弟とおじさん〜追悼〜
前半は母(当時小学四年生)のノートより。
後半は私が書きました。
「外灯」 花野
私の家の前に
外灯がたった
夜
弟をおぶって
外へ出た
とても明るい
木の葉が
光って見える
きのうとは
あたりのようすが
ぜんぜんかわってしまったようだ
キャッキャッと
弟が笑う
わがままで泣き虫でおこりんぼうの弟を
外灯が照らしている
* * *
「追悼」 れみ
顔、見ますか
葬儀屋さんが言った
わたしはうなずいた
安置室の奥から
おじさんの棺を出してくる
お化粧をしてください
お花もお願いします
式の日程を決めて
わたしは帰った
おじさんは病気だった
もう、長い間
どうして自分だけこんな世界に来てしまったんだろうと
さいごの力を振り絞って
おじさんは包丁を振り回して
警察につれていかれた
大丈夫だよ
悪い奴はもう帰ってこないからね
みんながわたしを抱きしめた
でも
おじさんがいなかったら
誰が燃えないごみの日を教えてくれるの
誰が
宅配便を代わりに受け取ってくれるの
外灯に照らされて
子どもの笑い声が聞こえてくる