表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺が勇者になったなら  作者: NO KNOWN
4/15

第04話 少女の旅立ち

前回のあらすじ、


勇者となり旅をしていた俺は、泊まった村のギルドで麻薬密輸の調査の依頼を受け、近くの森で証拠を探る為に潜入した。


その結果、森の守護団体『森忍もりにん』が森の大半を麻薬の材料にすり替えられていることがわかり、その処罰に向かうことになった。




長門

「さて、」ガチャ


クリス

「………」


長門

「行かないのか?」


クリス

「なんで、」


長門

「ん?」


クリス

「なんで、勇者さんは、あんな簡単に仕事を引き受けたんですか?」ポロポロ


長門

「なんでって」


クリス

「シオンさん、本当に悪いことをしたのかわからないんですよ? 本当は、あんなことしたくなかったのかも知れないんですよ?」ポロポロ


長門

「お前なぁ、俺がただ皆殺しにしてただ森をバーニングしに行くだけだと思ってんのか?」


クリス

「え?」


長門

「お前の言う通り、シオンの姉ちゃんがホントに麻薬に関わってたのか聞きにも行くんだよ」


クリス

「え、えぇーッ!?」




【俺が勇者になったなら】


04『少女の旅立ち』




どうも皆さん。元無職の現役勇者、長門 賢治です。


元いた世界でだらけた生活に苦しんでいる中、異世界に呼ばれて勇者をやらされています。


ぶっちゃけた話、かなりダルいですけど頑張らせて頂いてます。






クリス

「な〜んだ! やっぱり勇者さん優しいじゃないですか〜!」


長門

「やかましいぞ。とりあえず手順としては、森に一撃ぶっ放して森忍共をあぶり出す。多分シオンもその中の混じってるだろうからシオンを探しながら森に入る。いいな?」


クリス

「そんなことより私の砲撃魔法で吹き飛ばしましょうよ。その方が楽ですよ?」


長門

「シオンまで吹き飛ばすつもりか?」


クリス

「あぁ、そうでした」


長門

「まあとにかく」スッ


ズォォォォォォッ


長門

「作戦開始!」ブンッ


ドゴォォォォォンッ




森忍

「ぐわァァァァァァッ!!!」


森忍

「長老! 彼奴らが!」


長老

「うろたえるな! シオン!」


シオン

「はい」


長老

「言ったはずだな? お前が責任を取ると?」


シオン

「………はい、全ては私めにお任せを」シュッ


長老

「他の者は前もって用意しておいた通路から脱出! ブツは全て持ち出せ!」


森忍

「ぐわッ!」ドサッ


冒険者

「「「うぉぉぉぉぉぉッ!!!」」」ドタドタ


長老

「な、なんじゃと!?」


ギルドマスター

「情報通りだったな! まさか森の裏口から脱出の通路を作っていたとは!」




長門

「フフ、物理感知の所有者を舐めんなよ!」ドゴーンッ


物理感知とは、この世界において俺がとても重宝しているスキルの1つだ。


能力としては視界を遮られた時などに、脳に直接視覚情報を取り入れるスキルである。


目潰しを食らった時の非常用の目とここの連中は認識しているが、俺は違う。


このスキルには自身のレベルに応じて、物理感知において見る視界は透視ができる。


その上、自分とは違った視点から見るようになっており、移動も可能で壁の向こうだろうと地中だろうと丸わかりとなる。


だが欠点として色彩情報は透視の際に輪郭だけとなる為、取り入れることができない。


クリス

「ちょっと待って下さい! それってお風呂とかトイレとか覗き放題じゃないですか!?」


長門

「細かいことは気にするな! それに別に見るつもりはねぇよ!」


クリス

「いや見て下さいよ!」


長門

「ハァ!?」


クリス

「じゃなくて! 大丈夫です! 何でもありません!」


長門

「何でもあるよ! 今とんでもないこと言っただろう! お父さんそんな風に育てた覚えはありませんよ!?」


クリス

「もう聞き逃して下さいよ〜!」


長門

「ッ! クリス!」バッ


クリス

「んっ!」


ガキンッ


長門

「手裏剣………!?」


バッ


長門

「ッ!」ガキンッ


ガキンッ、ガキンッ、ガキンッ


クリス

「やめて、やめて下さい、やめて下さい! シオンさん!」


シオン

「………」スタッ


長門

「昨日振りだな。シオンさん」


シオン

「そうね。でも、またさよならよ。今度は私が送ってあげる。あの世まで」


クリス

「なんで! なんでシオンさん、麻薬なんかに」


シオン

「我々森忍は、大昔から森で住むことを条件に森の自然を守ることを任されてきた。けど、一時期森の作物だけでは保たない時期が来てね。その時、薬の調合に優れていた今の長老が麻薬を売り始めたの。以降、森の人間は飢えに苦しむこともなくなったけど、もう後戻りも出来ないところにまで来てしまった」


