第一章 一話 異世界召喚!?
俺は神馬郁哉。高校三年生。成績は悪くない。運動もそこそこできる。そんな俺があんな事になるなんてこのときは思ってもいなかった………
それはある夜のコンビニ帰りの事だった。
「千円お預かりします。 お釣りが421円です。 ありがとうございました!」
「よし!カップ焼きそばにコンポタスナックにコーラにレジ前チキン!早く食いてぇー!」と、足を踏み出したときだった。
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「ん?」
世界が一変した。
「え?は?ここどこ?昼間?え?」
意味が分からない。
確かに今までいた場所はコンビニだったし時間帯も夜だった。しかし、今現在進行形で目の前で繰り広げられている光景は昼間であり、洋風の建物が並び人通りの多い通りである。さらに、付け加えると人間だけでなく二足歩行の動物がしゃべっているし……
「なんだあれ……」
「そんなにあれが珍しいか?」
「うわっ!びっくりした!今この世界の状況把握してたんだけど!?」
後ろから大きな声で話しかけられ驚きつつ振り替えるとそこには緑色の髪の毛の男性が立っていた。
身長172cmのイクヤに対し、その男性は180cmぐらいとだいぶ大柄だ。
「何言ってんのか分からんけどにーちゃん、地竜知らねぇのか?」
「じりゅう?じりゅうってあれか?馬車引いてるトカゲみたいなやつか?」
「とかげってのはいまいち分からんが引いてるのは竜やぞ?」
「竜!?」
イクヤの知ってる竜のイメージはもっとでかくて飛んでて蛇みたいな見た目だ。それに対し目の前の地竜とやらは大きなトカゲのような見た目だ。
「あれが竜……」
「まぁ人運ぶ役割なんたからあんなもんやろ。」
「役割なんかがあるのか?」
「にーちゃん、大丈夫か?ちょいと物知らなすぎやろ……まぁいいけどよ、地竜っても長距離用や戦闘用、荷物運び用やらいろいろあるぜ、地竜にも個性があるからな。」
「ふーん……」
「そんなことよりにーちゃんだいぶ良い所の出やろ?」
「いや、俺は特別裕福でもなけりゃ貧乏でもないぜ?ごくごく普通の家だけど……」
「嘘つくなって、そんな格好してたら金持ちだって主張してるようなもんだぜ?」
確かに辺りを見回しても黒髪もいないしジャージを着てる人の姿も無い。
「気を付けろよにーちゃん、この辺結構盗賊とか多いから狙われるかもしれねぇぜ?」
「げっ!まじかよ……」
「ま、頑張って生きるんだな!」
と男性は立ち去った。
「ともあれ、少し遅くなっちまったけどお決まりのセリフにいくとするか!」
……………
「これはもしかして異世界召……」「にーちゃん!」
「ってなんだよ、おい!今お決まりのセリフ言おうとしてたんですけど!?さっきもこのくだりあったよね?ってかどっかいったんじゃなかったの!?」
「いや、すまんすまん続けて続けて。」
「ったく……おほん……これはもしか……」「にーちゃん!」「入ってくんの早えーよ!ってかまず入ってくんな!」
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さっきの男性との茶番を終え、イクヤは路地に足を向けていた。
「さて、所持品確認だ。」
スナック菓子(コンポタ味)、カップ焼きそば(マヨネーズ入り)、コーラ、レジ前に売ってるチキン(うま塩味)、コンビニの袋、愛用のジャージ、普通のズボン、二年間履いてるシューズ………
「以上!?えっ?携帯は?持ってたじゃん!何で無いの?ハイテクノロジーを売りさばいて無双するパターンじゃないの?………はぁ………俺を召喚した超絶美少女もいないし!放置プレイかよーーー!」
途方に暮れていたイクヤの元に足音が近付く。
「ん?」
イクヤが顔を上げるとそこには三人組の男達が立っていた。
「あの……何かご用でしょうか?」
と、イクヤが不安げに聞くと「金だしな」の一言が返ってきた。
強制イベント発生だ。
一人目は切れ味の良さそうな銀ナイフ、二人目は大きめのこん棒、そして最後の三人目は、
「素手ってなんなの?武器買う金無かったの?」
「うるせぇな!俺は素手が一番しっくりくるんだよ!」
軽口を交わしつつ潔く財布を差し出す。
「素直でいいじゃねえか。」
「痛い目見んのが怖いんだろ。」
「弱者はこれがお似合いだ。」
皮肉をかさねる盗賊達。
「にしても変わった金貨入れだな。」
金貨。ということは大体予想はついた。この世界だとお金が使えないということに。
「なんだこれ?金貨なんか入ってないじゃないか!」
やはり予想は当たった。
「だって俺、無一文だもん。」
と、微笑を浮かべてみせた。
「はぁ?ふざけんじゃねぇ!」
「やっぱり痛い目見たいようだな。」
「三対一だ、勝てると思うんじゃねぇぞ、ゴラ!」
息の合ってる三人組を鼻で笑いイクヤはこう宣言する。
「俺には秘められし力があるんだよ……そう!魔法の力だ!」
言い捨てそれっぽい技名を叫んでみる。
「ファイヤーバースト!!」
……………………
「俺魔法も使えないの!?まじで異世界にそのまま放り込まれただけ!?」
「何をするのかと思えば……」
「ちょっとほんのちょっとだけ……」
「ビビっちまったじゃねぇか……」
近付いてくる三人にイクヤは、今頃自分のピンチに気付く。やるしか……ねぇのか……
覚悟を決め、イクヤはあるものを取り出す。
「なんだそれ……?」
イクヤはそれを振りだした。
「おい、なにしてんだよ!」
イクヤはそれを開ける。
「くらえー!コーラスプラッシュ!」
プシュ───
降ったコーラが三人組に向かって吹き出す
「あー!なんだ!」
「前が見えねぇ!」
「目にしみるぅ!」
すかさず物理攻撃に移行する。
「おら!」こん棒男に右ストレートを放ち、
「くらえ!」ナイフ男を左足で蹴り倒し、
最後の素手男に「ぐはっ!」跳び蹴りしようとする前に殴られた。
「素手のお前だけにはやられたくなかったよ!」
「なんでだよ!別にいいだろ!」
やり返そうと思ったが今の一撃があまりにも強くそのまま悶えてしまう。
「生意気な真似しやがって!」
悶えるイクヤはそのまま三人組に集中攻撃を受ける。
やり返せないまま時が流れ、次第に血が流れ出す。
その時だった。
────────
「そこまでよ!」
彼女が現れたのは………