表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/62

第十三話 バイト先で

 ゴールデンウィークの時にたくさん散財した俺は、お金を稼ぐべく連日バイト漬けの生活を送っていた。


 俺が働いているのは、中華料理を専門とする店だ。

 地元住民に人気があるため、平日の夜でもやって来る客の数は多い。


 せっせとラーメンを作っているうちに、気づけば時刻は九時を過ぎていた。


「今日はいつもよりもお客さん多いですね」


 オーダーを片付けて一息ついていると、キッチンの別の場所を担当している女の子が話しかけてきた。


 彼女の名前は天月美沙(あまつきみさ)

 別の高校の生徒で同い年なんだけど、この店にアルバイトとして入ってきたのは彼女のほうが後なので先輩後輩という関係になっている。

 入ってきたばかりの彼女に俺が仕事内容を教えたのもあるが、同年代で意外と趣味が合うということで、それなりに仲良くしていた。


「だな。まあ、ゴールデンウィークの時と比べたら、圧倒的に少ないんだけど」

「あの時は大変でしたね」


 少しの間、他愛のない話をしていた俺たちだが、すぐに話題は変わった。


「先輩にお勧めされたラノベ読みましたけど、めっちゃ面白かったですよ!」

「お、やっぱ天月もそう思うか」

「ええ。クライマックスで主人公が愛を叫ぶシーンなんて、すごく最高でしたよ!」

「あれはめちゃくちゃエモいよなぁ」

「エモいエモい」


 ラノベ談義に花を咲かせつつ、時々入ってくるオーダーをそつなくこなしていく。


 もう少しで上がる時間が近づいてきたというところで、楽しげに話していた天月が急に固まった。

 引きつった表情で、俺の後方、それも上のほうを凝視している。


 突然どうしたんだと思って後ろを見れば──。


「うわぁ!?」


 天井からうっすらと体が透けている人間が生えていた。

 年のころ十七くらいで、恨めしそうに俺たちのほうを見て……。


「……って、レナじゃねーか! お前は鍾乳石かなんかか!」


 天井から逆さまに生えてるとか、それもう普通にホラーだから!


 天月のほうを見れば、案の定ビックリして固まったままだった。


「あー、こいつは俺の知り合いで、レナっていう。見ての通り幽霊だ」

『ちなみに中級悪霊よ』

「ゆ、幽霊ってホントにいたんだ……。見るの初めてです……」

『その言い方だと、アンタも霊感はないみたいね。海斗と同じで、私と波長が合ったっぽいわね』


 天月はレナに驚いたものの、俺の説明をすぐに呑み込んだようで。

 すぐにいつもの態度に戻ってから、ニヤニヤした表情で聞いてくる。


「お二人って仲良さそうですけど、どのような関係なのですか?」

「ん? まあ、わけあって同居してる感じだ」

『仕方なく同居してあげているわ』

「世話される側が何を偉そうに」


 いつものように軽いやり取りをすると、その様子を見ていた天月がからかうような表情を浮かべた。

 なんか、嫌な予感がした。


「ふむふむ。先輩はこんな美少女と同棲していると。ラブコメ小説みたいなことしてるんですねー」


「『こんなやつのこと好きじゃないから!!』」


「息ピッタリで仲良しじゃないですか」

「『どこが!!』」

「そこが」


 小悪魔的な天月に翻弄される俺たち。

 完全に天月のペースに呑まれている。

 俺は話題を変えようと思って、気になっていたことを尋ねた。


「なあ、レナ。なんでわざわざここに来たんだ?」


 というか、方向音痴なのによく来れたな。


『ほら、ここ最近の海斗はバイトばっかりだったからさ。あまり海斗の作る料理食べれてないから、賄を作ってもらおうと思ったの』

「なるほど。先輩はいつも手料理を振舞っていると。メモメモ」

「メモしないで?」


 天月がニヤニヤしながらお構いなく~と言ってくるので、俺はしぶしぶ話を戻す。

 深掘りすると面倒なことになりそうだからな。


「賄を作れって、さすがに二人分は無理だぞ」

『海斗の物は私の物!』

「お前はどこぞのガキ大将か。まあ、憑依して食べるんなら問題ないな」

『ん。じゃあ、そう言うことで』


 そうこうしているうちに十時を回ったので、俺と天月はそれぞれ自分の分の賄を作ってから上がった。

 レナは上機嫌で俺たちの後ろをついてくる。


 お盆に乗せた料理を休憩スペースまで運んだところで、改めて自己紹介することになった。


宮乃(みやの)レナっていうわ。仲良くしてあげてもいいわよ?』

「私は天月美沙(あまつきみさ)です。よろしくお願いしますね」


 自己紹介が終わったところで、賄を食べながら雑談する。

 初対面だけど馬があったようで、レナと天月はあっという間に仲良くなった。



 この時の俺は知る(よし)もなかった。

 天月によって、俺だけじゃなくレナまでもが振り回されることになるとは。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつも読んでくださりありがとうございます!
↑の【☆☆☆☆☆】を押して評価していただけると作者が喜びます!

こちら新作です!

タイトル『落ちこぼれの無能だと貴族家を追放された俺が、外れスキル【キメラ作成】を極めて英雄になるまで』

貴族家を追放された主人公が、美少女キメラと一緒に英雄にまで成り上がるお話です!
こちらもよろしくお願いいたします!!!

また、peepにて拙作『不知火の炎鳥転生』がリリースされました!!!

html>


作品ページはこちら

超絶面白く仕上げているので、ぜひ読んでみてください! 青文字をタップするとすぐに読めます!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