第一話 豪運
初投稿なので、アドバイスを頂けると幸いです。
六限のチャイムが鳴った。
今日のつまらない授業はここまでだ。
「タカシ〜。今日も行くか! ダンジョン!」
声をかけてくるのは有田敬人。
通称「よっしー」
俺、青木隆とよっしーは高校に入ってからの一番の友人だ。
最近の二人の放課後の習慣、それはダンジョンに行くこと。
ダンジョンは各県一つずつあり、ここの埼玉県にも所沢駅の前にある。
「いくか! 明日土曜だし!」
俺は快く承諾する。
ダンジョンはフロア制になっており、何層あるかは不明。
ただ、百層まではあると言われている。
さらに、ダンジョン内にはモンスターと呼ばれる生物が徘徊しており、人間を襲ってくる。
日本では、そんなダンジョンを攻略する人を『冒険者』と呼ぶ。
冒険者になるにはいくつかの試験があるが、よっしーと俺は三ヶ月前に合格した。
俺らは一回ダンジョンに行くと、すぐダンジョンの虜になった。
普段、つまらない授業をやっているせいで、スリルが欲しくなるのだ。
「じゃあいつものとこ三時で」
俺とよっしーは所沢駅に三時集合にして、一旦解散した。
家に帰り、リュックを机に置く。
時刻は二時半。
所沢駅まで三十分かかるので、財布を持って走って家を出た。
所沢駅に行くと、すでによっしーはいた。
結構待たせたかもしれない。
よっしーは俺に気づくと、「おせぇよ」と言った。
「悪りぃ」と返すと、早速ダンジョンに行くことになった。
「今日新しいスキル買わね?」
よっしーは、俺に聞いてくる。
「良スキルあったらな」
実際良いスキルは売り切れている。
少しでも残っていると良いが……
ダンジョン管理組合所沢支部に向かう途中、何人もの冒険者にあった。
全員二十歳を超えていそうな屈強な大人たちばかりである。
見たところ学生はいない。
それもそうだろう。学生のうちから命を危険に晒すなんて親が許さない。
まあ俺とよっしーの親は何故か許したんだけどね。
よっしーと喋りながら歩いて十分程、ダンジョン管理組合所沢支部についた。
「スキル見てくか」
そう言ってよっしーは『スキル販売所』と書いてあるところに歩いていく。
当然俺も買いたいのでついていく。
スキルはダンジョンから発掘され、ここで売られる。
俺とよっしーは棚に並べられたスキルオーブを順々に見ていく。
攻撃力UP、速さUP、回転切り、暗視、集中……
見たことあるスキルばっかだった。
落胆していると、あるスキルオーブが視界の端に映る。
「……豪運?」
説明文を見ると、どうやら運気が上がるらしい。
価格、一万五千円
スキルにしては安い方だ。
「いいやつねぇな。俺今日はやめとくわ」
いつも通りの品揃えによっしーは買わないことを決意したらしい。
「俺この『豪運』ってやつ買ってみるわ。値段も安いし」
「まじ? 運あがるだけだけどいいの?」
不思議そうによっしーが見てくるが、何故かこのスキルに心惹かれたのでうなずく。
俺は『豪運』スキルオーブを手に、会計に持っていく。
「お会計、一万五千円になります」
財布から一万五千円を取り出して店員に渡す。
「ありがとうございました〜」
店員の声を後方に、俺とよっしーは店から出る。
スキルオーブをポケットにしまいつつ、ダンジョン入り口に向かう。
「そんなスキル買っちゃって金の無駄なんじゃね」
よっしーが言ってくるが、買ってしまったものは仕方がない。
「まあ平気だろ」
こういうのは深く考えたら負けだ。
成り行きでやってればきっとうまくいくだろ。
そう話してるうちにダンジョン入り口に到着する。
入り口に立っている店員に名前を告げ、預けていた武器をもらう。
俺達の武器は二人とも60cm程の剣だ。
自動ドアを潜り、俺たちはダンジョンへと足を踏み入れた。
「じゃあスキルオーブ割るわ」
よっしーに立ち止まってもらい、スキルオーブを土の地面に置く。
思いっきり剣を振りかぶり、スキルオーブに向かって振り下ろす。
パリンッ、と音を出してスキルオーブが割れた。
スキル『豪運』を獲得しました
