第三十九話 花火大会
ヒュルルルルという音とともにオレンジ色の光が空に向かって昇る。
――ドォォンッ! と音を立てて、特大の花が咲き誇った。
『わぁ……!』
「始まったな」
それを皮切りに、次々と色とりどりの光が空へ昇っていく。
炸裂音とともに、満天の夜空にカラフルな模様を描いていく。
俺たちは息をするのも忘れて空を見上げ続ける。
さっきまではあれだけ騒がしかった観客たちも、今は静かに魅入っていた。
『キレイ……!』
「すごいな」
次々と打ち上げられる花火が、飽きさせないとでもいうかのように夜空を彩り続ける。
可愛らしい花の形をしたもの。
ハートマーク。
星の形をしたものなど。
花火は次から次へ目まぐるしく姿を変えていく。
それぞれが思い思いに打ち上げられているのではなく、打ち上げられるすべての花火が完全に調和して絶妙なハーモニーを奏でていた。
『……花火大会に来るのは初めてだったけど、ホントに来てよかったわ』
「これ以上ない絶景だろ?」
と、そのタイミングで特大サイズの光が天に昇っていき――。
『海斗と一緒に見れてよかった』
ドォォォォンッ! と音を響かせて、虹色の花を咲かせた。
小さく呟かれたレナの言葉は、花火の音にかき消されてしまった。
「なんか言ったか?」
『ん、何も。それより、何か来そうだわ』
「ハイライト的なやつかな?」
花火のほうに意識を戻せば、先ほどまで休むことなく打ち上げられ続けていた花火が止んでいた。
嵐の前の静けさとでもいうような静寂が場を包む。
これから一番すごいのが来るのだろうというのをひしひしと感じた。
そして、それが正しいとでもいうかのように一斉に打ち上げ音が鳴り響く。
刹那、色とりどりの鮮やかな花火たちが、満開の桜のように一斉に咲き誇った。
『すごい! ヤバい! めっちゃキレイ!』
「圧巻の光景だな……!」
視界いっぱいに広がる神秘的な景色に、誰もが歓声を上げる。
彩色千輪と呼ばれるソレは、言葉で表すのも難しいほどの美しさだった。
この場にいる誰もが見惚れてしまうほどには。
「……レナもあれに負けないほど奇麗だけどな」
だからだろう。
美しい光に照らされた隣の少女に向けて放った言葉に、本人が気づくことはなかった。
俺が内心で悶えていることにも、気づくことはなかった。





