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俺が勇者になったなら  作者: NO KNOWN
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第05話 あぁ、やってしまったか勇者よ

前回のあらすじ、


麻薬の密輸に関わっていた森忍がごく一部であることがわかった長門達は、シオンを説得した後に長老を撃破、麻薬に関わっていた森忍は首謀者である長老を突き出して自首した。


そして、森忍の一員であるシオンは長門達と共に旅に出ることになった。




長門

「ゼァッ!」ドゴーンッ


クリス

「ハァ!」ドンッ


シオン

「チェア!」スパッ


魔物

「Grrrrrrr………」


長門

「よし。ご苦労さん2人共」


クリス

「ん〜! やっぱり魔物と戦ってると魔王軍と戦ってる感が出ていいですね」


長門

「同感だ。うん、血が騒ぐな」


クリス

「うわ、勇者さん、勇者にあるまじき表情してますよ」


シオン

「こわっ、」ゾッ


長門

「いいんだよ勇者なんて建前なんだから。立場上旅に出て魔王軍と戦ってるってだけさ」


シオン

「そう言う訳にはいかないわよ。勇者は魔王軍と直接戦いに行くシンボル。そのシンボルがゲス顔の勇者なんて来世の恥よ」


長門

「えぇ、そう言った義務まで押し付けられてもなぁ。それにそれを言っちゃあ魔槍なんて持ってる時点でアウトじゃないの?」


クリス

「あぁ、そっちでは聖剣などが当てはまり易いんでしたね。生憎とこちらで聖なる武器となるものは記念品みたいなものでして、実戦向きではないんですよ」


長門

「なるほどねぇ、まあ一応グラムとかバルムンクとかあるしな。けどよりにもよってアスモデウスかぁ」


シオン

「アスモデウスが何か?」


長門

「七つの大罪ってやつで色欲を司ってることになってんだぞ」


クリス

「色欲、ですか?」


長門

「んで、それに擬えてこいつには持ち主の思うままにいろんな武器として機能するが、それだけじゃないみたいだけど」


シオン

「聞いたことあるわ。存在する魔性の武器はそれぞれ能力を持ってて、普段使ってる力はあくまでも応用した一部なんだって」


長門

「物質鑑定でそこまではわかるが、まだこいつには使える力が眠ってるらしい。まあなんかの拍子で発動するだろう」


クリス

「それもそうですね。あっ、遂に見えましたよ。ハッシュ王国の城が」




【俺が勇者になったなら】


05『あぁ、やってしまったか勇者よ』




ハッシュ王国とは、俺達が活動していた区域の国名で、まずは王様に挨拶の為に旅をしていたのだ。


だからまだ直接、魔王のところに向かってた訳ではない。


そしてハッシュ王国は、この世界で最も魔王の拠点から離れた国の1つでもある。




クリス

「ほぉ〜! やっぱり王都は凄いです! 私の村なんかと比べ物になりません!」


長門

「だな。とても綺麗なところだ。で、お前は何してんだ?」


クリス

「あれ? シオンさんなんで隠れてるんですか? って言うか、勇者さんから離れて下さい!」


シオン

「ま、待って! 私、森を出ることはあったけど! 王都に来るのは初めてなの! だから、こんなに人混みが多いのには慣れてないの!」


クリス

「だったら勇者さんじゃなくてもいいじゃないですか! 私にくっついて下さい!」


シオン

「いや、クリスじゃ身長差があるから、」


クリス

「あっ! 言ってはいけないことを言いましたね! 今に見てて下さい! 絶対に伸ばして見せますからね!」


シオン

「わ、わかったから! わかったから突っかからないで!」


長門

「どうでもいいけどお前ら王室の前だぞ」


クリス

