第三十三話 学校へ
「楽しんできんさいね」
「ん、行ってくる」
『いっぱい遊んでくるね!』
レナの着物姿の鑑賞会が終わった後。
俺たちは、ばあちゃんに見送られながら玄関を出た。
田んぼや畑に囲まれた道路を並んで歩く。
肌を撫でる夜風が心地いい。
周りに意識を向ければ、虫たちのにぎやかな鳴き声が響いていた。
「久々の夏祭りだから楽しみだよ」
『そうね。私も楽しみだわ』
「レナは何かしたいことあるのか?」
『んーっと、久々にわたあめを食べたいわね』
「いいな、わたあめ。俺も食べたい」
『あったらいいわね』
「そうだな」
言葉を交わしながらのんびり歩く。
時折、近くに住んでいるのであろう子供たちやその保護者が俺たちの横を通り過ぎていく。
彼らも夏祭りが目当てなのだろう。
『……手、つなご?』
隣を歩くレナが急に静かになったと思ったら、しばらくの沈黙の後におずおずと手を伸ばしてきた。
その頬が赤いのは、きっと夕日のせいなのだろう。
『私が迷子にならないために握るんだからね』
「そうか。じゃあ、お前がはぐれないようにしっかりと握っとくよ」
いくら方向音痴でも一緒に並んで歩いていれば迷子になるわけがないだろ、などというツッコミは野暮ってもんだ。
俺はそっと、それでいてしっかりと離さないようにレナの手を握った。
相変わらずの柔らかい触感を味わっていると、レナが至近距離で俺の顔を覗き込んできた。
ふわりとミルクのような甘い匂いが鼻孔をくすぐる。
『ふふ。海斗、顔赤くなってるわよ』
「うるせー夕日でそう見えるだけだ」
『茹蛸みたいな顔になってるわよ』
「それを言うなら、レナだって顔真っ赤だぞ。赤べこみてーだ」
『これはただ日焼けしただけだし!』
「焼け爛れてるレベルだけど大丈夫か?」
お互いをからかったり、ボケにツッコミを入れたり。
仲良く手をつなぎながら楽しく歩いていると、とうとう学校が見えてきた。
『学校が小さい割にグラウンドは広いわね』
「ほとんど何もないド田舎だもんな。土地が余っててもおかしくはないか」
着物や浴衣を着た他の人たちについていけば、あっという間に校門の前に着く。
「行こーぜ」
『ん!』
グラウンドの真ん中に建てられた櫓やその周りに並ぶ屋台を一瞥してから、俺たちは学校の中に足を踏み入れた。





