第07話 勇者のいない時間
どうも皆さん、勇者 長門賢治の最初の仲間にして天才魔法使いの、クリスです。
何故今回私が代わりにこんなことを説明しているかと言うと、
【俺が勇者になったなら】
07『勇者のいない時間』
長門
「俺は新しい仲間になってくれそうな奴がいるらしいからそいつを探すことにする。が、お前らは昨日やらかした傷を治しておけ。んじゃ」
2人
「うぅ、すみません、」
ガチャ
そう。私とシオンの2人は魔物との戦いで負傷してしまった。
傷そのものは大したものではないにしろ、勇者さんは遠慮することなく、今滞在中の村で大人しくしてるように告げて出て行った。
何でもこの村には私達に次ぐ新しい仲間にする為の人がいるらしく、勇者さんはその人物を探しに出た。
クリス
「なんか、暇ですね」
シオン
「そうね。いざ休めと言われても、いろいろと困惑するわ。ねぇ、クリスって勇者くんが来るまでどんな生活してたの?」
クリス
「え? 私ですか? 面白いものじゃありませんよ」
シオン
「いいから。仲間のことはある程度知っておきたいの」
クリス
「えぇ、そうですね。私は元々は親元の無い孤児だったんですけど、魔法使いの師匠に拾われましてね。弟子になる条件で師匠の家にお世話になったんです。大変厳しい人でした」
クリス
『ひぐっ、』
魔法使い
『それも違うと言っておるだろう!』
クリス
『ひっ、ごめんなさい、』
魔法使い
『ええか? この薬品は下手を踏めばその場で爆発する代物じゃ。よく覚えとけ』
クリス
『そ、そんな怖いことやですよ!』
魔法使い
『これも仕事じゃ。やれ』
クリス
『う、うぅ、』
クリス
「でも、なんやかんやで楽しかったです」
クリス
『師匠ー! これ見て下さーい!』
師匠
『ギャーッ! こっち持ってくんなー!』
クリス
『なんでですか!? 見て下さいよこの色合い!』
師匠
『それまた爆発する奴ー!』
ドゴーンッ
クリス
「なんやかんやで楽しい日々でしたね」
シオン
(爆発しなきゃ、ダメなのかしら、)
クリス
「そして初めて勇者さんと出会った時、」
長門
『………』
クリス
『(何だろう、この人ちょっと怖い、)あの、クリスです! よろしくお願いします!』
長門
『………』
クリス
『(な、何か、失礼なことしたかな………? さっきから睨んで何もしないし、)』ワナワナ
長門
『クリス』
クリス
『は、はい!』
長門
『いま年はいくつだ?』
クリス
『じっ、15です!』
長門
『そっか、』
ぽふっ
クリス
『え、』
長門
『ごめんな。俺みたいな見知らぬ人間と旅をさせる羽目にして。もちろん途中でいやになったら逃げてもいい。必ずお前を悲しませることになるからな』ナデナデ
クリス
『(この人、)』
ギュッ
長門
『ん?』
クリス
『大丈夫です! 痛いのにも苦しいのにも慣れっこですから!』
クリス
「フフフ、いつ考えてもおかしな人ですよ。最初はいい人だなぁって思った矢先でグチグチグチグチ、自分は勇者に向いてないだの俺なんかに頼ってる時点でこの世界は終わったも当然だの、酷い人でしたよ」
シオン
「勇者くんいろいろと残念だからね。でもそっか、私が会った時にはもう愚痴はあまり言わなくなってたからね」
クリス
「いつまでも言い続けると思いきやすぐに言わなくなりましたからね」
シオン
「その頃の勇者くんを甘やかしたかったなぁ」
クリス
「え?」
シオン
「あ、何でもないですハイ」
クリス
「むぅ、………もう暫くしたら村を歩きまわりませんか? 勇者さんも村の中で大人しくしてるように言ってましたし」
シオン
「そ、そうね、少しは歩かないとね」
クリス
「それにしてもナージ村でしたっけ? 何だか外にいる人間が少ないですね。ほとんどの人が家に籠もってますよ?」
シオン
「宿の人に聞いたのだけれど、この辺りでは盗賊が続出してるらしくて、あまり外には出たがらないそうよ。中にはここを引っ越す際に村を出た途端に襲われたとか」
クリス
「それで表にいる冒険者は盗賊の討伐依頼で警護ですか」
冒険者
「ん? お嬢さん方、悪いことは言わない。あまり彷徨かないことだ」
クリス
「大丈夫です。こう見えて私達も冒険者ですから」
冒険者
「明らかに怪我人じゃないか。ダメだダメだ」
シオン
「強情ね。仕方ないし戻りましょう」
カンッ、カンッ、カンッ、カンッ
冒険者
『敵襲だー! 盗賊達がまた来たぞー!』
一同
「ッ!?」
クリス
「シオン!」シュルッ
シオン
「えぇ、休んでなんかいられないわ!」シュルッ
冒険者
「何を言ってんだ! 早く避難しろ!」
