第82話 教え
そしてやってきた王都郊外。
王都からは結構遠いので、少しくらいなら暴れても問題ない。
俺とルイヤスはいつもここで修行している。
「ここでやるんです?」
「おう」
レジュは何度か俺に付いてきているため俺らがいつもここで修行していることは知っているが、ジュリはここに来るのが初めてだ。
それじゃあとりあえずルイヤスを異空間から出すか。
「ルイヤス出すから驚くなよ」
「え?」
一応驚かないように言っておく。
レジュは慣れてるが、ジュリは初めてなので俺の言葉に混乱しているようだ。
混乱しているところを見ると、俺の言葉がいまいち理解できてないようだが、気にせず空間魔法を使う。
「――相変わらずいやな空間じゃ。外の空気がおいしいのう」
「ふぁっ!!」
俺がルイヤスを異空間から出すと、ジュリが驚きの声を上げる。
「さっきぶりですね! ルイヤスさん」
「そうじゃな、小娘」
「だから小娘はやめてくだいさいよ!」
ルイヤスとレジュが挨拶を交わす。
何回も会ってるため、なかなかにルイヤスとレジュは仲が良い。
「いきなり出てきてびっくりしたじゃないですか。驚かせないでください」
すぐに混乱から回復したジュリが俺に詰め寄ってくる。
「いや、だから言っただろ。ルイヤス出すって」
「そ、そうですけど……」
ジュリはばつが悪そうに頬をかくと、ルイヤスの方を振り向く。
「こんにちは、ルイヤス様」
「また会ったのう、ケン族の小娘」
ジュリがルイヤスの会うのは初めてではない。
レジュほど仲が良いわけではないが、会えば話す程度の仲ではある。
ちなみにルイヤスがレジュのことを『ケン族の小娘』と呼んでいるのは、ルイヤスがケン族と親交があったからからだそうだ。
といっても数百年も前の話なのだが。
「それで小僧。今日は何をするんじゃ? 小娘をふたりも連れて」
「ふたりが強くなりたいって言うもんでな。修行をつけてやろうかと」
「小僧、うぬはまだわしに指導を乞う立場のくせに教えるというのか?」
「いや、教えるのは俺じゃない。あんただ」
俺が教えてもいいんだが、ルイヤスが教えた方がいいだろう。
仙法以外の基本の教え方もルイヤスは上手いからだ。
「わしか?」
「ああ。頼めるか?」
「……弟子の頼みじゃ。断る道理はない」
「おう、ありがとな」
ルイヤスは基本的に優しい。
なんだかその優しさにつけ込んでるみたいであまりいい気はしないが。
「だがその前にだ」
ジュリとレジュの方を振り向く。
「スキルをやろう」
「うん」「はいっ」
俺がそう言ってもふたりは驚くことはない。
どちらもスキルをあげた経験があるからだ。
「今回あげるのは“戦闘王”と“魔法達人”だ」
「それってすごいの?」
名前を聞いてもいまいち分からないのかレジュが訊いてくる。
「スキルを得れば分かる。続けて良いか?」
「うん」
「あとのスキルはレジュは8つ、ジュリは3つだけ得ることが出来る」
「その違いは何ですか?」
「レジュは“番”でジュリは“支配者”だからだ。“番”はスキルを10個与えられるが、“支配者”は5つまでだからだ」
もっと厳密に言えば、“支配者”は人数制限が存在する。
5つ与えられるのは5人。
4つ与えられるのは50人。
3つは500人。
2つは5000人。
1つは50000人と段階で分かれている。
まあ軽く軍隊を作れるのだ。
だからこそ“知覚者”というスキル名なのだが。
「“番”ですか……」
ジュリがじーと俺を半目で睨む。
別にいいだろう、と思うのだがな。
「とりあえず残りを選んでみろ。脳内に投影するから」
俺はジュリとレジュの脳内に得ることが出来るスキルを投影した。
今は勇者が新しく得たスキルもあるから豊富である。
「えっと、これとこれと……」
「これ? いやいやこっちのほうが……」
ふたりとも数の制限がある分慎重に選ぶようだ。
といってもレジュはまだ数が多いが、ジュリは少ない分選びあぐねているようだ。
さて、ふたりが選んでる間にルイヤスとの修行を始めるか。
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