クリス

「そんな、」


シオン

「だから、私達にはもう森の守護者を名乗る資格はもうない。もうここの植物はほとんど、麻薬にすり替えられているから」


長門

「………」


シオン

「なのにバカみたいよね? そんな森を吹き飛ばしたあなた達に、私は復旧を手伝わせてたのよ?」


ポロポロ


シオン

「こんなんじゃ、植物の良さなんて、伝わらないわよね?」


クリス

「………シオンさん、もうやめましょう。私、勇者に植物を植えさせてる時のあなたが、とても嬉しそうに見えました。勇者さんが素直に手伝ってる姿を見て、ウキウキしてるようにも見えました。長老に止められた時、本当に悲しそうに見えました」


ザッ


クリス

「今のあなたの涙が! 自分を抑える為に流してるように見えました!」


シオン

「………う、うぅ、」


長門

「シオンさん、あんたが後悔するのはあんたの勝手だ。でも、後悔したまま何もしないと、また後悔するのはあんたなんだ」


シオン

「………ッ!」


長門

「あんたがここで動かないと! また後悔して、今度こそ何も出来なくなるんだぞ!」


シオン

「勇者………くん……」


ガシッ


長門

「言えよ! 今あんたがやりたいことを! 今あんたがやらなくちゃ行けないことを!」


シオン

「私は、止めたい、皆を止めたい………!」ポロポロ






冒険者

「ぐわァァァッ!!!」ドタッ


ギルドマスター

「何なんだ………! あれが森忍の頭領の実力なのか?」


長老

「若造共、よくも儂の計画を台無しのしてくれたのぉ。1人残らず皆殺しじゃ。かかって来い………!」


冒険者

「こ、こんなの割の遭わねえよ!」バッ


冒険者

「うわァァァッ!!!」


ギルドマスター

「チッ、撤退だ! 一度引くぞ!」


長老

「逃すかァァァッ!」


ドゴーンッ


長老

「ぬぅ! 貴様ら!」


シオン

「長老、もうやめましょう! 私達は森忍にあってはならないことをしました! 今がその罪を償う時です!」


長老

「ふざけるな! ここまで来て引けるか! 者共! かかれ!」


シオン

「皆もお願い! 私達のやったことは許されることではないけれど、その償いをちゃんと認めてくれる人はちゃんといるのよ!」


クリス

「そうですよ! 悪いことをして反省した人を責める理由なんてありません!」


長門

「これ以上自分達の流儀を冒すんじゃねぇ! お前達はなんで森忍になったんだ!?」


森忍

「「「………」」」


長老

「な、なんだ貴様ら! 早くやれ!」


森忍

「「「………」」」スチャ


長老

「き、貴様ら気でも狂ったか!?」


森忍

「俺達は、俺達は森の守護者だ!」


森忍

「やっと思い出したよ。俺達は本当は何をしたかったのか」


森忍

「正直、許されないかもしれないって思ってたんだ。けど、それを1人でも許してくれる人がいるなら!」


森忍

「俺達は、森を守る為に森忍になったんだ!」


長老

「この、役立たずのクズ共がァァァァァッ!!!」


ドゴーンッ


森忍

「くっ!」


森忍

「気を付けて下さい! 長老はあらゆる薬を利用して自らの肉体を強化しています! 魔物にも引けを取らない程に!」


長門

「よりによってドーピングかよ。絶対ロクな目に遭わねえぞ」


クリス

「ドーピング? なんですかそれ?」


シオン

「いずれわかるわ!」


森忍

「ふんッ!」シュッ


ボウンッ


長老

「くっ!」


森忍

「「「ハッ!」」」シュシュッ


ザクザクッ


長老

「ぐぅ! ハァ!」


森忍

「手裏剣が効かない………!」


クリス

「皆さん! 退いて下さい!」コォォォォ


長老

「ッ!」


クリス

「出力最大! フレアショットガン!」


ドドドドドドドドドドッ


長老

「ぐはぁ! なんと言う火力じゃ!」シュ〜ッ


クリス

「勇者さん!」


長老

「ッ!」


長門

「任された!」ズォォォォォォッ


長老

「そ、その黒い剣は!?」


長門

「アスモデウス・セイバーモード!」


長老

「うぉォォォォォォォォォォッ!!!」


長門

「チェアァァァァァァァァァッ!!!」


ドゴーンッ


長老

「ぐはぁ! 薬の効果が、だが、まだ、まだじゃ! 儂は諦めんからな!」


シオン

「いいえ、もう諦めてもらいます!」シュルルッ


長老

「ッ! その技は!」


シオン

「あなた直伝の必殺技ですよね?」ギリッ


長老

「や、やめろーッ!」


ドゴーンッ


クリス

「シオンさーんッ!」




ゴソゴソ


シオン

「ぷはぁ!」


クリス

「シオンさん!」


シオン

「………」ニコッ


長門

「………よし、総員! 消火作業に移れ! 麻薬の煙をこれ以上吸う訳にはいかん! 作業が終わり次第、麻薬を1箇所に集めろ!」






シュ〜〜〜ッ


長門

「………ハァ」どよ〜ん


森忍

