第四話 探索
思わず二度見をしてしまう。
スキルオーブってモンスターからドロップするもんなの?
普通のスキルオーブはダンジョン内の宝箱に入っているらしいが、モンスターからドロップするなんて話聞いたことがない。
もしかしたらこれもレアドロップだろうか?
もしそうだとしたら、このスキルオーブも凄まじいスキルを持っているに違いない!
急いでよっしーの方へ駆け寄る。
よっしーはちょうどもう一匹のキラーラビットを仕留めたところだった。
「よっしー。なんかキラーラビットからスキルオーブっぽいのがドロップしたんだけど」
「マジ? とりま割ってみればいいんじゃね?」
確かに。割ってみてスキルが獲得できれば間違いなくスキルオーブだ。
どうせ『豪運』でキラーラビットをもう何匹か倒せばドロップするだろうし、今割っても問題ないだろう。
土の地面にスキルオーブを置く。
剣を真上に振りかぶって、スキルオーブめがけて振り下ろす。
パリンッ……
いつものスキルオーブを割った感覚と同じだ。
これでスキルを獲得できればいいが……
スキル『瞬速』を獲得しました。
頭の中にスキル獲得の声が流れてくる。
やはりあれはスキルオーブだったっぽい。
さて。『瞬速』とな? 一体どんな効果だろうか。
『瞬速』 相手に自分を認識されている時、通常の三倍の速度で移動できる。
おお! よっしーが持っている『瞬動』の上位互換じゃないか!
これで俺もよっしーの動きに近づけるわけだ。
見守っていたよっしーにスキルオーブだったことと『瞬速』の効果を伝える。
「俺の五万円……」
よっしーは目に見えて落ち込んでいた。
それもそうだろう。
『瞬速』はよっしーが五万円で買った『瞬動』の完全上位互換なのだから。
少し申し訳ない気持ちになったが、まあこれも運だ。
「まあ二人とも強くなったってことで四層行こうぜ」
よっしーも割り切ったらしい。
俺は頷いて、四層へ続く階段へと歩いていく。
俺たちは昨日と比べ物にならないほど強くなっているので、四層なら太刀打ちできるだろう。
五分ほど歩くと、階段の入り口が見えてきた。
なんの躊躇いもなくよっしーは四層へ降りていき、俺も後に続く。
着いた。四層だ。
四層にはスケルトンというモンスターがいる。
スケルトンは群れをなして行動し、槍で攻撃してくる。
今までのモンスターに比べて、非常に厄介になっている。
過去に一度戦ったことがあるが、二匹の群れだったので何とか対処できたが、それでもギリギリだった。
槍を使った連携攻撃が非常に厄介なのだ。
しかし今は新たな武具とスキルを入手しているので、対処の仕方はいくらでもある。
四層をよっしーと横に並んで進んでいく。
俺が右警戒、よっしーが左警戒だ。
「いたぞ!」
よっしーが俺の肩を叩く。
どうやら見つけたらしい。
振り向くと、百メートルほど先に三体。
人数的に三対二なので不利だが、そこは身体能力でカバーするしかない。
俺たちは足音を立てないように忍び寄る。
スケルトンまでの距離、およそ十メートル。
ここまできたら、先程のようにスライムナイフで倒すのも良いが、それだと剣の腕が鈍ってしまう。
昨日のオーク戦のように俺たちは二手に分かれ、スケルトンを囲う。
スケルトンが俺に気づいた!
三体が一気にこちらへと迫ってくる。
その瞬間、ギュンと景色が流れた。
足が異様に速く動く。
これが『瞬速』の効果か。
これならばスケルトンに追いつかれる心配はない。
俺はスケルトンと向き合い、右へ左へと動いた。
スケルトンは俺を捕捉できずにキョロキョロとしている。
そこによっしーが後ろから切り込む。
一閃。スケルトン二体の上半身が傾き、そして倒れた。
どうやらよっしーが二体同時に倒したらしい。
なんてやつだ!
俺も負けていられない。
急に仲間が二体倒されたスケルトンは、よっしーを脅威と判断したらしく、よっしーの方へ振り返る。
その隙を逃さない。
俺は腰からゴブリンスイングを取り出し、スケルトンの頭めがけてフルスイングした。
カコーン
いい音が鳴り、骸骨頭が吹っ飛んでいく。
骸骨なだけゴブリンよりはグロくないな。うん。
それにしてもやはり凄まじい威力だ。
最後の一体も光の粒となって消えていく。
残念ながらレアドロップはなかったようだ。
「いい連携だったな。この調子で行くぞ」
昨日の二の舞になりたくないのか、連携がうまくいってもよっしーは油断をしていない。
俺も昨日のような命の危険はこりごりだ。
四層は曖昧にしか地形を把握していないので、適当に歩きながら五層への階段を探す。
途中にスケルトンの群れがいくつかあったが、どれもスケルトンが五体以上いたのでスルーした。
適当に歩き回ること十分。
一体だけのスケルトンがいた。
珍しいな。
スケルトンは基本群れているので、一体だけのスケルトンなんて見たことがない。
俺とよっしーは目線で頷き合い、二手に分かれてスケルトンへと向かっていく。
おいまじか……
近づいてみて気づいた。
他のスケルトンより二回り大きい体格。
金色に輝く骨。
体が底冷えするようなオーラ。
間違いない。
レアモンスターだ。