第86話 朝
すみません、更新が遅れました。
窓から入る日の光で目が覚める。
隣を見ると、エザルはまだ寝ているようだ。
エザルを起こさないようにしながら、ゆっくりとベッドから降りる。
顔を洗い、服を着替え、ラウンジに向かう。
ラウンジに行くと、まだ早い時間だからか、誰もいなかった。
ソファーに座り、日課にしている“知覚者”で何千倍にもなった思考力で思案にふけながらテスタたちを待つ。
思考にふけるといっても妄想しているわけではない。
人外の思考力で、前世においてのあらゆることを自分の手で再現すべく考えを巡らせているのだ。
だからといってそれは難しいものがある。
例えば、紙の作り方などは、先人たちが何百年にもわたっ
て考え、その技術を何世代にもわたって上達させたものだからだ。決してそれらは1人の手柄ではない。
つまり俺1人がいくら考えようと難しいものがあるということだ。
決して無理とは言わないが、まあ厳しいだろう。
厳しいということは、長い時間が必要であるということ。
そのためにこうして日課としていろいろなことに考えを巡らせているというわけだ。
「――ふぁ〜。ねっむ」
そうしていると、誰かが独り言をつぶやきながらラウンジにやってくる。
俺はすでに誰だかは分かっている。
それが分かると、俺は自然とため息がもれる。
「あ、誰かいるし。まじ最悪」
最悪なのはこっちだ、といいたくなる台詞をはきながらラウンジに入ってきたのは、腰のあたりまで伸びた金髪に、制服をギャル風に着こなして、こちらを不機嫌そうに見る大澤 織だった。
今日から勇者たちの出席がはじまるため、この寮にいるのだろう。
「最悪とは随分な物言いだな」
おっと、俺としたことが女子にタメ口を聞くとは。
まぁいいか。どうせ同年代だし。
「……なにあんた。話かけんなし」
「あ、ごめんな。あんたと同じく独り言を言っただけだ。勘違いさせたようで悪かった」
「は、喧嘩売ってんのあんた」
俺が皮肉をきかせてやると、頭にきたのかこちらにツカツカと詰め寄ってくる。
「おいおいそりゃないぜ。喧嘩なんか売るわけないじゃないですか――」
「ふんっ、ただのヘタレじゃん」
「だって猿に喧嘩売る人がどこにいるって話だもんな」
「――っ! 死ね!」
俺が分かりやすい挑発をすると、顔を真っ赤にして物騒な言葉を吐く。
「青の空より天へと至る! 天は空から地へと至る! 我より至る力の根源よ! 偉大なる業火をもたらさんッ! ハイパーフレイム!」
あらあら、上級魔法を放ってきたよ。
大澤が放った魔法だが、俺の“魔法達人”のよって発動することなく霧散する。
「え? なんで!?」
「ご苦労さん。室内でその魔法はやめとけよ」
「チッ! 青の水はこの世の必然! 命の母たる水が道理! 我より至る力の根源よ! 偉大なる激流をもたらさんッ! ハイパーウォーター!」
次は上級水魔法を放とうとするが、それもまたしても俺に阻まれる。
だから室内でやめろって。学習しねぇなぁ。
「ちょっ、なんでよ!」
「はは、なんでだろうな」
「ふざけんなし!」
俺に魔法が通じないと分かると、殴りかかろうとしてくる。
女とはいえ勇者だ。素の身体能力でも普通の人間よりも圧倒的に強い。
だが相手が悪かったな。
俺は大澤の拳をソファーから立つこともなく避けながらボーと考える。
「なんで当たんないのよ!」
「はは、なんでだろうな」
そして避けきれない蹴りが俺の腹に迫り、転移魔法で大澤の背後に転移した。
「消えた……。――っ! 後ろ!」
「元気がいいねぇ。なにか良いことでもあったのかい?」
「うざっ!」
某アニメの名台詞を言ってみたのだが、例のごとく普通にスルーされる。
そして、再び俺への攻撃が開始されたが、俺は避けるのも面倒なので、結界魔法を張る。
結界を攻撃する音だけがラウンジに響く。
ついに俺に一切攻撃が通じないことが分かると攻撃をやめ、肩で息しながらこちらをにらんでくる。
「なんなのよあんた! あーしが勇者なんだけど!」
「うん、知ってる。だから?」
「邪神を倒すのあーしらだって知ってるわけ!」
「あ、大丈夫。頼んでないから」
「殺す」
さっきまでの荒々しい態度から一変、本気の殺意をその目に滲ませて、俺の方に近づいてくる。
おやおや、ガチ切れさせちゃったようですね。
人はガチ切れすると静かに怒るもんだしな。
といっても俺に一撃も入れられないのは変わらないんだがな。
さて、どうやってこの女を取り押さえるかな。
「朝っぱらから何をしてるんだ?」
と思ったら、誰かがラウンジに入ってくる。
大澤はその声を聞くとピタッと動きを止める。
「……あ、誠太郎君」
声の主は、朝にもかかわらずイケメン顔を崩さない青葉誠太郎だった。
来週の月曜日に更新予定です。
と言っても遅れっぱなしのクソ野郎の言うことなんて信用なりませんか。ですよね、そうですよね……。
この自虐に走り始めた私のモチベはブックマークと評価によって上がっていきます。
――ウザイですねこれw




