第03話 森の守護者
どうも、やっと名前が公開された元無職の現役勇者、長門 賢治です。
今日も今日とで、
長門
「道に迷った……だと………?」
方向音痴が炸裂していた。
【俺が勇者になったなら】
03『森の守護者』
クリス
「勇者さん、ここ、どこなんですか?」
長門
「ごめん、普通に迷った」
そう。俺は極度の方向音痴。
前回入手したスキル 物理感知を利用していたのだが、俺の先導により森の中で遭難してしまった。
クリス
「仕方ありません。今夜はここで野宿しましょう」
長門
「ダメだ」
クリス
「え?」
長門
「ダメだ」
クリス
「なんでですか?」
長門
「だって、森と言えばあれだろう?」
クリス
「あれって?」
長門
「虫がうじゃうじゃいるんだろ?」
クリス
「虫? そりゃいますよ虫くらい。もしかして勇者さん、虫ダメですか?」
長門
「虫に集られるくらいなら魔王の前であらゆる辱めを受けた方がマシだ」ガクガク
クリス
「大丈夫ですよ! 勇者さん辱められる感じの雰囲気出てませんから!」
長門
「物の例えだから! とにかく森を出るぞ!」
ガサガサ、ポサッ
クリス
「………」
長門
「………ねぇ、クリス、何か、乗ってない………?」
クリス
「虫ですね。無害のやつです」
長門
「ホント? なんかうなじの辺り擦り付けられてるんだけど?」
クリス
「すみません多分暫くしたら毒針が出てきます」
ザシュッ、ドサッ
長門
「もう、森出たい、」メソメソ
クリス
「よ、よしよ〜し、勇者さん! 私結界魔法が使えるようになったのでその中で休んで下さい!」
長門
「嘘つけ! 最近ろくに魔物と戦ってすらいないだろ!?」
クリス
「す、すみません、」
長門
「だから、」スチャ
クリス
「え」
ズォォォォォォォォォォッ
長門
「………ふんッ!」
ドゴーンッ
クリス
「………」
長門
「自力で森を出る」
クリス
「あわわわわ! なんてことをしてんですか!? マズいですよ勇者さん!」
長門
「わかってるよ。流石に焼き払うのはやり過ぎだと理解してるから」
クリス
「そうじゃなくて! ここには───」
?
『誰だーッ!』
長門
「あ?」
クリス
「あわわわわ、」
タッタッタッタッ
長門
「ッ!」
ガキンッ
長門
「早い………ッ! ってか! 今のもしかして忍者か!」
シュッ、シュッシュッ
クリス
「や、やっぱり来た〜!」
長門
「誰かわかるのか?」
クリス
「森には基本、その森を守る為に管理している人達がいるんです。森忍と呼ばれています」
長門
「もりにん!? うがっ!」
スタッ
森忍
「あなた達〜」
長門
「? 女?」
ジャラッ
長門
「分銅鎖!? ぐっ!」
クリス
「うわっ!」
森忍
「………」ゴゴゴゴゴ
長門
「あ〜ぁ、万事休すか」
森忍
「つまり、あなたは勇者と言う立場にありながら森を抜けたいが為にあんなことをして道を作ったと?」
長門
「………はい。もう言い訳のしようも無いです。すんませんでした」
森忍
「わかったわ。どうやら反省はしているようだしこれ以上問い詰めるようなことはしない。ただし、自分のしでかしたことには責任を取ってもらうわよ」
長門
「と言うと?」
森忍
「我々森忍の役目は森を守ることだけではないの。壊した森を是が非でも直させることも役目の1つ」
長門
「あの、行っとくけどお姉さん? 俺植物魔法とか使えないし、色々と指導願うけど大丈夫?」
森忍
「大丈夫よ。やる気があるだけ十分だから」
長門
「あとお前にも迷惑かけるなクリス。ホントごめん」
クリス
「大丈夫ですよ。私はただ一緒にいただけなので見逃してもらえますから」
長門
「………うん、道理に適ってて良かった」
森忍
「では、改めて自己紹介をしておくわね。私はこの森の担当をさせてもらってる。シオンよ」
長門
「長門 賢治だ。よろしく頼む」
シオン
「よろしくね。じゃあ早速だけど焼き払った木々を回収して」
ザクッ
長門
「はぁ、早朝ってやっぱりこれくらい涼しくないとな」
シオン
「わかる? 早起きできると、毎度のことにも関わらず気持ちがいいのよね」
長門
「俺なんかこっち来る前はぐうたら生活を送ってたから、久々で気分がいい」ザクッ
シオン
「どうりでそんな肉付をしている訳ね。丁度良い機会なのでいっぱい動いて痩せる努力を行いなさい」
長門
「ここは至れり尽くせりだな」
シオン
「おかしな人ね。いやじゃないの?」
長門
「確かに面倒くさいしさっさと終わらせたい。でも自分のやったことに責任を取らせてくれるんだ。全く文句を言われないよりずっといいさ。それにシオンさんもちゃんとやり方教えてくれるし、面倒みてくれてるからな」
シオン
「やっぱりおかしな人よ。普通、森を汚した連中って絶対に反省してくれないし、放っておくとすぐにいなくなるのよ? でも、あなたはどちらも該当しない。あなたみたいな人にこんなことしてると、逆にこっちの気が引けるわ」
長門
「でもこれでいいんだよ。あんたはクリスが何もしてないって言ったらすぐに信じてくれた。そして責任を押し付けるようなこともしなかった。その辺に関しては結構感謝してるんだよ」
シオン
「………あなたといると変な気分になるわね。少し休んで来る」
長門
「え、大丈夫か? って言うか、よくわからんけど、ごめん」
シオン
「〜〜〜ッ!」バッ
長門
「ヤバい、多分あれ泣かした」
ザパァ、ザパァ
シオン
「ハァ、ハァ、」
クリス
「あれ? シオンさん?」
シオン
「ッ! ク、クリス!? どうかした!?」
クリス
「さっき起きたので顔を洗いに、どうかしましたか?」
シオン
「い、いえ! 何でも、何でもないわ!」
クリス
「ん? ハッ!(もしかして勇者さん、シオンさんと何かあったんじゃ、ってないかそんなこと)」
?