「えっ! いつの間に!?」


長門

「お前らがイチャイチャしてる間に入門から執事のじいちゃんの案内からマナーの説明までだ。本当なら正装で行きたかったのに」


シオン

「ちょっ、マナー!? 大丈夫かしら!?」


執事

「ご静粛に。扉を開けますよ」


クリス

「えぇ、ちょっと待っ───」


執事

「第187代目勇者! 長門 賢治並びに、以下2名の冒険者! ご入場致します!」


『入りまたえ』


ガチャ


クリス

「あ、あわわわわわ!」


シオン

「おおおおお落ち着いてクリス! 王様ままままの前よよよ!」


スタッ


長門

「お初にお目に掛かり光栄至極。第187代目勇者、長門 賢治とその一行、只今到着致しました」


クリス

(あの人ホントに元無職!? 凄い順応してるんですけど!?)


国王

「こちらこそ、お初にお目に掛かる。私は君と同じ第187代目の国王、ゼノギアス・V・ハッシュだ。よろしく頼む」


長門

「光栄です。王とこのような共通点があるとは」


国王

「私も嬉しい限りだ。だが正直なところ、喜べることでもないのだ。君が187代目と言うことは、先に186人もの人間を勇者として派遣したにも関わらず、未だに魔王軍との交戦状態は一切変わりがないのだからな。それに勇者を派遣し始めたのは祖父の代からなのだ」


長門

「お言葉ですが王よ。それは逆に、それ以上の被害を受けたことが無い。そう言った認識も取れますよ。ですので、あなたの判断は最善で無いとしても、あなたの判断は確実に間違いの無いことだと、その歴史が証明していれのではないでしょうか?」


大臣

「貴様! 王の判断を最善でないと申すか!?」


国王

「良い。長門くん、君はとても優しいのだな。私の民は皆、勇者を派遣して負ける、そして何の成果も挙げられないと苦言を吐くばかりにも関わらず、君は私を違う見方で見てくれた」


長門

「そのようなことはありません。きっと私は、あなたが自慢げに自らのことを評価すれば、逆にあなたを批判していたかもしれませんから」


国王

「ハッハッハッ。君の国では、君のような者を天の邪鬼と呼ぶらしいな」


長門

「私の国のことも知られているのですね。とても感激でございます」


国王

「やめてくれ。これはあくまでも、君達がこちらの世界を過ごし易くする為に参考にしようとした成果にも関わらず、私は何も実行できていないのだから」


長門

「ありがとうございます。ですが、それは王が国民に頼られている証拠ではございませぬか? あなたを国王として頼る者がいるのです。どうぞ、あなたの役目を国民達の為にお使い下さい」


クリス

(凄い、勇者さん凄い王様褒め殺してる)


シオン

(以外に、ちゃんと働いていれば何とかなったんじゃないの?)


国王

「………君にはどうか、この戦いに勝利し、私と酒を酌み交わしてほしいものだ」


長門

「王よ。戦前の約束事は死亡フラグと申しまして、高い確率で戦に向かう者は亡き者となってしまいます」


国王

「なんと! では今までの勇者達の死因は私との約束事になってしまうではないか!」


長門

「お気に召されないで下さい。あくまでも物語の話であり、実際にこう言った件で亡くなられた事例はありません故、」


国王

「そ、そうであったか、心臓に悪いな。大臣に至っては既に気を失いかけておる」


長門

「申し訳ございません。ですが、予想以上の反応を見られてとても心が踊りました」


国王

「………フフ、礼儀正しさとは裏腹に黒い男だな」


長門

「それは勿論。私がただの半端者ゆえの愚行でございます」


国王

「半端か、だが君との会話はとても愉快極まりない。気に入った。勇者殿、宜しければ今夜宴会を開きたい。どうか参加をしてはくれまいか? 戦後と言わず今の内に済ませておきたい」