謎の声が聞こえるが、さすがに三回目なので慣れた。
俺は残り二つスキルを持っている。『速さUP』と『攻撃力UP』だ。効果は名前の通り。
この二つはよっしーも持っており、よっしーはもう二つスキルを持っている。
『瞬動』と『見切り』だ。
『瞬動』 相手が攻撃してくる時、三倍の速度で動ける
『見切り』 相手が攻撃してくる時、相手の動きが遅く見える
二つとも五万円を超える高級スキルだ。
在庫が一つだったのと、高すぎるということで俺はこれらのスキルは手に入れてない。
「とりあえずスキルも獲得したし、一層いくか」
そう言ってよっしーは俺の前を歩いていく。
攻撃されても速く動けるので、いつもよっしーを先頭に進んでいく。
下へ続く階段の前に来た。この階段を降りればモンスターの居る一層だ。
俺達は迷わず降りていく。
何せ最高五層まで行ったことがあるので、今更一層で苦戦したりはしないのだ。
一層に到着する。
一層から十層は天井のある平原のようで、一辺が一キロメートルほどの正方形だ。
一層のモンスターは、最弱のスライムしかいない。
「スライム倒して肩慣らしといくか」
そう言ってよっしーが視界に映ったスライムに向かっていく。
いつもここでスライムを倒して多少運動してから下の階層に行くのである。
左五十メートル程先にスライムを発見した。
俺もそのスライムに向かって走っていく。
通り過ぎる刹那、スライムを一閃した。
カラン……
何かの音がした。
スライムのいたところを見ると、何やらナイフのようなものが落ちていた。
なんだろう。
スライムを倒して何かをドロップするなんて初めてのことだ。
とりあえず拾っといて、よっしーの方へ合流する。
「よっしー、なんかスライム倒したらナイフみたいなのがドロップしたんだけど」
「なんだそれ。とりあえず地上戻ったら鑑定してもらえ」
どうやらよっしーも知らないらしい。
まあいいか。
あまり深く考えずいこう。
運動し終わった俺たちは、二層へと続く階段へ向かう。
何ごともなく階段へと到着した俺たちは、二層への階段を降りていく。
二層は、先程のスライムに加え、ゴブリンというモンスターがいる。
ゴブリンは体調一メートルほど、子供のような体つきをしており、棍棒で殴ってくる。
弱そうだと侮るなかれ。
その威力はまともにぶつかると骨折しかねないほどだ。
ここからは二人の連携が大事になっていく。
まあ連携といっても一体を挟み撃ちにするだけだが。
早速一体目のゴブリン発見。
俺とよっしーは二手に分かれてゴブリンを囲う。
ゴブリンがよっしーに気づいた!
すかさず俺は、後ろからゴブリンの胴体を貫く。
「グギャア!」
叫び声を上げてゴブリンが倒れ、光の粒となって消えていく。
俺とよっしーは笑いあい、ハイタッチした。
「余裕だな!」
「まあ俺たちにかかればこんなもんよ!」
二人してご機嫌である。
このままの調子で進もうとすると、
カラン……
またもや後ろから音がした。
見てみると、棍棒のようなものが落ちている。
「なんだこれ?」とよっしーに聞こうとしたが、よっしーはこの調子で三層へ行きたいのか、さっさと歩いて行ってしまった。
棍棒を拾って急いでついていく。
まあ見た目雑魚だし、どうでもいいか。
よっしーに伝えるほど重要でもないと判断する
よっしーに追いつき、そのまま三層へと向かう。
なぜか今日はゴブリンが少なく、モンスターと会うことなく三層への階段に到着した。
三層へと降りようとした瞬間、階段下から声が聞こえてくる。
「フロアボスが復活したぞ! 全員逃げろ!」
何者かが叫んだ。
フロアボス。それはもともと一層ごとにいるモンスターで、階段前を住処としている。
所沢のダンジョンは三十層まで攻略が進んでいるので、それまでのフロアボスはいないはずだ。
だが稀に、フロアボスが復活することがある。
いつ復活するのかはわかっていない。
フロアボスは他のモンスターとは比べ物にならないほどの強大な力を持っているので、復活した時は逃げるのが得策だ。