「シオン」
シオン
「ちょ、長老………!」
長老
「お前はまた下らんことをやらせていたのか?」
シオン
「下らんって、私達の使命は、森を守り栄えさせることのはずでは!? その為に、森を汚す者には森の素晴らしさを教え、更生させようと頑張って」
長老
「いいんじゃよ」
シオン
「ッ!」
長老
「理解できんやつに理解などさせても無駄じゃろう。主もいい加減に、我々の仕事を手伝え」
シオン
「ですが、」
長老
「シオン………!」
シオン
「………ッ!」
長老
「お主も連れを連れて森から出て行け。地図ならある」
クリス
「え、でも、」
シオン
「いいの、クリス。あれは私の独断でやらせていたことだから、本当なら付き合う必要すら無いし」
クリス
「そんな、」
長門
「で、言い負かされて戻る準備してきたと」
クリス
「すいません、」
シオン
「こちらこそ申し訳なかったわ。私なんかの我が儘に付き合ってもらって」
長門
「我が儘ねぇ、確かにそうだな」
クリス
「勇者さん!」
長門
「でもさぁ、我が儘にも綺麗な我が儘や汚い我が儘があるけど、シオンさんの我が儘は綺麗な我が儘だと思うよ」
シオン
「ッ! ………ありがとう………!」バッ
長門
「ふぅ」
クリス
「む〜!」
長門
「うしたクリス?」
クリス
「む〜!」ニギュ
長門
「あ〜おぅあんあんあお(あ〜もう何なんだよ)!?」
クリス
「何でもないです!」
長門
「ったく、とりあえずどうだった?」
クリス
「………情報通りでしたよ。これが証拠物件です」スッ
長門
「ご苦労さん。とりあえず一旦ギルドに帰るぞ」
クリス
「はい、」
実は3日ほど前、俺達が滞在した村のギルドである依頼を引き受けた。
それは、麻薬の密造の調査だった。
何人かの村人が麻薬中毒となって発見され、商人を捕まえた結果、この森から輸入してることがわかった。
そして俺とクリスはその証拠を抑える為に一芝居をうったのだ。
因みに俺が森で○クスカリバーをぶっ放したのは、素である。
なので、急遽考えた作戦で連中には俺の方に注目してもらい、クリスに薬の原料などを探らせていた。
ガチャ
ギルドマスター
「………」
長門
「どうだった?」
ギルドマスター
「結果から言おう。連中は黒だ」
長門
「………そっか」
クリス
「………シオンさん」
ギルドマスター
「調合は成功、被害者の持ってた薬と同じものとわかった。これはもう、連中を放っておく訳にはいかない」
クリス
「待って下さい! シオンさんは! シオンさんは、」
グッ
クリス
「ッ!」
長門
「………」
クリス
「………」
ギルドマスター
「………勇者長門 賢治、及び魔法使いクリス。2人には新たな依頼として麻薬の処分、森忍の討伐を願いたい。大変な依頼なのは承知している故、今回は特別報酬として、今回の依頼の30倍は用意しよう」
長門
「わかった。承る」
クリス
「勇者さん! 本気なんですか!?」
長門
「本気だ。これ以上被害が出ても気分悪いからな」
ギルドマスター
「ありがとう。我々も仲間を集めて合流する。どうか、犠牲になった仲間の仇を討ってやってくれ」スッ
長門
「あまり期待はされるな」スッ
ガシッ
クリス
「………勇者さんの、バカ、」
長老
「馬鹿者!」
ガシャン
長老
「調合の素材を盗まれたじゃと!? どうするつもりじゃ!?」
森忍
「申し訳ございません! きっと、今朝までいた連中の仕業かと!」
長老
「チッ! 無闇に負い払うよりは怪しまれんと思ったが、裏目に出たか」
森忍
「もしや、最近商人が来ないのは、奴らに」
長老
「我々は、森忍と言う職業がら薬の調合に昔から長けておった。しかし、暫くの財政難故に麻薬に手を出せばこの始末か!」
シオン
「………」
長老
「シオン! 今回は貴様にも責任があることぞ!」
シオン
「………理解しております。然らば、彼奴らは我々を討伐する為に次もやって参られましょう。故に、」
スチャ
シオン
「今回の件は、全て私めにお任せあれ。彼奴らの首も、彼奴らに依頼したと思われる村人全ての首も、取って見せましょう」