長門

「王の仰せとあらば」






クリス

「いや〜、凄かったですよ勇者さん! 本当はどこかで働いていたことあるんじゃないですか?」


長門

「俺は元ニートだ。が、礼儀作法は教えてもらえば大体はできる」


シオン

「それに比べて私達、凄い恥ずかしかったな、」


クリス

「うっ、言わないで下さいよシオンさん、あの後の自己紹介じゃかなり震えましたけど、」


長門

「とにかく、折角のパーティーだ。さっさと服選んで着替えて来い。ご馳走も出るが話を聞くを優先しろ」


クリス

「えぇ、食べちゃダメなんですか!?」


長門

「話が終わったり声を掛けられなきゃ食べていいけど、ちゃんと受け答えしろよ」


シオン

「勇者くんっててっきり食べる方だと思ったけどそうでもないの?」


長門

「………コイツの食い意地のお陰で俺の食い意地が治った」


シオン

「うん、大体察したわ」


クリス

「ちょっと! 人を大食いみたいに言わないで下さいよ!」


長門

「お前食事中の自分の姿を見てみるといいよ」




クリス

「へへ〜ん! どうですか勇者さん! 可愛いでしょう!?」


シオン

「似合うかしら? 勇者くん」


長門

「馬子にも衣装ってやつか。似合ってんぞ」


クリス

「? それって褒めてるんですよね?」


シオン

「知らぬが仏ね」


クリス

「それにしても勇者さん、まるで貴族のお坊ちゃんみたいですね」


シオン

「そうね。正装だと不思議と頼り甲斐が無いわね」


長門

「それが俺の本性だ。いずれ期待を裏切るぞ」






長門

「だ〜か〜ら〜! 俺が勇者だって言ってるでしょうが!」


受付

「それはいいのでどこの誰か早く仰って下さい」


長門

「だから勇者の長門 賢治なんだってば!」


勇者

「あなたのような肥えた貴族みたいな勇者なんて見たことありませんよ」


長門

「悪かったな! これでも減量中なんだよ! こっち来た時より身軽になったつもりなんだからな!」


受付

「と申されましても、」


執事

「勇者様〜!」


長門

「あっ、おじいちゃん! 俺達の特徴ちゃんと伝えてなかったのか!?」


執事

「申し訳ございません。こちらの不備でございます。彼らは本物の勇者パーティだ。通してあげなさい」


受付

「し、失礼致しました! どうぞお通り下さい」


長門

「ハァ、助かったよ」


シオン

「やっぱり勇者は見た目の威厳も必要みたいね。減量には付き合うから覚悟しなさい」


長門

「うん、あんがと、」


クリス

「わぁ、美味しそうな匂いがここから既に匂ってくる」






国王

「皆のもの、今回は急な宴会ゆえに大した持て成しができなくて申し訳ない。だが、私は戦地に向かわせる勇者が来る度、よく酌み交わしたいと思っていてな。不吉極まりないが、今の内に済ませておきたいと思ったのだ」


長門

(ホント不吉極まりねぇ)


シオン

(コラ、)


国王

「では勇者よ。何か一言頼めるか?」


長門

「あまり期待なされるな」


国王

「お主の言葉だ。得になることを言ってくれるだろう」


長門

「ハァ、そこまで言うなら、」


貴族

『あの方が今回派遣された勇者? どう見てもどこかの貴族のご子息にしか見えませんわ』


貴族

『しっ! 先程それを言われてとてもお怒りなされてた。本人の前で言ってはならんぞ』


貴族

『それに勇者として派遣されてからには何らかの才能を備えているはず』


クリス

(あの人達好き勝手言ってくれますね)


シオン

(抑えておいて)


スッ


長門

「人は言った。やっていいのはやられる覚悟がある者だけだとな。だが俺にはそんな覚悟はない。だから、叩いたら相手を潰すまで叩くことにした。そして英雄や正義の味方を名乗るつもりも無い。それは誰かの為に動く連中のことだからな。だから自分の為に戦う俺はそんな名誉はいらん」


国王

「自分の為か、君は本当に奇妙な男だ」


長門

「だからそちら側から何かを依頼し、こちらが失敗したとしても、俺は一切の責任を取らない。頼んだ人間の人選ミスとしてな」


・・・


クリス

(な、なんつー忠告してんですかあの人はァァァァァァァッ!!!???)


