第四十七話 仕返しとプレゼント
ようやく脊椎動物に戻れたところで、ふと俺の誕生日を祝ってもらった時のことを思い出した。
それからほくそ笑む。
レナはケーキを食べ終わっているし、ちょうどいいな。
そう考えた俺は、ケーキを乗せたフォークをレナのほうに差し出す。
「ケーキいるか?」
『いるっ! ほしい!』
食べ足りなかったのであろうレナは、大好きなお菓子を差し出された子供のように反射的に飛びついた。
そのまま口を開いて、ケーキにかぶりつこうとしたところで――。
「残念だったな」
俺は某隠密の人の声真似をしながら、素早くフォークを自分の口へ運んだ。
レナは盛大に空気を頬張った。
『海斗ヒドイ!』
「はっはっは。俺の誕生日の時にお前にあーんされたの恥ずかしかったからな。それの仕返しだ。どうだ? 恥ずかしいだろ? 俺と同じ気持ちを味わいたまえ」
悪役のような高笑いをする俺だが、これはあくまでからかっただけ。
さっきも言ったようにただの仕返しだ。
だからもう一度フォークにケーキを乗せて、残念そうな悲しそうな顔をしているレナの前に持っていった。
「ごめんて、悪かったよ。ほら」
『……もう意地悪しない?』
「しないから、そんな泣きそうな顔するなって」
『ん、じゃあ……』
レナはゆっくりと顔を近づけて、俺がまた意地悪してこないことを確認してから――ぱくりと口に含んだ。
『おいしい』
「もっといるか?」
『くれるの?』
「今日はレナの誕生日だからな」
『じゃあ、もらう』
レナはそう言ってから、小さく口を開いた。
食べさせてってことだろう。
「甘えん坊だな」
『甘えたら、海斗が甘やかしてくれるから』
「しょうがないな。ほら、あーん」
『あーん』
甘ったるいほどに蕩けたレナの表情を至近距離から眺めることになるわけで。
おまけに甘ったるいケーキにも負けない、レナのいい匂いが伝わってくる。
俺は終始ドキドキしながら、残っていた自分のケーキをすべてレナに食べさせてあげた。
「いやー、眼福眼福。楽しませてもらいましたよ」
「あああああああ天月がいること忘れてたあああああああ!!! うわああああああああ!!!」
『美沙っち、今すぐ記憶を消しなさい! 消してください!』
これ以上ないほどのニヤニヤ顔をしながら一部始終を見守っていた天月にからかわれて、俺たちは床を転がり続ける羽目になった。
◇◇◇◇
「ほれ、プレゼントだ」
「私からもありますよ」
先ほどまでのドタバタを終えて一息ついたところで、俺と天月がそれぞれのプレゼントを持ち出した。
俺は青色、天月は水色のリボンでラッピングされた可愛らしい箱をそれぞれ手渡す。
レナは渡された箱をまじまじと眺めた後、目を輝かせながらゆっくりとリボンをほどいていく。
最初は俺のプレゼントから。
そして──。
『わぁ』
咲き誇る花のようにぱぁぁと顔を輝かせた。
『カワイイ……!』
そのまま箱の中に入っていた猫のぬいぐるみを抱き上げる。
栗色&白色の毛色といい気の強そうな瞳といい、その猫はどこかレナを彷彿とさせる容姿をしていた。
「レナっぽかったから、一目見た瞬間に買っちゃったぜ」
『ん、すごく気に入ったわ』
レナはぬいぐるみを抱きかかえてから、嬉しそうに小さく微笑んだ。
「可愛い。しまった! 反射的に言っちゃったよ! でも仕方ないよな可愛いんだもん」
「完全に開き直りましたね、先輩」
「だって可愛いだろ?」
「ですね。ぬいぐるみとお揃いでとても可愛いです!」
「だよな~」
『も、もう二人とも。それ以上は恥ずかしい……』
照れたように俯いてしまうその姿も、非常に可愛かった。
欲を言えばこのまま眺め続けていたかったが、その願いはかなわない。
『次は美沙っちのプレゼントね』
いったんぬいぐるみをソファーに座らせて、今度は天月のプレゼントを手に取る。
先ほどと同じように、ゆっくりとリボンをほどいていく。
箱を開けると、中にはレナがやりたがっていたゲームソフトが入っていた。
『私が欲しがってたの覚えててくれたんだ』
「前にみんなで遊んだらものすごく楽しそうって言ってたからな」
「ぜひ三人で一緒に楽しみましょうよ! きっとこれ以上ないくらいに盛り上がりますよ!」
『ん、この後みんなでやろ』
「ええ、やりましょう!」
「ああ、楽しい思い出をまた一つ作ろーぜ」
レナは嬉しそうに一つ息を吐いて。
『最高の思い出が、今日だけでいっぱいできたわ。ありがとね』
これ以上ないほどに幸せだというのが一目で伝わるような、極上の笑顔を見せてくれた。