クリス
「私達は勇者一同の冒険者です! お願いですから手伝わせて下さい!」
冒険者
「何だと………!? ったく、さっさと装備を整えて出直して来な! その間に俺達が連中を抑えておく!」
シオン
「ありがとう! 無理はしないでね!」
冒険者
「ったく、無茶してんのはどっちだよ」スチャ
シオン
「急ぐわよクリス! 何だか胸騒ぎがするの!」
クリス
「まったく、なんでこんな時に勇者さんはいないんですか!」
冒険者
「ハァ、ハァ、ハァ、まさか、こんな奴を呼び出すような馬鹿がいるとはな、」
盗賊
「ハハハハハハッ! ひれ伏せよお前ら! コイツの実力を知った上でまだ抵抗するなんて考えちゃいねえだろうな!?」
冒険者
「なんでよりによって、」
魔物
「Gaaaaaaaa!!!」
冒険者
「本物のアンデッドを使役してんだ………! あいつら!」
クリス
「アンデッド!?」
宿屋
「あぁ、盗賊の連中、本物のアンデッドを連れてこの村に来おった! お前さん達もはよ逃げえ!」
シオン
「本物のアンデッドには、聖職者しか対抗できない。この村に聖職者はいないの?」
宿屋
「噂だけで実際にいると言う確証はない。今回雇った冒険者達もアンデッドが来ることは想定しておらなんだ。聖職者なんて連れてる筈もなかろうて」
クリス
「そんな、じゃあ、今頃冒険者さん達は、」
アンデッド
「Gaaaaaaaaaaaa!!!」
ドゴーンッ
冒険者
「ぐぁ!」ドンッ
冒険者
「うおぉッ!」ガシャン
アンデッド
「Gaaaaaaaaaa!!!」
冒険者
「なんでだよ、なんで盗賊がアンデッドなんか!」
盗賊
「そりゃあ企業秘密ってやつだ! お前らは何もわからないままくたばりやがれ!」
アンデッド
「Gaaaaaaaaaa!!!」
冒険者
「う、うわァァァァァァッ!」
ボンッ
アンデッド
「Gyaaaaaaaaaaa!?!?!?」
クリス
「冒険者の皆さん! 応援に来ました!」
冒険者
「さっきのお嬢さん方!」
シオン
「あなた達は一旦下がって、手当と補給を済ませて下さい! 今度は私達が時間を稼ぐ番です!」
冒険者
「す、済まない! 全員一時退却! 傷の浅い者は負傷者を担げ!」
クリス
「行きますよシオン! 多分この騒ぎは勇者さんも気づいてるはずです!」
シオン
「えぇ、それに勇者くんの武器ならあのアンデッドにも対抗できるはずね!」
長門
「あ〜ぁ、ったく。悪いね、初仕事はこんな形になって」
?
「いいよいいよ。相手が誰であれ、」スチャ
ザンッ、ドシンッ
?
「切り刻むだけだから♪」バッ
タッタッタッタッタッタッ
長門
「おぉ、恐い恐い。じゃあよろしく頼むよ。聖職者さん」
クリス
「最大出力………! フレアショットガン!」
ドドドドドドドドドドドドッ
盗賊
「ぐぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
アンデッド
「Gaaaaaaaaaaa!!!」ジュワジュワ
クリス
「ハァ、ハァ、やっぱり、すぐに再生します!」
盗賊
「くっ! 引き上げるぞお前ら! どうせアンデッドは誰にも制御できないんだ!」
シオン
「させないわよ!」
シュルルッ、ギュッ
盗賊
「ぐわっ!? な、女が何人にも!?」
シオン
「初めてかしら? 森忍の分身を見るのは」
クリス
「でも、このアンデッドは、」
?
『待ったーーーッ!』
2人
「ッ!?」
ブワッ
アンデッド
「Gaaaaaaaaaa!!!」
?
「チェア!」ザンッ
バカッ
アンデッド
「Gaaaaaaaaaa!?!?!?」
クリス
「お、女騎士!?」
シオン
「は、早い、」
女騎士
「ホーリーコーティング!」パァ
アンデッド
「Gaaaaaa!!!」
シオン
「よ、避けて!」
女騎士
「フンッ!」
ザンッ、ドサッ
アンデッド
「Gaaaaaaaaaaaaaa!!!」グラッ
クリス
「ア、アンデッドの腕が!」
シオン
「それに見て、あの断面!」
アンデッド
「Gaaa!?!?!?」パァ
クリス
「腕が再生しない………!?」
長門
「あれが聖職者の力、ホーリーコーティングだ」
クリス
「勇者さん!?」
シオン
「あなた、今までどこに………!」
長門
「なんだもう忘れたのか? 言っただろう。新たな仲間を見つけに行くって」
クリス
「新たな仲間って、じゃああの人が!」
長門
「そう。一度は神に使える神官だったにも関わらず、生死の境目に快楽を覚え、その身にあらゆる刃を纏った狂気の聖職者───」
女騎士
「ハァ!」ブワッ
長門
「───エレナだ」