シオン

(勇者くん首を飛ばされたいの!?)


貴族

「何を言っているんだ君は!?」


クリス&シオン

「ッ!」ビクッ


長門

「ん? 何って、依頼は受けるけど責任は基本的に取らないって話だよ?」


貴族

「そうではない! 君はつまり! 私達貴族が自分から頼み事をしておいて責任を押し付けるような連中に見えるのかね!?」


長門

「いえ、どっちなのかなんて初見じゃわからないんで前もって言っておいただけです。はい」


貴族

「だったら言わせてもらおう! 貴族は! 自分の尻くらい! 自分で! 拭える! 責任転嫁するような貴族など! 本物の貴族ではない!」


少数の貴族

「ッ!」ギクッ


長門

「ふ〜ん、あなた名前は?」


貴族

「アルティス・V・ブランシュネーゼ。今は小さな貴族だ」


長門

「………」


ポンッ


長門

「それは申し訳ないことをした。ご無礼をお許し下さいブランシュネーゼ卿」


アルティス

「え、う、うむ。こちらこそ、理解に感謝する」


長門

「では国王、乾杯の言葉をお願い致します」


国王

「うむ。そらでは皆の衆、勇者の勝利を祈って、乾杯!」




クリス

「はむ、んぐ、はぐっ!」モシャモシャ


貴族

『凄い! 基本的に虚弱体質で有名な魔法使いがあんなに料理にがっつくなんて!』


貴族

『あっちは森忍だぞ!』


貴族

「どう言った経緯で今回は勇者との協力をなさったのですか?」


シオン

「え、えぇ、」


貴族

「何故目を逸らすのですか? 私はただ聞いただけなのに、」


長門

「流石は大食い魔法使いと森忍。例年通りに現れた勇者に加えて面白みのなさそうな俺には話し相手は無しか」


国王

「そのようなことはないぞ」コトッ


長門

「おや、国王様。如何なさいましたか?」


国王

「もう少し楽に喋ってくれ。こちらまで堅苦しくなってしまう」


長門

「じゃ、俺なんかの相手してないで貴族の皆さんと駄弁ってる方が良いんじゃないですか?」


国王

「君も酷い男だ。私は君と話したいんだよ」


長門

「へぇ、悪者が伝染っても知りませんよ」


国王

「元々、私は悪ガキだったのでな」




長門

「あれ? 王様、なんか視界が歪んでる? あっ! 誰かが魔法で襲撃してきたんだな! 折角の宴会をパーにしやがって! お前ら全員足の小指をへし折ってやる!」


国王

「そうじゃー! 儂はただ勇者殿と酒が飲みたいだけなのじゃぞー!」


大臣

「殿下ー! 落ち着いて下さいませー!」


クリス

「勇者さん、お酒弱かったんですね」


シオン

「そうね。今までお酒呑まなかったけど、そう言うことだったのね」


長門

「よーし! 第1回! ドキドキ! アウト! セーフ! 野球拳大会の始まりじゃー!」


国王

「おぉー! なんか知らんが頑張るぞー!」


クリス

「何でしょう、止めなきゃいけない。と言うより、今後の為に止めなきゃと本能が言ってます」


シオン

「奇遇ね。私もよ」






長門

「ん、んん───ッ!」ガバッ


長門

(あれ? なんで俺裸なの? ってかここどこ? 誰かのベッド? あと、)


少女

「………」すやすや


長門

(誰この娘ォォォォォォォォォッ!!!???)


長門

(マズい、何がなんだかわからんが、とりあえず逃げ───)


ガシッ


長門

「………」ボタボタ


少女

「どこへ行かれるのかしら? 昨日はあんなことしておいて」

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