と朝に会った女性がゆっくりと出てきた。

 まずは一日中気になっていたこのお店の事を聞こうと思ったが入店して早々聞くのも恥ずかしく、勇気も無かったのでとりあえず「何かあるかな」と店の中を探してみた。

 色々な物があるがどれも古そうな物ばかり、しかしそのどれもが綺麗に手入れをされている様で今でもしっかりと使えそうに見える。そしてそのまま店を一周した頃


 「何かお探しですか?」


 と聞かれ咄嗟に


 「高校生らしい物ってありますか?」


 とかなりアバウトな質問をしてしまったが彼女はすぐに「こちらはどうでしょうか」と黒の皮製の長財布を薦めてきた。

 

 確かに今までずっとガマ口財布を使っていたので長財布には少し憧れがあったが革製品の値段が高いという事は高校生の自分でも流石に知っている。

 

 しかし意外にも安く、自分でも買えそうなので少し考えてみる。財布自体は使い古されているがくたびれている訳でもなく、形崩れも無ければ傷もあまりない様で黒の皮製品独特の綺麗な艶も出ている。

 この財布には何か魅力の様なものを感じたが自身への入学祝いとして買う事に決めた。(彼女が薦めて来たというのも関係あるかもしれないが)

 

 決して高くは無いが安くも無い買い物は高校生の貯金をあっという間に空っぽにする。

 買ったばかりですっからかんの財布を見ていると


 「この財布はお金の流れを呼び込みます。

  どんな誘惑があっても横しまな事をしなければお客様に良い流れを運んでくれるでしょう。」


 と言われ、よく意味は分からなかったがとりあえず「気をつけます」と返事をし店を出た。


 さっき言われ事を少し気になりながら家に帰ると、急に母からお小遣いを渡された。今月の分はもう貰っているのだがその日は機嫌が良かったのかさらに貰えた。

 それでさっき言われた事を思い出しこう言う事なのかと理解すると少しドキドキしながら自分の部屋に向かった。

 この財布があればお金が入って来ると分かった僕はこれを使い続けようと決めあの店と初めて出会った一日が終わる。



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