「あれ? なんであの人あんなに落ち込んでんだ?」


クリス

「さぁ? 勇者さん、どうかしましたか?」


長門

「柄にもなく指揮をとっちまった、」


クリス

「え〜? そんなことで凹んでたんですか?」


長門

「俺はどちらかと言えば、簡単な仕事を任されるくらいが性にあってんの」


クリス

「そうは思えませんけどねぇ。ところで集めた麻薬はどうします?」


長門

「森忍の連中に調合させて、麻薬としての機能を殺した上で処分してもらってくれ」


森忍

「勇者さん今回は本当にありがとうございます。我々は迷惑を掛けた村々の者の治療に行って参ります」


森忍

「その後は、薬に関わってた者は全員、王国で罪を償うことにします」


長門

「? その言い分だと、麻薬に関わってないやつもいるのか?」


森忍

「えぇ、シオンもその1人です。どうか、彼女達のことはあまり責めないでやって下さい。寧ろ今まで反対してくれていたので」


シオン

「そ、そんな! 私だって決して無関係な訳じゃ」


長門

「いいんじゃねぇの?」


シオン

「勇者くん!?」


長門

「この前の返しだよ。クリスのことは客として持て成してくれただろ?」


シオン

「………でも、私は、」


長門

「ハァ、俺が言うのもなんだが面倒臭え姉ちゃんだな」


森忍

「この娘人一倍責任感強いですからね」


長門

「えぇ! ゆすりに遭ったら絶対騙されるパターンじゃないですかヤダ〜!」


シオン

「………プッ、ハハハハハハハハッ!」


長門

「ん? 何笑ってんだ?」


シオン

「あぁ、ごめんなさい、フフフ、なんだか、気が抜けてしまって、」


クリス

「でも、シオンさんが元気になって良かったです」


シオン

「ありがとう、クリス」






ギルドマスター

「なるほどな、了解した。今回は本当に世話になったな。こちらが今回の報酬だ」ジャラッ


長門

「おう」


クリス

「あの、森忍の人達は、」


ギルドマスター

「安心しろ。首謀者を突き出した上で自首したんだ。悪いようにはしないさ」


クリス

「ハァ、良かった」


ギルドマスター

「残りの森忍達も、森を作り直して復旧作業に移ってもらっている。中毒になった村人達も、今は処方された薬で楽になりつつある」


長門

「そんじゃ、俺らのやることは終わったらしいな」


ギルドマスター

「あぁ、もう本業に戻って大丈夫だ。感謝する」




シオン

「………」


森忍

「どうしたんだシオン?」


シオン

「え? いや、何でも、」


森忍

「バカねぇ! シオンはあの勇者さんにほの字なのよ」


シオン

「そ、そんなんじゃ!」


森忍

「嘘だろ!? あのブ男に!?」


森忍

「あんなに格好付いたら惚れない方が無理あるわよ」


シオン

「そんなんじゃないもん!」


森忍

「「「え?」」」


シオン

「ッ!」カァ


森忍

「「「か、可愛い、」」」


シオン

「うわァァァァッ!!!」


森忍

「まあ、シオンちゃん」ポンッ


シオン

「………?」


森忍

「行ってきなよ。俺達だけでも森は復帰できるから」


森忍

「今度はちゃんと守ってみせるさ!」


シオン

「………みんな、」


森忍

「おい! 勇者さんが挨拶に来たぞ!」


シオン

「ッ!」ビクッ




長門

「〜、なぁ、シオンさん。どうかしたのか?」


シオン

「へっ!? いえ、何でもないわよ!?」


クリス

「………」


クリス

(あの、もしかしてあれって)


森忍

(はい。シオンちゃんをあなた達のパーティに入れてあげたいんですけど)


クリス

(それはいいんですけど、なんですかあの挙動不審。もしかしてシオンさん、)


森忍

(はい。勇者さんに、ライバル増えますけどお許し下さい)


クリス

「そそそそそ、そんな関係じゃないですよ! 私と勇者さんは!」


森忍

(((あ、やっぱりこの娘もか)))


長門

「何の話をしてんだか。まあいいや。とりあえず頑張れよシオンさん」


シオン

「いえ! そのことなんだけど、宜しければ、その、あなたのパーティに入れてくれませんか!?」


長門

「えぇ、寧ろ逆にいいの?」


シオン

「ッ! はい! お願いします!」


長門

「わかった。そう言うことだけどクリス、お前はどうなんだ?」


クリス

「え? 私ですか?」


長門

「そりゃ一緒に旅する仲間だからな」


クリス

「えぇ、全然構いませんよ!」


長門

「と言うことだ。よろしく頼むシオンさん」


シオン

「フフ、これから仲間になるんだから、シオンでいいわよ」


長門

「じゃ、改めてよろしく。シオン」スッ


シオン

「えぇ、よろしくね。勇者くん」グッ


クリス

(こりゃ、余裕がないかもですね)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