熟練の冒険者がいつも倒してくれる。
俺はいつも通り地上へと戻ろうと、一歩を踏み出す。
「タカシ。一回フロアボスがどんなものか見てみたくね?」
出たよ。たまにあるよっしーのスリル大好き症状。
ただ今回は少し俺も見に行ってみたかったので、
「一瞬見て戻ってくるか」
と言って承諾してしまった。
よっしーは笑みを浮かべると、三層への階段を飛び降りていった。
急いで俺も後を追う。
三層に着地すると、十人ほどの冒険者が一斉に階段へ向かってくるところだった。
「早く見て早く戻るぞ」
よっしーはそう言って、冒険者が逃げてきた方向へと走っていく。
俺は若干の不安を抱えつつも、ついていく。
三十秒ほど走ると、見えた。
三メートルほどの身長。
何もかも破壊しそうな筋肉が搭載された腕。
ゴブリンを巨大化したような見た目。
それは、オークだった。
つ……つえぇ……
あんな化け物には勝てる気がしない。
あれは人間が戦っていい相手じゃないね、うん。
どうやらよっしーもそう思うようで、急いで帰ろうとする。
よっしーが戻ろうと一歩踏み出す。
パキッ
足で小枝を折ってしまったらしい。
焦り故のミスだな。
しかし、冷静に分析している暇などない。
今の音でオークがこちらに気づいたのだ。
「よっしー! 走るぞ!」
そう叫んで俺は、全速力で二層への階段へと走り出す。
よっしーも慌てて俺についてくる。
だが、身体能力が違いすぎた。
オークは俺達を軽々と追い越し、二層の階段前で立ち止まった。
なんとしてでも逃したくないらしい。
「クソッ! 戦うぞ!」
こうなったら戦うしかない。
よっしーもそれを理解したのか、剣を構える。
「いつも通りの戦い方でいくぞ! タカシ!」
それしか方法ないか。理解した。
俺とよっしーは二手に分かれ、オークを囲う。
俺では攻撃を避けきれなさそうだから、『見切り』と『瞬動』を持っているよっしーを標的にしてほしい。
一見仲間を売る最低なやつだが、これはれっきとした戦略である。
だが、思いは伝わらなかった。
オークはゆっくりとこちらを振り向くと、大きな棍棒を振り上げながら走ってきた。
なんとか逃げなければ。
後ろに走って逃げようとするが、石に躓いて転んでしまった。
刹那、オークの棍棒が俺の頭の上を横切った。
危ねぇ。転んでなかったら間違いなく死んでた。
運が良かった。
オークの棍棒が空を切り、オークに隙が生まれる。
そんな好機をよっしーが逃すはずもなく、オークの背中に勢い良く剣を突き刺した。
勝った!
しかし、その思いも虚しく、よっしーの剣が音を立てて折れる。
オークの硬すぎる筋肉に剣が負けたのだ。
まさしく絶体絶命。
おそらく俺の剣も折れるだろう。
諦めかけた瞬間、スライムがドロップしたナイフを思い出す。
もうここまできたらダメ元だ。
懐からナイフを取り出し、オークの目の間を狙って投げる。
これで殺せなければ終わりだ。
ナイフはオークの頭へと一直線に飛んでいき、
貫通した。
頭を貫かれたオークは情けなく倒れ、光の粒となって消えていく。
なんなんだあのナイフの貫通力。
転んだままの体制から投げたのにもかかわらず、難なくオークの眉間を貫通しやがった。
これにはよっしーも驚きを隠せないらしい。
とりあえず一安心だ。
「なんとかなったな」
よっしーに話しかける。
「今日ばかりは死ぬかと思ったぜ。サンキューな」
よっしーは枝を折ったことを悪く思っているらしく、バツの悪い顔をしていた。
「とりあえず地上戻ろうぜ」
フロアボスを倒したので危険は少ないはずだが、先程死にかけたので、これ以上探索する気力は無かった。
よっしーはうなずき、二層への階段を登っていく。
俺は先ほど投げたナイフを回収し、後に続こうとしたが、オークの倒れた所付近に何かが落ちているのに気がついた。
近づいて拾ってみると、それは小手のようだった。
これも懐に入れ、よっしーの後を追って階段を登る。
地上で鑑定してもらおう。
「ここ直したほうがいいよ」等のアドバイスをお待ちしております。