プロローグ 「古物店」
プロローグ
「何もないな…」
それは僕の口癖だった。彼女と出会うあの日までは…
僕の名前は暁蓮、この春から高校生になったばかりだ。勉強や運動はそこそこ出来るし友達もいる、そして期待と不安を抱えた高校生活は楽しみであったが待っていたのはいつもと変わらない日常。
僕の住んでいる町は映画館に行こうと思うなら電車で片道一時間、コンビニはあるものの深夜は閉まっているそんな田舎にある学校という事もあったので周りは中学の頃と変わらない人達ばかりだ。
そして入学式から一ヶ月が過ぎた頃
いつもと同じ様に朝の身支度をしていると普段より早く終わってしまい特にする事も無かったので少し早めに家を出る事にした。
「ふわぁっ〜」
と眠気が襲って来たが5月の朝はまだひんやりしていて段々と僕の目を覚めてくる。
いつもなら学校まで30分程で着くのだがこの日は時間があったので違う道から行ってみる事にした。
いつもと違う景色を見ながら登校していると、ある一つの家に目がいった。
この家は僕のおばあちゃんが生まれてくるずっと前からあるらしく、木造のこの家は外から見ると所々錆びていたりひび割れがあったりなどかなりボロいなと思っていていつもは通り過ぎているだけでしたがこの日はふと気になり少し眺めていた。
しばらくすると小さな看板があるのに気がついた。
「三日月古物店」
そう書いてある看板はとても年季が入っている様でパッと見るだけでは何と書いているか分からないぐらいの物で、僕自身も初めてここがお店だという事を知りました。
「本当に古そうだな」
と呟くといつも薄暗い店の奥から人影が見え、どんな人が店主なのかと少し気になり、戸を開くとそこには腰程まで伸びた真っ黒な黒髪が印象的な女性がいました。
「いらっしゃいませ
三日月古物店へようこそ」
これが彼女との初めての出会いであり僕があの口癖を言わなくなった日になった。