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第六話 限界


 なんだこの槍は。

 もしかしてレアドロップ?

 金色の骨の方は素材だろう。

 


 「よっしー。なんか素材と一緒に槍がドロップしたんだけど」



 そう言ってよっしーに金色(こんじき)の槍を見せる。


 綺麗だ。

 見ているだけで引き込まれそうになる。

 そんな不思議な魅力をこの槍は持っていた。



 「まじ? もしかしてレアドロップなんじゃね?」



 どうやらよっしーもレアドロップだと思ったようだ。

 もしレアドロップだとしたら、今まで通りとてつもない威力を持っているだろう。


 この槍を俺とよっしーどっちが使うかだ。


 今回の敵は二人の活躍が同じくらいだったので、俺が勝手に貰うというわけにはいかない。



 「あー、でも俺刀買っちゃったし。タカシその剣使い始めてからだいぶ経つだろ? だったら槍使えよ」



 よっしーは手をぶらぶらさせてそう言う。


 よっしーやさC!

 最高!



 「じゃあお言葉に甘えてありがたく使わせてもらうわ。そのかわりとしてこの素材を売った金はよっしーが貰っちゃっていいよ」



 俺はよっしーに金色の骨を手渡す。

 見るからに高そうな骨だ。


 これで両者winwinの関係だろう。



 「少し休んだら五層向かうか」



 あんな大物と戦ったとはいえ、まだ午前中だ。

 ここで切り上げるには早すぎるだろう。



 「りょー。十分後出発で〜」



 よっしーは納得し、寝転んだ。

 周りにモンスターがいるのに呑気な奴だ。


 今のうちに俺は槍の使い心地を試しておこう。


 剣を背中に背負い、槍を構える。

 左手を前、右手を後ろにして持ち、軽く槍を引く。



 「ふっ!」



 腹筋に力を入れ、軽く息を吐きながら槍を突き出す。

 

 ゴオオオォォォ……


 槍の先からなんか出たんだけど……

 突風というか竜巻というか……

 

 その突風は速度を落とさずそのまま直進していき、やがて見えなくなる。


 これが、この槍に付与されているスキルだろうか。

 だとしたら遠距離攻撃もできることになる。


 すげー……


 レアドロップの凄まじさを再認識させられる。


 その後も二、三回槍を突いたが、その全てから突風のようなものが出た。

 どうやら確率は百%のようだ。



 「そろそろ五層いくか」



 よっしーが起き上がって伸びをする。

 


 「りょーかい」



 背中には剣があるので、槍を手に持ったまま進むしかない。

 幸いなことに、槍の重さは一キロほどしかないので、進むのには支障は出ない。


 俺達は四層に来た時と同じように横に並んで、五層へ続く階段を探す。


 相変わらずスケルトンはいるが、体力を消耗させたくないので無視して進む。


 十五分ほど探してやっと見つけた。

 四層へ降りてきた階段とちょうど真反対の壁にあった。


 気を引き締めて階段を降りていく。

 以前一回だけ五層に来たことはあるが、チラッと覗いて帰ったので、どんなモンスターがいるかはわからない。


 階段を一歩ずつ踏み締めて降りていく。

 二十段ほど降りると、そこには五層が広がっていた。


 四層までと変わらない景色。

 しかし、油断はせずにゆっくりと進んでいく。


 俺は右を見張っているが、モンスターらしき影は見えない。

 どうやら左側にもモンスターはいないみたいだ。


 ここはモンスターがいないのか?

 

 そんな疑問を抱えつつ、一歩一歩進んでいく。

 

 五層へ降りてきて十分が経過した。

 相変わらずモンスターはいない。


 この槍を試してみたいんだけどなぁ……


 何事もないままさらに五分が経過する。

 が、何か虫の羽音のようなものが聞こえてきた。



 「よっしー。聞こえるか?」



 「ああ。嫌な音だ」



 どうやら幻聴ではなかったらしい。

 進むにつれて、羽音はどんどん大きくなっていく。


 間違いない。

 この先にモンスターがいる。


 目の前には小さな丘。

 この丘の先に、羽音の主がいるだろう。


 よっしーもそれを理解したのか、いつも通り二手に分かれる。

 俺は丘を右側から越えていく。


 いた。

 全長一メートルほどのハチだ。


 一匹だけだが、かなり気持ちが悪い。

 

 ハチの奥によっしーが見える。

 目線で頷き合い、一切にハチの前に飛び出た。


 若干早く飛び出たよっしーに、ハチの注意が向く。

 

 次の瞬間、ハチがよっしーへ凄まじい速度で突撃していった。


 軽く時速百キロは超えているだろう。


 顔面に当たる直前、『瞬動』と『見切り』を駆使したよっしーは左へ飛んで避ける。

 

 ハチは攻撃が空振ると、Uターンしてもう一度よっしーの方へ突撃する。


 速い。『瞬動』と『見切り』を持っているよっしーですら、避けるのが限界のようだ。


 だが、このままだとどんどん体力が減ってジリ貧だろう。

 俺は槍を構えて、ハチへ突っ込んでいく。


 ハチはまだ気づかない。

 チャンスは気づいていない今しかない。


 槍の射程圏内まで迫ると、一気に槍を突き出した。

 

 槍が当たる直前ハチがこちらに気づき、すぐさま後ろに下がって槍を回避する。


 だが甘い。

 この武器は二段階攻撃なんだよ!


 刹那、槍先から空気の渦が発射される。

 反応しきれなかったハチは軽々とその渦に呑まれ、


 粉々になった。


 パラパラとハチの残骸が降ってくる。

 その後、光の粒となって消えた。


 

 「その槍のおかげでなんとかなったな」



 ハチの攻撃を避け続けていたよっしーは、軽く息を切らしながらそう言った。


 確かに、普通の槍だったら倒せなかった。

 レアドロップの槍のおかげだ。


 

 「だが、そろそろ俺たちの身体能力の限界が近づいてきたな」



 「そうだな。俺も避け続けるのが限界だったし、攻撃を当てるほど余裕がなかった。新しいスキルでも覚えられればいいんだがな」



 五層のハチでいっぱいいっぱいの今の俺達は、六層では通用しないだろう。


 そもそもの身体能力を上げるには、スキルを獲得しなければならない。


 既に持っているスキルでも重ね掛けで効力を上げることは可能だが、いくつも同じスキルを買う必要がある。


 スキルオーブって高いんだよなぁ……



 そこで俺は、三層のキラーラビットが『瞬速』のスキルオーブをドロップしたことを思い出した。

 

 

 

 

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